第六章 王座の前にて
三年後。
アステル王国は財政破綻寸前だった。
オルカの商会は王国のエネルギー、通信、食料の六十パーセントを掌握する。
国債の利払いさえ彼女の銀行に依存していた。
国王はとうとう白旗を上げる。
「オルカ・イザベラ・シュタイン。王宮に参れ。話し合いをしたい」
王座の間。
嘗て彼女がひざまずいた場所に今、オルカは堂々と立っていた。
「殿下、お久しぶりです。お元気そうで何よりです」
国王は声を震わせた。
「貴女が望むものは地位か? 財宝か? 名誉か?」
オルカは静かに首を橫に振る。
「私は、ただ正しさを取り戻す事を望むだけですわ」
彼女は一枚の書類を王の前に置いた。
「これはアステル経済改革案。貴族の特権を廃し、公正な税制を導入。商人と農民にチャンスを与える制度です。──署名してください。さもなくば明日から全ての輸出入を停止します」
王は震える手で筆を取る。
その横でジュリアンが叫んだ。
「お前は復讐がしたいんだろう!? ならば俺を殺せばいいだろうが!」
オルカは今日初めて笑って見せる。
「復讐? いいえ。貴方を殺しても世界は変わらない。でも、システムを変えれば二度と貴方のような者が生まれなくなる」
彼女は冷笑を浮かべ、ジュリアンを見据えた。
「貴方は、力と特権で人を踏みつける事を学んだ。私は、力と知恵で誰もが立てる世界を作る事を学んだ」




