たぶん、好きだよ
冬の寒空の下で、二人の少年が歩いていた。
「俺はさ、お前の好きなものを知らねえんだけど?」
幼馴染が真剣な眼差しで僕を見つめる。だから僕も幼馴染を見つめ返してやるんだけど、鼻先を赤くして白い息を吐きながら目を逸らしもしない。そういえば今日の最高気温は一桁だっけ?
「なんだよ、急に。僕は別に、君に隠した覚えはないけど。」
「じゃあ、好きなものは何だよ。」
幼馴染はやけに食いついてくる。なんかあったっけ?好きなものを気にしなきゃいけないイベントって。うーん。思い出せないなあ。そういや、前に幼馴染と遊んだから、お財布が寂しかった気がする。
「金」
「そういうのじゃないんだよなあ。」
「じゃあ、何を聞きたいんだよ?」
本当に訳が分からないんだよな。ふむ、好きな食べ物って聞かれたら、ハンバーグって無難に返しておこうかな。
「俺、お前と遊びに行ったとき、買うものも食うものも全部合わされた気がするんだよ。」
「別に、してないと思うけど。君が好きなものが僕も好きだっただけでしょ。」
「違うだろ。真剣に返せよ。」
声を荒げて、幼馴染が言う。息の白さでこぼれた熱量が伝わった気がする。でも、それでも、返せる答えって存在しないんだよ。
「じゃあさ、好きって何?」
「は?」
「嫌いはわかるよ。やりたくないこと、したくないこと。僕にとって嫌な事物を挙げればいい。」
幼馴染は、ハトが豆鉄砲を食らったような顔をしていた。ちょっと笑いそう。ま、笑わないけど。
「君曰く、好きは嫌いじゃないことではないんだよね?」
「ああ、うん。」
「じゃあ、僕は好きが分からない。」
「そうか。」
空を見上げた。白く、少々灰がかった雲が一面を覆う。隣で空を見上げる幼馴染の顔を僕は見えない。
「わかった。じゃあ、一緒に探そうぜ。」
僕から幼馴染の顔は見えない。何を思って言っているのだろうか。わからない。
僕と幼馴染は二人で歩く。きっと、多くの出来事を共有する。
「なあ、これはどうだ?これは好きか?」
「ああ、うん。
たぶん、好きだよ。」
恋愛未満の関係性が好きです。




