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三題噺もどき4

散歩(成功?)

作者: 狐彪

三題噺もどき―ろっぴゃくきゅうじゅうさん。



※ブランコくんは、精神的には子供に近いので乗ってくれる=遊んでくれる人なら誰でも好き。だけど吸血鬼さんは遊んでくれる且つ話してくれる上に甘やかすので大好きです※

 




 暑い。

 今夜はその一言に尽きる。

「……」

 星空の下を歩いている。

 浮かぶ月は半月。来週には新月を迎えるだろう。

 その月に、太陽のような熱がなくてよかったと心の底から思った。

「……」

 そうでなくてもこんなに暑いのだ。

 昼間はもっと熱いのだろう。よくもそんな気温の中で生活ができる。

 私は、昼間に比べたら比較的涼しいであろうこの夜でさえ、暑苦しいと思ってしまうのに。人間がいかに強いか……力では負けないのだけどなぁ。

「……」

 風は吹いてはいるが、生ぬるくていけない。

 春風くらいさわやかに通り過ぎてくれればいいのに、わざとその存在を見せつけるようにまとわりつくようにされては……なぁ。

 もう、暑くてうまく思考が回っていない。

「……」

 そういうなら、涼しい室内にでもいればいいのにという感じだが。

 それはそれで、違うのだ。

 引きこもってばかりというのは、精神的にも肉体的にもよくない。

 涼しさに怠けていると、思うように体が動かなくなってしまう。もしもの時に困るからな。

 まだ、油断をしていいような時ではないのだ、色々とあって。

「……」

 コツ―と、小さく靴の音が鳴る。

 他人ではなく、自分の立てた音だ。

 今日は目的地が決まっていた上に、いつも履いているスニーカーを洗ってしまったので、ブーツを履いている。

 これはこれで履き慣れているものだから、歩きづらいということはないが、多少の不便は仕方あるまい。スニーカーとブーツじゃぁ、機能性がそもそも違うのだ。

「……」

 まぁ、そうこうしているうちに目的地にはたどりつく。

 昨日一昨日と行き損ねた公園である。

 昨日のあの犬は、少々ここから離れたところに住んでいたようで、帰りも遅くなった上に、あの犬、抱いたのがよくなかったのか歩かないものだから獣臭くなったりして、大変だった。私は気にしないのだが、アイツがうるさいのだ。

「……、」

 今日は何もいないだろうなと、周囲をいつも以上に警戒する。

 ……あの犬の気配もなし、人の気配もなし、変な奴がいるような気配もなし。

 公園の入り口に足を踏み入れるまで、警戒は解かない。

 基本的に、人に見えないようにしてはいるが、人じゃないものには気づかれる可能性はなくはないのだ。昨日の犬しかり。勘がいいからな、ああ云うのは。

「……、」

 中に入ると、いつもと変わらぬ様子で彼らが出迎えた。

 花壇の花は植え替えているのか、土が広がっているばかりで何も咲いていない。

 木々は青々と茂り、心地いいくらいに堂々とそこに立っている。

「……やぁ」

 入り口からは少し奥の方にあるブランコに座る。

 初対面の頃からやけに気に入られているが、彼が私を好む理由は未だによくわからない。

 単に話し相手が物珍しかっただけだろうが。

「……昨日はすまなかったね」

 目の前まで来たのに、帰ってしまった事に文句を言われた。

 仕方のないことだが、それを言って伝わる様なものでもないだろう。

 その分、今日聞いてやればいいだけのことだ。

「……」

 それからは、これまで通りに。

 彼らの話を聞いて相槌を打って、帰るまで話をしているだけだ。

 この夜の暑さも忘れて、久しぶりに逢瀬を楽しんだ。





「おかえ……」

「ただいま……なんだ」

「その子もそういうことが得意になったんですね?」

「は――あ!お前いつの間に」

「返してきてくださいね」









 お題:春風・ブーツ・ブランコ

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