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最終章 新たな伝説へ
オルカは七十歳の誕生日に、全ての職を辞する事にした。
最後の演説でこう言う。
「私は貴族の娘として生まれ、追放され、商人となり改革者となりました。でも一番大切なアイデンティティは──『自分で選んだ人生を歩いた女』です」
彼女が引退した日、アステル全土で鐘が鳴らされた。
商人達が市場を閉じ、農民が畑を離れ、子供達が学校から駆け出して彼女の家の前に集まる。
「オルカ様! ありがとう!」
彼女は窓からその光景を見て、静かに涙を流した。
数年後。
アステルの中央広場に新しい像が建てられる。
それは天秤を手にした女性の像。
台座にはこう刻まれていた。
『正しさは力ではなく知恵と良心で量られる』
『銀の秤の女、オルカ・イザベラ・シュタインより』
そしてその像の前には、毎日のように花が供えられる。
若い女性達がその像に誓った。
私も自分の道を歩む、と。
THE END




