第12話 回想 オウランという存在
「この鳥ってこれのこと?」
俺の肩に乗っていたオウランを指差し、小宮ばあちゃんに聞く。
「それ以外のどこに鳥がいるって言うんだい」
「いや、庭にいる鳥のことかと思って……」
「……冗談だと思って聞き流すよ」
聞き流されてしまった。
それでもめげずに質問に答えよう。
どうせ分かってるだろうし。
「オウランって言う名前の鳥だよ。俺が名付けたんだけどな」
「名前じゃなくてどういう存在かって聞いてるんだよ」
「それは、ちょっと説明が長くて……」
「全部聞いてやるよ」
「そっ、そう、それは良かった」
やばい逃げ場がない。
終わりだ。
オウラン、どうやらお別れのようだ。
すると、オウランが慌てたように俺の前を飛び回る。
そして、小声で
「何がお別れなんですか。ちゃんと説明してください」
「聞こえてるよ」
小宮ばあちゃんの一言で冷水を浴びせられた気分になる。
「こっ、これはその〜。あっ、そろそろ仕事に行かなくていいの?」
「まだ大丈夫だよ」
くっ、殺せ。
「はぁ……、何考えてるんですか」
「ほぉ〜、考えを読めるのかい?」
「はい、私は彼の能力──全能の力についての説明、補助などを行う存在です」
「全能?」
「言葉通り、全能に等しき力を揮える能力です」
「……もちろん、代償はあるんだろ」
「この力を完全に揮えるようになれば、寿命の楔から解き放たれ、不死──即ちあなたがの言葉で言うところの神となります」
小宮ばあちゃんは椅子に腰を下ろして、
「ふぅ〜。それだけかい?」
「はい」
「……まぁ、そういうことにしておくよ」
なにやら、そういうことにされたらしい。
「私たちの一族は問題に巻き込まれやすい体質なのはわかっていたけど、駿翠お前はその中でも飛び抜けてる」
「???」
オウランがなぜか頭の上に『?』マークが飛び交っているようだけど、俺にはなにを疑問に思ってるかわからないからどうすることもできないぞ。というか、頭の中をかき混ぜられてる気がするのは、記憶見られてる?
しかも、こっちをじっと見つめてきているし。
見つめられるのに悪い気はしないが、というよりは是非してほしいが……。
「まぁ、説明するよ。私たちの一族は、特別な血を引いてるんだよ」
「特別、ですか?」
「あぁ、これまで珍しい異能を使用できる人を輩出してきた一族でね。私は分家だけど、それでもその血は強く受け継がれているみたいでね。私の息子は今も国内から海外まで引っ張りだこなんだよ」
「そ、そうなんですか〜」
オウラン、なんでこっちを見ながら不思議そうな顔をしてるんだ。
なんだ、俺にはそんな血が流れていないように見えるとでも言いたいのか?
「はい」
オウランがまっすぐな目でこちらを見てくる。
ちょっとまってくれ、即答されたら心が折れちゃうじゃないか。
「ほう、駿翠の思考を読めるのかい?」
落ち込み始めた俺を置いて話は続いていく。
「はい、補助を行うためにある能力です。全能の異能を得る種族は知的生命体でなければいけません。その中には音の振動で意思を伝える種族だけでなく、身振り手振り、テレパシーといった方法を使う生物も存在します。故に、私はいろいろな方法で全能の力を得た知的生命体とのコミニケーションを取るための力が備わっているのです」
胸を張りどやるオウラン。
確かに高性能だな。
だけど、俺はテレパシーでコミニケーションを取っていないのに、その能力必要か?
──使いましょうか?
頭にオウランの声が響いた。
というかそっちもできるなら使えよ。
──今使ってるじゃないですか。
なんで今まで使わなかったのかってことだよ‼︎
──使う必要がなかったので。(忘れてたなんて言えない)
おい、最後なんて言った。
──なんも言ってませんけど。
言ってただろ。
──喋ってなかったので、言うという表現はおかしいですよ。
おい。
「二人だけの世界に入ってないでこっちにも伝わるように話してくれ」
小宮ばあちゃんが苦言を呈してきた。
「ふ、二人だけの世界だなんて」
オウランがテンパってる。
初めて見たな。
まぁ、今日会ったばっかなんだから当たり前といえば当たり前かもしれないけど。
「それで、結局何が聞きたいんだ?」
「わかるだろ。その力を手にして一体どうするのかって話だよ」
小宮ばあちゃんはこちらを真剣な表情で見つめて言った。