モドキからケガレへ
二人はまるで吸い寄せられるように、男の元へ寄っていった。
「おじさん、お金…あむんっ!ちゅぷちゃぷっ!あんっ!ああっ!」
一人の女子高生は夢中で男のチ○コにしゃぶりついていた。
もう一人の子は、やはり臭気がもれてくる口へと吸いつき、男とディープキスをしていた。
部屋にはチュプチュプ、チャプチャプと舐め回すイヤらしい音が響き渡っていた。
そのうち、チ○コを舐めていた女の子がいきなり、ガマンできない!と叫ぶと男のそそり勃つ物にまたがり思い切り腰を振り始めた。
「おおおおおっ!!たまらん、こんなの初めてだっ!!すぐイキそうだっ!!」
男のチ○コからは大量のモドキが女の子の体の中になだれ込んでいた。
もう一人の女の子が立ち上がると、男にまたがっている子を払いのけて、今度は自分がたまらないとばかりにチ○コを入れて腰を振った。
「あああああっ!!いいいっ!!ああっ!ああっ!いいっ!いいっ!ああっ、おかしくなるうっっ!!」
二人の女子高生は寝そべっている男の体に群がった。男はもう一人のマン○を夢中でしゃぶっていた。そうせずにはいられなかった。
喘ぎ声とともに一人の口元からは、ドス黒い触手のようなものがチロチロ出てきていた。
またがっていた女の子は、今度はもっと刺激の強い臭いにつられて狂ったようにチ○コをしゃぶり始めた。
「うえっええぇっ!!あああっ!!もっとおっ!!ごぇっぷっ!!」
モドキがその先から蛇の舌先のように触手をのぞかせていた。
もう一人の子はマン○からモドキを出し、口からも喘ぐように吐き出し始めた。
あっという間に、3人は穴という穴からモドキを放出し、まるでモドキに集られたドス黒いヌメヌメした一つの塊のようになっていった。
「あぎゃあああっっ!!」
野太い男の声の叫び声らしきものが上がった。女の口元から黒っぽい血のようなものがしたたっていた。口にはチ○コの先っぽのような肉が咬えられていた。
女の口からは肉片とともに大量のモドキが飛び出てきた。
3人はみるみるうちに気枯れを起こし、ミイラのようになり始めていた。
モドキはそれでも集るのをやめず、どこからか飛び散った肉片に飛びついていた。
「ううう…うあおお…ぎゃぎゃぎゃぎゃ…」
人のものとは思えない、喘ぎとも雄叫びともいえない声がしていた。
ミイラからは魚の腐ったような特有の臭気が発せられていた。そして口には魚のような細い牙のような歯が生えていた。
ミイラはまだ完全な気枯れまでは起こしておらず、互いに喰らい始めていた。
まるでそれは、常世の穢が共喰いをする様子に似ていた。
とんでもない臭気が、従業員の控え室で待機していた我央の元にも届いてきた。この臭いは、ケガレ臭といって、わかるものにしかわからなかった。
我央は従業員と共に部屋の前まで行くと、鍵を開けさせるとすぐにドアを閉めた。
ケガレが間もなく生まれようとしていた。
ケガレは共喰いをしたところ同士で繋がり融け合って、融合し一つの醜い怪物へと変容していた。
「そんなことまで覚えたか」
我央は輪紋と響紋を繰り出すと、ケガレの強大さに匹敵する光の玉を作り出し、ケガレに向かって放った。
「ウ、ウギ、ギヤャァァアアッッ!!」
ケガレは祓われる瞬間、まるで人のように断末魔の声を上げていた。
「人間3人分の塊か…」
大きなキングサイズのベッドいっぱいに広がったケガレが発する瘴気は、またエアダクトを伝って他の部屋へ流れこんでいったに違いない。
それならば、そうなる前に祓えばいいということになるが、気枯れを起こしているミイラ化した人間は、あくまで人という認識があった。というのも、人としての言葉を発していたからだった。
ミイラ化の時点では、まだ人としての扱いが求められ、完全にケガレとして祓うことが許可されていなかった。
由良姫や宇羅彦には、そういった事情はまだ知らされていなかった。ただ、眴には伝わってはいた。
眴はまだ高校生になったばかりの二人に、本格的な祓いの仕事をさせる気は毛頭なかった。だから、危なくなったら祓えばいいとしか言っていなかった。
その代わり、ケガレとはどういうものか、幼い頃から叩きこんでいた。
ケガレとは、どこかからやってきたものではない。ケガレとは昔から、すぐそこにあった。
ただそれが時代とともに、変貌し、変容を遂げてきた。それだけのことだった。
今のケガレはどうだ。
まるで人のような顔がつき、腕のように鰭まで指が生えてきている。魚のような尻尾で歩いてくる。まるで出来損ないの人魚のようだ。
そんなミイラが共喰いをし、融合を果たし、常世ではなく現世で強大な力を得ようとしている。
いったい何のために?
15年くらい前に、最後の戦があった。決戦とも呼べる、大きな戦だったという。その時に、これ以上、常世の大河へ出て戦はできないと、時の輪紋衆総代と響紋衆頭領が協議の末、結界を張ることでケガレを封じこめた。
総代はその時、いずれケガレは大河から上がってくると、預言者のように時の権力者へ告げた。
奏司は真白の男神の依代となっていた。その時に遠い昔のケガレの姿を見ていた。尾鰭の途中から生えた後ろの鰭がまるで足のように地に立ち歩いていた。
祖返りを起こそうとしているのは、輪響紋衆だけではなかった。それよりも早く、そして強く祖返りをするのはケガレだろう。
奏司は難しい腫瘍と闘いながら、二人の子らを育て、今後のケガレとケガレモドキに起こり得るだろう変化についてレポートを残した。変異、変容、変貌。ありとあらゆる視点からまとめられていた。
そして、願わくばと。子らの行く末を案じた。
百年から二、三百年後、御子姫の力尽きた時。結界は解かれ、地球はケガレに覆われる。それまでの間に、果たして人類は遺伝子レベルでの進化、もしくは変異が成されるかどうか。遥か遠い未来まで、奏司は見つめていた。
その中で最も危惧されていたのが、モドキの存在であった。体内にいる間には祓うこともままならず、知らぬうちに人の気を喰い荒らし、ゆくゆくはケガレへと変化させていく。
モドキこそが昔からのケガレの正体だった。そのモドキ自体にも、常世同様、現世での変容が始まっていた。
モドキがこのような経緯で人をケガレにするのはわかっていたが、その変容の速さは予測できなかった。
常世の穢などよりも、昔から人とともにある、モドキが人に巣喰う方がどれほど危険であるか、それを奏司は最も案じていたのだ。なぜなら、由良姫と宇羅彦が対峙しなければならないものは、まさしくソレだったからだった。
由良姫と宇羅彦をはじめとする、若い二つ紋を持つ者たちの前に、神守我央が現れたのは、奏司の予測よりも5年も早かった。
奏司は神守我央との間に、これだけは譲れない、という契約をしていた。
由良姫と宇羅彦は18歳になり再び御子姫と会って、成人として戦人として認められてからでないと、国の組織では動かせないと。
裏を返せば、御子姫さえ認めれば、二人は現代の形での戦人としてケガレと戦えるということであった。
次世代の輪響紋衆が、国家の手駒にされることだけは、奏司は避けたかった。
贄は、もうたくさんだった。




