表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

第一章 婚約破棄の日


 王都アステルの春はいつも通り華やかだった。

 桜の花びらが風に舞い、貴族達の馬車が石畳を軋ませる。

 その中心にいたのはオルカ・イザベラ・シュタイン──侯爵家の令嬢であり、王太子の婚約者として名高い存在。


「オルカ様、おめでとうございます。明日の宮廷舞踏会で正式に婚約発表がございますと」


 侍女が嬉しそうに報告する。

 オルカは微笑みながら、鏡に映る自分を見つめた。

 全てが完璧に整っていた──筈だった。


 翌日、舞踏会の会場に立ったオルカは王太子ジュリアンの口から、信じられない言葉を聞く事になる。


「──オルカ・イザベラ・シュタイン。貴女の品性に疑念が生じた。我が婚約を破棄する」


 会場が凍りついた。

 オルカの顔から血の気が引く。


「……何を仰いますか、殿下」

「貴女が私の側近に賄賂を渡し、政敵の情報を盗もうとしたという証拠がある。貴女の家名は名誉を汚した」


 その場にいた貴族達は、一斉にオルカから目を反らした。

 父の侯爵も王の前に跪き声も出ないようだ。

 オルカは無実だと叫ぶ。

 だが証拠と称される文書には、確かに彼女の署名があった。

 偽造されたものだと主張したが、誰も信じなかった。


 三日後。

 オルカは家財を没収され、国外追放の処分を受ける。

 馬車に荷物を詰め、一人王都の門をくぐる時、彼女は一度も振り返らなかった。


「……覚えておきなさい、ジュリアン・ヴァレンス。貴方が私にした事を。世界が代わりに償う日が来る」


 その瞳に、もはや悲しみは無い。

 代わりに燃えるような決意が宿っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ