旧領であり占領地でもある
直江兼続「今でこそ伊達政宗は岩出山を本拠地としていますが、彼が居城にしていたのは米沢城。今、私が管轄している城であります。加えて伊達の本貫地は伊達信夫。こちらも今は我が上杉の所領となっています。加えてここ会津は……。」
伊達政宗が芦名を倒し手に入れた占領地。
直江兼続「直後の太閤殿下による関東入りの際、召し上げられた土地であります。つまり……。」
庄内を除く全ての上杉領は、伊達政宗が一度は支配下に置いた場所。
直江兼続「隙あらば。の思いがあると見て間違いありません。加えて伊達政宗の母は……。」
最上義光の妹。
直江兼続「母子で仲違いした時期はありますが、今は交流を持っているとか。その最上は庄内を欲している。つまり……。」
両者が連携する恐れが高い。
直江兼続「これに此度の家康上洛が重なります。」
上杉景勝「『我らの南下を阻止するため、北から牽制せよ。』」
直江兼続「その通りであります。ただ最上については、権益維持に動くと考えています。うちが120万石に対し、最上は24万石。加えて最上は米沢と庄内に挟まれています。どちらかに兵を動かした瞬間どうなるか?一番わかっているのは義光自身であります。
心配なのは伊達政宗であります。政宗は太閤殿下が健在な時にも様々な策を弄し、旧領の奪還を目論んでいました。今回はその箍がありません。むしろ南進が推奨されているのが実状であります。」
上杉景勝「我らが岩出山に兵を向けるのは?」
直江兼続「伊達は58万石。うちの2分の1しかありません。しかし我らは四方を敵に囲まれています。全てを伊達に振り向ける事は不可能であります。一方の伊達を脅かす存在は我らしかありません。故に政宗が持っている58万石の全てを我らにぶつける事が可能であります。それに伊達領は……。」
東西の距離を更に広げてしまう事になってしまいます。
直江兼続「家康の次に排除しなければならない存在ではありますが、伊達については専守防衛に徹した方が宜しいかと。」
そこへ。
本庄繁長「冷静な判断をしてくれて助かっている。」
直江兼続「福島の備えに問題は無いのか?」
本庄繁長「たとえ伊達であったとしても、家康が居なくなったとなればすぐには動けぬ。それに殿の方針を確認するため参った次第である。」
直江兼続「伊達は必ず攻めて来ますぞ。」
本庄繁長「わかっている。殿とのやり取りを教えてくれぬか?」
直江兼続「大坂との連絡について考えていた所である。」
本庄繁長「ここから庄内は厳しいし、最上も楽な相手ではない。それならば……。」