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第四章 帰還の商人船
五年後。
アステル王都の港に、巨大な白銀の帆を持つ船が入港した。
船体には『銀秤商会』の紋章──天秤の上に銀の鍵が乗ったマークが施されている。
それを見た人々は噂した。
「あの船はリューネス最大の商会の物らしい」
「中には伝説の女商人が乗っているらしいぞ」
その船から降りたのは、黒のマントに身を包んだ女性だった。
銀に近い金髪を靡かせ、瞳は冷静な光を放っている。
「オルカ・イザベラ・シュタイン……生きていたのか?」
王宮の耳にもその噂は届いていた。
王太子ジュリアンは冷笑する。
「追放された女に何が出来る? たかが商人如きが」
だがその数週間後、事態は一変した。
オルカはアステルの主要穀物輸入を一手に握る契約を、リューネスと結ぶ。
そして『アステルへの小麦輸出を一時凍結する』と発表した。
「理由は簡単。アステル王国が我が商会の商人を不当に課税し、差別的扱いをしている為です。公正な取引が保証されない限り輸出は再開しません」
王都は混乱する。
パンの価格が跳ね上がり、飢えた民衆が怒りを爆発させた。
貴族達は慌てて王に訴える。
「あの女が……我々の命綱を握っている!?」
ジュリアンは初めて焦りを感じた。




