神守我央
夏休みの学校は、どことなくザワついていた。
7月中は3年の特進クラスの特別授業があったせいで、まだ夏休み感が薄かった。8月に入って学祭の準備が始まると、グラウンドの一画にマスコット像を作る一団が現れた。
学祭は一応学年間の交流を図ることも目的に入っており、ブロック編成されていた。例えば、3年1組と2年4組と1年7組がAブロック、というように、ランダムに別れて編成されていた。3年は受験があるので、まあほぼ頭数だけだった。
学祭は前半が文化祭、後半が体育祭。そして体育祭ではマスコットをグラウンドの真ん中で燃やして、ファイヤーストームでフィニッシュ。たいてい、このファイヤーストームの時に、告りあってたくさんカップルが誕生するのが通年だった。
由良姫は宇羅彦とは当然別のブロックだった。
学祭ではブロックごとに、マスコット作り、3年の教室での模擬店等の出し物、体育祭での応援合戦、とそれぞれに参加しなければいけないものが決められていた。
それ以外に1年、2年はクラスごとに何かやりたければやって良し、またそれぞれの部活動でも教室を借りて出し物ができた。
体育館では、音楽部の合唱や、演劇部の舞台、軽音のコンサート等。学校側が指定したこと以外は、全部生徒会へ申し込めば先着順でプログラムを組むようになっていた。
由良姫と宇羅彦は、放送委員会に入っていた。まさかそれが、生徒会同様、学祭で最も忙しくなるとは知らずに。
夏休みの前に忙しかったのは生徒会だった。夏休みになってからは学祭委員会が忙しかった。由良姫と宇羅彦は放送の先輩から、学祭当日は忙しくなるので、なるべく出し物には関わらないよう言われていた。そして、連日の炎天下でのマスコット作りに参加していた。
「えーん!こんな過酷な夏休みになるなんてっ!!」
「おい、そこの1年、髪の毛縛らんと、糊がつくぞ!!」
2年の先輩が由良姫に注意した。
「輪ゴムやとイヤだろ!今度縛って来んかったら輪ゴムで縛るからな!」
2年の中に、クソうるさく構ってくる男子生徒がいた。ブロック長だった。
別ブロックで、宇羅彦は、マスコットの外枠作りで、先輩からめっちゃ重宝されていた。
その頃、凛華と初音は、目を疑うような光景を見ていた。
パパ活女子が二人で一人の男性と一緒にラブホへ入っていくのを見たのだ。
「うわあっ!マジか!?」
「二人一緒でも何するかはわからへんやん」
凛華が驚くのに対して、初音はシレッとしていた。
「でも、さっきの二人からも結構、臭ってへんかった?」
「ごっつう、臭かったえ」
二人は繁華街の真ん中にある公園で、ちょっと休憩しながら話していた。すると得体の知れない雰囲気の男性から話しかけられた。
「君たち、高校生?」
「そやったら、なんなん?」
「西の訛りだね。観光客?この公園は夕方になると売買春の根城になるから。気をつけて」
初音は男の首元に輪紋が見えたのを見逃さなかった。この真夏に、スーツをきっちり着こんでいた。
「待って下さい!」
男は立ち止まって振り返ると、サングラスを外して眩しそうにしながら二人を見つめた。
「お互い、紋のせいで夏なのに長袖着こんで、大変だよね」
男の袖口からは響紋も見えた。
「まさか、二つ紋ですか?」
「だったら、何?驚いた?」
「いえ、祖母から、神守に年配の二つ紋の方がいるって聞いてます」
「そう、なら話が早い。実は神守にも視える人がいてさ。この街で立て続けにケガレが発生するらしいんだ」
男は凛華たちがパパ活女子たちを見かけたホテルを指差していた。
「君たち、もしかして、知っててここに来たの?」
「せやったら、何かあるん?」
「今回は場所が場所だから、こちらに任せてもらえないかな」
「ええけど、その女の子ら、ケガレになるんか?」
「お知り合いか何か?それとも、藤吉の二人が通う高校と同じとかで?」
「いや、ええわ。さっきの子らは直接関係あらへんし」
「芥見の方々に、よろしくお伝え下さい。神守我央といいます」
我央は初音と凛華に、警察が持つような手帳を見せた。
「対ケガレの特別対策室の身分証です。いずれは皆さんの元へも保護者を通して連絡が行くと思います。その時までは、あまり危ないことに首を突っ込まないよう、気をつけて下さいね」
我央はサングラスをかけるとホテルの方へ歩いていった。
「なんやアイツ。ほな、帰ろか」
「せやな、万理ちゃんに話さなあかんし」
二人は公園を後にした。よく見ると女性が一人で立っているのが増えてきていた。
「立ちんぼや」
どこの街でも、そういう溜まり場みたいなところはあるものだった。
神守我央は、JKらしき若い女性二人と一緒に男性が入っていったホテルへ来ていた。フロントでホテルの従業員へ身分証を見せ、防犯カメラで確認させた。どう見ても、未成年かも知れない女性二人と年配の男性が一緒に部屋へ入っていくのが確認された。
我央は、何か事が起きるまで、従業員と一緒にカメラ画像を見ながら待機していた。
首都では、ケガレが原因だとしか思えない事件が多発し始めていた。
ケガレになってしまった、かつては人だったものが、いったいどうなるのか。
部屋では、男性が二人で5万だったことを確認し、前金でというJK二人に対して難癖つけていた。
「前金は逃げられたことがあるからダメだ。二人ともシャワーして来いよ。そしたら2万渡してやるよ」
「残りは?」
「終わった後に決まってるだろ」
仕方なさそうに二人はシャワーを浴びに行った。男はその隙に二人の下着を持ってきて臭いを嗅いでいた。
すると、男は最初はヤるつもりはなかったが、無性に穴に突っ込みたくなってきた。身体中がゾワゾワとして、理性がきかなくなっていくようだった。
男性は二人の服を布団の中へ隠した。そして、その上に素っ裸で寝転んだ。いつもなら薬を飲んだり舐めてもらわないと勃たない物が、ビンビンにはち切れんばかりになっていた。
シャワーを浴びて出てきた二人は、最初自分たちの服がなくなっていることに気がつき慌てた。
しかし、ベッドに寝そべる男のそそり勃つチ○コを見ると、なぜか無性に入れたくてたまらなくなってきた。
「ちょっと、おじさん、服返してよ!」
「舐めてくれたら返すよ。ちょっとでいいから、舐めてくれよ。チップはずむから」
男のチ○コの先からは汁が溢れていた。その臭いが二人の中に巣喰うモドキを呼びよせた。




