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全能神  作者: 碾貽 恆晟
第三章 人は死に、神が生まれる
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第2話 再び魔女の隠れ家 2



 オトルスは末端の構成員に情報を与えない。幹部クラスであっても、頭領、つまりボスのいる場所を把握していない。頭を潰すことが難しいため、俺は最終的な目的をはっきりさせなければいけない。


 つまり、オトルスの完全壊滅か、トップを殺すか。


 俺的には前者を成し遂げたい。不死身となった俺には、いくらでも時間がある。時間をかけてもいいなら、完全壊滅はいつか達成されるだろう。


 しかし、だ。この先どう転ぶのかなんて、誰にも解りはしない。出来るだけ早く終わらせられるなら、さっさと終わらせたい。


 思い浮かべる道筋は未だに濃霧の中にいるように、曖昧で見ることができない。方位磁針もなければ、目指すべき指針もない。まさに五里霧中。


 そろそろ、本格的に次の目標を決めた方が良いのだろうが、思うようにいかないため、そのままズルズルと現在に至っている。


「はぁ~」


 大きな溜め息が口からこぼれる。まったくもって、憂鬱。


「辛気臭い」


 と、顔を顰めたナイオラが文句を言ってくる。


「それじゃあ、面白いことでも言ってみろよ」


「桐沼が一昨日オネショしてた」


「そりゃあ面白い。……ところで、嘘だよな?」


 恐る恐る、問いかけてみると、ニヤリと意味深げな笑みを浮かべて去っていった。


 一体何をしたかったのだろうか?


 ──後ろ


 ん? 後ろ?


 オウランに言われ、後ろを振り向けば、ワナワナと小刻みに拳を震わしている桐沼。


「……今日もオネショしたのか?」


 口から出た言葉はあまりに配慮に欠いていたが、素直な気持ちの表れと思ってほしい。


 そんなことを言おうとした瞬間、拳が飛んできた。


 一応、悪いことは認めるので避けずにおいた。


 痛くはない。


 むしろ、向こうの方が痛い思いをしているのではないか?


 涙目でしゃがみ込んで拳に息を吹きかけている桐沼を見ながらそんなことを考えていた。


 けど、やっぱ、怒るってことは本当だったんだな……。


 ──告げ口しますよ?


 俺は何も悪いことなどしていない。


 胸を張って言える。


 ──やめてください、気持ち悪いです。


 ヤメロ、それは、、、俺に、効く……カハッ


 ──ふざけてますよね?


 うん、ふざけてる。


 睨んでくる桐沼と罵倒(?)してくるオウラン。


 ヤバいよ。新しい扉が開いちゃうよ。


 ──開かなくていいです。それと、今日はどうしたんですか?


 どうって?


 ──変な食べ物、そう例えばキノコでも食べたんですか?


 きのこのチョコなら食べたことあるよ。


 ──私はたけのこ派です。


 ダメだよ、戦争が始まってしまうよ?


 ──そうなんですか?


 ……わかって言ってるよね。


 ──けど、毎回たけのこが勝ってますよね?


 言ってはならんことを。事実陳列罪で逮捕されるぞ?


 そんなことを思い、ポールハンガーにとまっているオウランを見る。そのすぐ下で、打ち拉がれていた桐沼がようやっと立ち上がるところだった。


 ──知ってましたか?

   鳥には刑法が適用されないんですよ。

   それに、ここはギリシャですので日本の法律は適用されません。


 大丈夫、日本にも事実陳列罪なんて罪状はないから。というか、ある国は……あったな。


 ──それこそ言ってはいけないものでは?


 目を逸らす。


 そこではキッチンで、桐沼が朝食を作っている。トーストを焼いて市販のサラダを盛り付けているだけだが、俺の分も作ってくれていることを思うと頭が上がらない。


 ──まったく

   そんなことを考えているなら手伝えばいいでしょうに


 男女平等だって?


 ──そうですね。


 え~。これはさ、男女云々じゃなくて、料理ができるかできないかという話だと思うんだよね。


 ──難解なことなどやってなさそうですが?


 まったく、これだから鳥は。は~。


 ──喧嘩を売っているなら買いますよ?


 そんなの全部『全能』の力で片付ければいいじゃん。


 ──……支離滅裂ではないですか。


 どこが?


 ──料理が上手い人がやればいいと言いましたよね?


 あぁ。


 ──そして次は『全能』の力を使えばいいと


 そうだな。


 ──これを支離滅裂と言わずに何を支離滅裂というのですか?


 日本政府。



──────────────

作者より

長いのでここで区切ります。





 

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