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全能神  作者: 碾貽 恆晟
第一章 学校に隕石が落ちたら……
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第7話 回想 オウギタイランチョウ



 家へと近づくにつれて太陽がより一層、輝いていくように感じた。


 汗が頬を伝い、身体中を蒸されているような暑さを感じる。


 家の扉を開け、入る。


「ふぅ〜」


 と、一息ついて扉を閉める。


 靴を脱ぎ、急いで洗面所へ。


 鞄は椅子の上に放り投げ、洗面所の蛇口をひねる。


 コップに水を注ぎ、うがいをし、再び、


「ふぅ〜」


 と、息を吐く。


 ネクタイを外し、洗面台の上におく。


 ワイシャツのボタンを一つ一つ外し、洗濯かごに投げ入れる。


 ズボンはネクタイと同じく洗面台の上に置き、全裸になって風呂場に入る。


 風呂場の扉を閉めて、シャワーを右手に持つ。


 冷たい水のままシャワーをかかる。


 まるで生き返ったような気分を味わう。


 シャワーを止めた後も、余韻で心が澄んだように感じる。


 髪を掻き揚げ、風呂場の扉を開く。


 棚からバスタオルを取り出す。


 髪を特に入念に拭く。


 その後、体を拭いて服を着……ようと思い、着替えを持ってきていなかったことに気づく。


 しょうがないのでそのまま扉を出て、椅子の上に置いた鞄を取り、二階に上がる。


 自室の扉を開け、クローゼットの中から服を引っ張り出す。


 着替え終わり、ベッドに腰を下ろすと、どっと疲れが伸し掛かってきた。体はだるく、ボスッとベットの上に体を投げ出す。


 思い出すのは、あのクレーターの光景だ。


「あれって、俺がやったんだ、よな?」


 疑問系なのには、もちろん理由がある。そもそも、隕石が落ちたことがイコール昨日使ったなんちゃって全能の力が原因となるなんて、そんなわけはない。偶然、偶然誰かが隕石を作り出して、偶然私立野浦高校に落ちたと言う可能性もあるし、なんなら隕石がこれまで偶然発見されていなくて、その隕石が偶然俺の望んでいた場所に──はい、無理ですね。自分も言い訳がすぎるとは思ってましたよ。


 けど、だけど、それでもやっぱ納得ができない。


 魔法も超能力(異能力)も、なんらかのエネルギーを必要とする。これらの違いは、どのようなプロセスや必要とするエネルギーの違いかによって分別されており、まぁ何が言いたいのかと言うと、隕石ができたエネルギーは一体どこから来たって言う話なのだ。


 それに、万が一にも、あの『全能』とやらの能力が本物だっらとしたら、だ。魔法や超能力で、俺の悪事が暴かれないと言う可能性もなきにしも……いや、本当に『全能』の能力が本物だったら、確実にバレるだろう。世の中には、相応能力を持った奴は、それなりにいる。


「……どうしよ」


「干渉すればいいじゃないですか」


「干渉ってどういう風にだよ」


「それは、落とした隕石が超常の力によっておこったこととバレないように干渉するとか、が一番手っ取り早いですよね」


「……なるほど」


 …………ん?


 今、俺は誰と話した?


 恐る恐る見上げてみれば、そこには山羊の角に口元に見える長い牙、蝙蝠こうもりのような羽に蜥蜴とかげのような尻尾、腰に巻いた面積の小さい布をした悪魔などではなく、オウギタイランチョウのような姿をした鳥が一匹、勉強机の上にいた。


 ただし、”のような”という言葉からわかる通り、俺の知っている本来の色とは違うようだ。


 扇のような冠羽は赤ではなく紫に近い赤で、全体的に黒っぽい色をした羽毛だ。


 至って冷静になろうと左腕を右手で抓ってみる。


 ……間違っても眠ってしまったわけではなさそうだ。


「お前が話したのか?」


 可能性としてはあり得る。


 代表的なのとしては魔女の使役している動物などが挙げられる。


 他にも、普段は山の奥にひっそりと暮らしている伝説上の生き物、もしくはそれに類するような存在もいるのだ。


 じっと見つめていれば、意地の悪い笑みを浮かべて


「そうですよ」


 と宣った。


「……それで、お前はなんなんだ?」


「私はあなたみたいに特殊な力を持つことになった知的生命体のサポートをしてるんですよ。他にも……」


 胸を張り、器用に折りたたんだ羽の先を胸につけてそう言っているオウギタイランチョウのような生き物の姿を見て、アニメの表現としてよく使われてるやつに似ているなどと思った。


「ちょっと、聞いてますか?」


「いや、聞いてなかったな」


「なっ、あなたはこれまで先生から人の話はきちんと聞くようにと習わなかったのですか?」


「鳥に言われたくはないな」


「なら、言われないようにしてください」


「考えておこう」


「……そこはせめて努力をしようとか言ってくださいよ」


「実を結ばない努力ほど無意味なことはないと思わないか?」


「この人、開き直ってます」


 煩いなと視線で訴えてやれば、


「むぅ〜」


 と人間らしい反応を返してきた。


「それで、この全能って能力はなんなんだ?」


「それを先ほどから話していたのに……まぁ、私は細かいことには拘らない主義です。その耳かっぽじって聞いていて下さいね!」


 顔をクワッとさせて、オウギタイランチョウ……長いな。オウギタイランチョウ、略してオウランは話し始めたのだった。



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