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全能神  作者: 碾貽 恆晟
第一章 学校に隕石が落ちたら……
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第15話 回想、そして



 駐車場に止まっている数台の車の脇を通り、スーパーの中に入り、籠を手に取る。


 スーパーの中は田舎町だから閑散としている……のが普通だと思うかもしれないが実態は違う。


 値引き、割引、お得という言葉に釣られ、幾人もの主婦・主夫などが押しかけている魔の巣窟だ。


 ––––あなたもその一人ですよね。


 俺は頼まれただけだ。


 ––––慣れているように見えますが?


 俺なんてまだまだだ。


 ここは、夕方のこの時間帯だけ生まれる無法地帯、少しでも気を抜けば命取りになる……こともある。


 少なくとも今日は米だから大丈夫であろう。


 それなりに人はいるが、全品10%オフの時に比べれば大したことはない。


 ––––そうなんですか。


 オウラン、ちょくちょく話しかけてくるな。


 ––––嫌なんですか?


 気を抜いたら命取りになるって言っただろ。


 そう思いながら米の並んでいるスペースへと足を向ける。


 なんてことはない、他のスペースよりは多いがそれだけだ。


 小宮ばあちゃんの言っていた米は、無洗米むせんまい糯米もちごめだ。


 両方とも棚に置いてある。


 籠の中に二つの米袋を入れて会計に向かう。


 レジスター(レジのことだけどわかるよな?)は店内に二つあり、両方とも2名ずつ並んでいる。


 手提げ袋の中から財布を取り出し、順番が来るまで待つ。


「次の方どうぞ〜」


 特にこれといったこともなく自分の順番になり、籠を置き財布を開ける。


 ピッ


 と音がする。


「袋は––––」


「なしでいいです」


「承りました」


 いつもの人とは違い、新人さんだろうか、俺はほぼ毎日来ているためか袋がいるかどうかなんて聞かれさえしない。


 まぁ、余計な手間が一つないからいいとも言えるが、その点を踏まえて考えてみると、目の前の店員さんはやはり新人さんのようだ。


 そンなことを考えているうちに米袋は俺の持ってきた籠から会計のために動かしたもう一つの方の籠に入っていた。


「会計は3520円です」


 ……やはり米は高い。


 ––––そうですか?


 この数字を聞いて高いと思わないなら金銭感覚が狂ってるということだろう(それと万桁をポンと出せるような大金持ちもはいるだろうが)。


 籠を持ち、近くの机に置く。


 袋に入れて、籠置き場に籠を置いて颯爽とスーパーを出て行く。


 ––––自分で『颯爽』とか言うんですか……。


 いいだろ、そういう気分なんだから。


 ––––悪いとは言ってませんよ。


 良いとも言っわないと。


 ––––否定はしません。


 なんてやつだ、信じてたのに……。


 この、裏切り者‼︎


 ––––なんか話がずれてませんか?


 ずれてなんかいない……と思う。


 そんなことを会話しながら道を歩いていった。


 ––––––––そして、現在。


 俺は私立野浦高校の前で行っていた現実逃避から意識を取り戻した。


 校門の反対側にある近い公園の椅子に座っている。


 報道陣は今も校門の前でうろちょろしているのだろうか、積み上がった建物を点検している人はもうおらず、どこか物悲しい雰囲気がかつて学校があった場所から醸し出される。


 目を空に向けると、まだ太陽は沈んでおらず、青い空が広がっている。


 立ち上がり、学校に背を向け公園から出る。


 そして、住宅街と言って良い道を歩き始める。


 いつも通る道ではあるが、人っ子一人、車一台通らない中を歩くのは毎度のことながら少し勇気がいる。


 ––––私がいるんですけど。


 ……忘れていた。


 ––––喧嘩を売っているんですか?


 いや、姿見えないし……。


 ––––そんなんで言い訳になると思ってるんですか?


 まぁ、うん


 ––––最低ですね。


 周りに人がいないからって話しかけないでくれよ、転けたらどうするんだ。


 ––––思いっきり笑ってあげますよ。


 それでいいのか……。


 ––––いいんですよ。


 タッタッタッ


 背後の方から足音がする。


 足音の大きさからしてまだ子供だろう。


 少し気になり、後ろを振り返る。


 そこには人一人いない静かな住宅街が広がっているだけだった。


 空耳か?


 ––––いえ、私も聞こえましたよ、足音。


 オウランがそう言ってくる。


 肩にオウランがとまり、離れないようにしてくる。


 ––––誰かはわかりませんが、注意してください。


 タン


 またもや後ろ––––家へ行く道の方角––––から跳ねたような足音が聞こえてきた。


 バッ


 と前を向く。


 そこにはまたも誰一人としていない道があるだけだ。


 ––––またですか


 見えたか?


 ––––いえ


 タン


 今度は右から––––


 タン


 次は左に––––


 トン


 タン


 トン


 タン


 ––––子供です。中学生ほどの子供が


 パシッ


 周りに気を取られ、立ち止まっていたからだろうか、俺は手首を掴まれる。


 そして、次の瞬間––––


 俺は知らない場所に立っていた。



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