第6話 回想 これからどうしようか
結局のところ、どうしようもなかったので、学校から離れることにした。
とりあえず、今は家には戻らない。近くをぶらぶらと歩きながら普段は行かない道をいく。
それにしても、本当に『学校に隕石が落ちる』なんてことが本当に起きるとは。
これぞまさしく求めていた非日常というやつだ。ちょっと、いき過ぎな気もするが、今更修正はできない。どう取り繕うか……。いや、取り繕う必要なんてないのか?
そもそもの話、昨日の紙片は本物だったのか? もしそうなら、俺は不死身だし、この能力とやらが極まればほぼ全能ということになる。むしろ、全能じゃない部分がどこになるかの方が気になるような力である。
さすがは神の名を冠する能力……。理解が追いつかないが、なんか嬉しい。
今ならなんでもできそうだ。いや、なんでもできるんだっけ?
「くくっ……」
思わず笑い声が溢れる。あっ、通行人から不審な目で見られた。……帰るか。
そう思った瞬間、背中をおもいっきり叩かれた。
こんなことをする奴は、一人しか知らない。後ろを振り返ってみれば、案の定だ。
「よ〜う」
ニヤニヤとした笑顔でこちらを見てくるのは同じクラスのお調子者兼賑やかし、寒川 照治だった。
「どうした」
「お前も、何も知らないで学校に行った口か?」
「そうだな」
話しながら、俺は近くにあった公園へと足を向ける。
「だったら、何が起こったかは知らないだろ〜」
天井のある椅子に座り、襟をパタパタと動かし涼む。
「あぁ」
やっぱ日陰は涼しいなどと考えながら曖昧に答える。
「教えて欲しいか?」
「お前が話したいなら話してもいいぞ」
「よし、話して欲しいんだな。よ〜く聴くがいい。ことの発端は昨日の深夜12時半頃、日本の上空に隕石が落下。大きさは20メートルほど。その隕石が運悪く我らが通う野浦高校に落ちたというわけえだ。怖いな。幸い、学校の魔法結界によって被害は学校内だけに留まったため、死傷者はなし。ただ、不可解なことに、その隕石はこれまで一切観測されておらず、突然現れたとしか考えられないと専門家は指摘。超常的な能力の可能性も指摘されている。この様々な謎のあるこの隕石落下には、なにか裏があるかもしれない。ネットニュースより抜粋、だ」
「最後のがなければ拍手を送っていたな」
照治は片手にスマホを持ち、食い入るように画面を見詰めながら話していたので、最後のがなくても拍手を送らなかっただろうが。
「それよりも、お前は休校連絡見てなかったのか?」
「俺はいつもより早く出たんだよ」
「ほ〜。まぁ、そう言うんならそうなのかもな」
「含みのある言い回しだな」
「そうしてるんだよ。わかってるだろ?」
「まぁ……」
そこで、はたと気づいた。
「お前はなんでここにきてるんだ。学校が休みだって、家で気づいたんだろ?」
「そりゃあ、報道陣にマイク向けられるために決まってるだろ」
「……」
呆れた。呆れて物も言えないとはこのことだ。能天気すぎる。ゾンビ映画で真っ先に死ぬモブとしか思えん。
「おい、今俺のこと心のなかで馬鹿にしただろ」
「馬鹿だという自覚はあるんだな」
「な、なっ、なんだと〜」
流し目でふざけていることを確認し、視線を前に向ける。
「休校なんだろ、俺は家に帰る」
歩き出そうとすると照治が声をかけてきた。
「明日はちゃんと学校の連絡を確認しろよ。プクク」
最後の最後で笑いを噛み殺せなかったようだ。
その罪、万死に値するな。
「何回が良い? 千か万か」
「どっちもやだね」
そう言って俺に背を向け歩き出す。
気障な風に手を振って立ち去っていく姿に空き缶を投げつけたくなったが、実行せず、想像上に止めておくことにした。
それを感じ取ったのか、照治はぶるりと震え、後ろを振り返る。
にっこりと笑ってあげると、早歩きで行ってしまった。
まるで逃げるようだなと思ったが、その元凶が俺であるということに若干の不満を持ちつつ、家へ帰る道を歩くことにした。
日は頭上近くまで上がっている。
一気に、帰る気を失うような日差しに照らされ、帰ったらシャワーをかかろうとそう心に決めた。




