翌日
「開幕は……。」
この一言で正月気分は吹っ飛んだ。
年末に収録されたと思われるテレビの特番には、今季の布陣について語る監督の姿があった。
その中で
「開幕は誰ですか?」
の質問に対し監督は……。
私の名を指名。
俄然やる気が出た私は正月休みを切り上げ、来るキャンプインに向け調整を加速させたのでありました。
そして迎えたキャンプ。オープン戦と順調に進んでいた私でありましたが、シーズンを直前にして負傷。
開幕スタメンはおろか、ベンチ入りも叶わず。ファームで開幕を余儀なくされたのでありました。
それでも怪我は順調に回復。ファームでも結果を残している姿を見た首脳陣は、私を一軍に登録。即スタメンで起用されたのでありましたが……。
結果には結び付かず。
もどかしい日々を過ごす私に対し、首脳陣は
「再調整。」
を宣告。
そこから試行錯誤の日々を過ごす私を尻目にチームは復調。私が本来居るべきポジションにもシーズン途中。外部から様々な選手が招聘される中、いつしか名前すら上がらなくなってしまった私。3ヶ月が過ぎようとしたある日。
一軍再昇格。
即スタメンで起用されたその日。私は……。
ホームランを放ったのでありました。
残り試合はあとわずか。ここから規定打席に到達するのは不可能。しかしチームはプレーオフ。更には日本一を決める大会へ出場する可能性が残されている。共に査定に直接影響する公式記録には残らないが、来季の契約を勝ち取るための大きなアピール材料にもなる。
間に合った。さぁここから。
と私を含め誰もが期待に胸躍らせた翌日……。
ベンチに私の姿はありませんでした。