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鹿野神と猪野神

夏休みになった。

西から鹿野神(かのがみ)の二人、初音と凛華、従姉妹同士。

東から猪野神(いのがみ)の二人、大那(だいな)虎雅(たいが)、又従兄弟同士。

こちらへやってくることになった。それぞれに芥見の家に分かれて世話になるらしい。


鹿野神の二人を迎えに大きな街の駅へ行った際、由良姫は駅裏の予備校街近辺で、水泳部の瀬名の一件で顔を見た、3年女子生徒を見かけた。まあ、一応進学校なので、予備校へ通っているのは不思議ではない。

しかし、その女子高生は予備校に行くにしては、少々派手めな格好をしていた。


そういえば、前々からその女子生徒をイジメの対象にしていたグループがあった。

その中の二人がどうやら、瀬名をシャワー室へ誘ったらしいという事情が宇宙依から入ってきた。

彼女たちは、JK専用のパパ活グループを作っていた。


首都圏に比べれば、その十分の一もあるかどうかの大きさの地方の中核都市だった。

「やっぱ、首都の方がスゴイんやろうな」

「首都はもう手に負えません」

「それって眴ちゃんがお父さんの代理で行ってた時やろ?」


まあ、そうですけど、その前から眼帯外すと、モドキに巣喰われていない人を探す方が難しかったですね」

「そんなんおったら、気持ち悪うて眼帯外せへんやんか」

「そうですね。反対にもらわないよう、外して歩きます」

「それって、なんやかや言うて、モドキの瘴気が濃うなってるってことやん」


迎えの車用の場所に車を寄せて、由良姫と宇羅彦は鹿野神の二人との待ち合わせ場所へ向かった。そこは駅裏、新幹線口の目の前で、壁画前と言われていた。大きな壁画と大きなデジタル時計が目印の場所だ。

「ぎょうさん人がいすぎて、わからへんちゃうん」

「ほんまやな、新幹線の改札見とらなあかん」


そんな中、宇羅彦がまったく別方向を、チラッと指差した。

「あ、水泳部の女子?お父さんと一緒なんちゃう?」

「ちゃうて、パパ活やん」

「え、マジ?」

「男の手、なんやゴツい指輪しとって、あんなカバン持ってへんて、ほんまの父親やったら」


水泳部のOB瀬名をハメた3年の女子部員が、目の前をパパ活らしい人物と待ち合わせて歩いていった。

そっちに気を取られて、鹿野神の二人が新幹線口から降りてくるのを見落としてしまった。

「ちょっと…すみません」


由良姫が振り返ると、クセ毛で明るい髪のポニーテールの女の子がハイタッチしてきた。

「やっぱり、由良や!久しぶりやん!このクソあっついのに、相変わらずやなあ」

少し口が悪い、鹿野神の凛華(りんか)だった。

「初音は?一緒ちゃうん?」

宇羅彦が指差した方を見ると、キオスクで何やら買い物をしていた。


「あの、名物のエビせん買うてはるわ。めっちゃ好きやねん」

しばらくすると、前髪を巻いた、白い肌の明るい髪の女の子が大きなトランクと、大きな海老茶色の紙袋を持って向かってきた。

「ごめんねぇ!もうずっとコレ食べたかってん!」

初音は山のようにエビせんを買ってきた。


「眴さん、元気?」

「車で待ってる」

宇羅彦はトランクを持ってやり、後からついていった。

由良姫が、凛華のトランクを引っ張りながら聞いた。

「こっちとそっちと比べてどお?」


「うーん、どっちもどっちやろなあ。こっちは妙な勘違いしてはる外人さんの観光客が多うてかなんわあ」

「ふうん、こっちはデッカい自動車産業あるんで、ブラジルからの移民が多くなってきた気ィするわ」

「そうなんやあ、でも芥見の方はそう変わってへんやろ」

「まあね」


二人は車に到着すると、後ろのラゲッジにトランクや荷物をを積み込んだ。

「眴さん、久しぶり。コレ、お母さんから預かってきた」

「ああもう、いいって言ったんですけど。相変わらず、(となえ)さんは律儀ですね」

凛華が封筒を渡したのを見て、初音も同じように眴へ封筒を渡した。母の言葉(ことは)からの手紙と心付(こころづけ)が入っていた。


「眴さん、とうとう車が大きゅうなったねえ」

助手席に体の大きい宇羅彦が乗り込む。狐のケンが由良姫の足元にねそべると、後部座席に初音と凛華が乗り込んだ。

「これで猪野神のが来はったら、パンパンやん。どないすんねん」

「芥見の万理依さんが車出してくれますから、大丈夫ですよ」


「猪野神のは、明日来はるん?」

「そうですね。とりあえず、今日は特に何もないので、向こうへ着いたらゆっくりして下さい」

「眴さんの手料理が食べれるだけで、来た甲斐があるわあ」

「何も特別なもの作ってませんよ」

「スパイスカレー、眴さん特製の!!」


翌日、同じように猪野神の二人がやってきた。大きな街の駅へ迎えに行くと、やはり昨日と同じように水泳部の女子がパパ活していた。よく見渡すと、同じような年配の男性と女子高生くらいの年齢の女子とが連れ立って歩いていた。

すると急に横から、由良姫は声をかけられてビックリした。宇羅彦かと思うくらいのガタイの良い男子が二人も立っていた。


「由良、久しぶり、全然変わってないなあ」

「相変わらずの黒髪ロン毛で姫様カットだもんね」

「何が悪いん?」

「悪くない、悪くない!着いた早々、突っかかるなよ」

「言うてんの、そっちやし。ていうか、いきなりデカなってへん?」


猪野神の二人がやって来た。新幹線口で待ち合わせていたが、ついこの間まで10cmくらいしか変わらなかったのが、いきなり宇羅彦並みに大きくなっている。

さらに言えば、大那(だいな)が茶パツになっていた。

「コイツ、さあ。いきなりチャラくなってて、はじめ誰かと思ったよ」

首都の大きなターミナルで待ち合わせて、ちっとも来ないと思ったら気がつかなかったらしい。


虎雅(たいが)は相変わらずの、ツーブロックでさわやかイケメン風。デカいのが3人集まって、それぞれが全員違う風貌というのも、なんだか笑える。

「眴ちゃん、車で待ってるから。行こっ!」

由良姫が虎雅の腕を引っ張るのを、見つめる眼差しがあった。同じクラスのちょっと派手めな女子グループの子たちだった。


どうやらグループで大きな街の方まで遊びに来たようだった。彼女たちは前々から、宇羅彦のことを気にしている風だった。

今度は首都から来たイケメン二人と一緒にいるところを見られた。連れ立ってチラチラとこちらを見ながらターミナルを抜けていった。

由良姫は夏休み中に厄介なことにならないといいけど、と思っていた。


ただ助かったのは、猪野神の二人は芥見の方で寝泊まりするようで、由良姫の家の方は鹿野神の二人が来ていた。

夜には顔合わせと、とりあえずどのように動いていくか、久しぶりに集まったので近況報告も兼ねて芥見の家へ集まることになっていた。


そこで、どうして日曜日のような、イレギュラーなことが起きてしまったかも、宇宙依が考えたことを教えてくれる予定だった。

早速、家電にクラスの女子からかかってきた。

「めんどくさいから、ウーちゃん出て」

宇羅彦がつっけんどんに出ると二言三言喋って電話は切れた。


「何って?」

虎雅(たいが)たちのことやった。あいつら、車に荷物乗せて一緒に行くの見てたみたいや。メンドーやなあ」

「いっそのこと、会わせてやったらええやん。おもしろそうやし」

凛華が、普段由良姫たちには見えてない別の面が、クラスの中から見えてくるかも知れないと言い出した。

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