第4話 全能の影響
闇と、星々の光が乱舞する宇宙。
そこは、地球からは遠く離れた場所。
とは言っても、宇宙全体で見れば高が知れている程度の距離──具体的に言うと、月よりは遠く火星よりは遠くないぐらい──の何もない宇宙空間に、突如として大量のエネルギーが集まっていった。
その大量のエネルギーは物質に変換されていく。その物質は鉄、そしてごく少数のニッケルなどの金属からなっている。
それは鉄隕石、もしくは隕鉄と呼ばれるもの。
地球に落ちる一番多い隕石はコンドライトというが、なぜこちらではなく鉄隕石が創造されたのはわからない。
非常に重いため破壊力があるからなどという理由で選ばれたわけではないと信じたい(創造した本人はそこまで隕石に詳しくないから、多分そう、だと思われる。なお、確証はない)。
誰にもわからない永遠の謎だろう。
そのような一生かかっても解けない謎は置いておいて、それよりも重要なことがあった。
隕石の大きさだ。
丸い球の形をしている隕石は直径が20メートルはあると思われるほどの大きさだ。
そして、その20メートルほどの大きさの隕石は創造が完了した途端、慣性の法則も仰天する勢いで移動し始めた(一定の速度で移動している、という点においては慣性の法則に当てはまるだろうが)。
向かう先は地球。
月の横を素通りし、地球に急速に接近していく。
大気圏に突入し、重力に従うようにして加速し、落ちていく。
燃え尽きることがない、どころか傷ひとつない状態で大気圏を突き抜け、隕石は創造主が落ちるように定めた場所──私立野浦高校へと落ちていった。
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私立野浦高校を含む、学校やその他の公共建造物には魔法、魔術や超能力といった能力によって守られている。しかし、それも不審人物などといった人が入ってこれないようにしているだけである。念のためにか、学校の上空にまで守っているが、エネルギーの関係上、普段はそこまで力を入れていない。
しかし……いや、やはりと言うべきだろうか、隕石の威力に耐えられるはずもなく、隕石は魔法の結界をいとも容易く破壊した。粉砕である。
結界は壊れてもすぐ直せるようになっており、隕石が入った後に魔法の結界は修復した。そしてすぐに魔法の結界強度が、事前に定められた通りに作動し、最大まで引き上げられる。
その直後、隕石が学校に激突した。
ただ、その衝撃は、学校だけに被害が及ぶような威力に留まった。
なぜかと言うと、激突した拍子に生まれた風爆被害が学校を全壊させた後、魔法の結界に阻まれたわけでもなく急速に止まったのだ。最大まで引き上げられた結界はどうやら隕石の衝撃にも耐えられる性能をしているらしい。
そして、その風爆は隕石の落ちた場所に引き寄せられるようにして戻る。
学校の一部であった瓦礫はその勢いに引かれ、校舎であった残骸が散乱する。
言うとすればたったそれだけ。
されど、その威力は馬鹿にできない。
骨組みすら残されず破壊し尽くされ、そこには大きなクレーターがひとつ出来上がる。
非現実的な光景である。
幸いというか、喜ぶべきというべきか、隕石の激突によって生まれた音は、児童の騒ぎを外に漏らさないという無駄に高スペックな魔法結界に阻まれ、近所迷惑で起きる人はいなかった。
大抵の人は喜ぶだろうが、身近にこんな危険があったことを知れなかったことを恐怖する人もいるだろう。
まぁ、そのような問題に直面して頭をかかえるのは行政の人たちである。
この物語ではあんまり関係ないし、今後言及されることはないであろう。