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全能神  作者: 碾貽 恆晟
第四章 魔神に魅入られた男
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第14話 再開





「ミラ……」


 マーヴァミネがオウランを呆然とした表情で見つめる。何を思っているのだろうと、見てみれば、どうしてここにという感情が強いようだ。その気持ちはわからなくもない。いないはずの存在がいるというのは驚きを覚えさせる。


 俺だって、こうもうまくいくとは思っていなかった。遡れば、俺が全能神になった時────


 そもそも、俺が全能神になって一番に気になったのはオウランのことだった。だが、その過去にはマーヴァミネがいた。だから、まずはと思いマーヴァミネの過去を深掘りした。


 そして、マーヴァミネが行った過去の記録を見た後、やっぱりどうしても、ミラオーネことオウランの記憶を“全て”知りたくなった。どうしても、それが気がかりだったのだ。


 彼らの過去を知った時も、オウランの記録の続きをみたくなり、結局我慢できずに見た。


 それは、俺についてオウランがどう思っているのかをしるという反則的な技でもあったし、それだけは決してしてはいけないことだとこれまでは思っていた。だが、その時の俺は、全能の力に少し侵食されていたのかもしれない。まぁ、ただの言い訳かもしれないが、そういうことにしておく。


 それらのこともあり、俺はオウランの過去を4分の恐怖と3分の好奇心、2分の羞恥心で見始めた。


 彼女の感情も、記憶も、全て見た。


 そうして、彼女の全てを理解した。だからこそ、彼女のことをマーヴァミネと戦う前に味方につけようと思った。


 まず、時を止めた。次に、俺とオウランだけ動けるようにした。一っ飛びでオウランの目の前に立つ。


 オウランは現状を飲み込めないようで、夢でも見ているように、こちらを見つめてくる。


「……夢?」


 どうやら本当にそう思っていたらしい。一応覗きはいけないと思って自重していたが、それもあまり効果はなかったかもしれない。


「夢じゃなくて現実だけど?」


 笑いながら答えてあげた。久しぶりの会話、そんな気分だったのだ。それに、あながち間違いでもないかもしれない。


 日数で考えると一週間も過ぎてないが、その間にいろいろなことがあった。


 マーヴァミネと戦ったこと。全能神になったこと。そして、マーヴァミネが世界を征服しようとしていること。


 最後にはほとんど関わっていないが、本当にいろいろなことがあったと思う。


 むしろ、ありすぎな気もする。え? 半分ぐらいは意識失ってただろうって? もちろん、それも含めてだよ。


 そんなことを思い返していると、オウランの思考が正常化したようで、視点が定まり、こちらを見つめてきた。


「どうして、生きてるのですか?」


 おっと、なぜ生きてるのかだってぇ?


「生きてちゃダメなの?」


 我ながら、なんて意地悪な言葉。


「……そういうことじゃないです」


 と、思ったけどすぐに返された。


「ははは、冗談だよ」


 そう、ちょっと場をなごます程度の冗談のつもり。


「けどなぁ。俺が何で生きてるのか。それは、全能の力としか言えないしな〜」


 “授与の根源”が肉体から出たことで、途中だった全能の力の継承が一気に早まった。そのせいで、肉体がなくなっても再構築された。


 言葉にすればただそれだけ。


 なんてことはないことだ。


「はぐらかしてますよね?」


 おっと、オウランはお怒りのようで声色が低くなっている。いつもの調子を取り戻したようでなりよりだ。


「聞いてますか?」


 ……訂正、もうちょっと惚けてても大丈夫だったぞ? むしろ、心の準備をするために必要だったまである。


「……聞・い・て・ま・す・か?」


 一言一言を区切って、力強く言ってくる。そして、その追撃とばかりに鋭い睨みが飛んでくる。それから逃げるように視線を逸らせば、オウランは不満げな表情で近づいてくる。


 怒られるのか!?


 いや、ここはちゃんと受け答えをすれば避けられる! はず!


「もちろん。聞いてるけど?」


「それでは、何の話をしてましたか?」


「……」


「……」


「何んの話だっけ?」


 ピキピキピキッ


 そんな音がどこからか鳴ったような錯覚を覚えた。それは、オウランの額に浮かぶ血管のせいか、それとも表面上だけで実際は笑ってない笑顔がなせる技か。


「なんで、生きているのか、という話です」


 にこやかであるのに、心が凍えるような声が鼓膜を震わしてくる。


 ああ、私が一体何をしたと言うのでしょう?


「きちんと話してないことをしましたね」


 コイツ、思考を読んできた!?


「一度途切れたとはいえ、もともと繋がっていたものを復元するくらいは私でもできます」


 いや、『聞いてますか』と言ってたぐらい繋がったことはわかってたけどね、言いたくなるじゃん。


「そろそろ頭の中ではなく口で言ってみては?」


「やー」


「……子供じゃないんですから」


 とても、とっても長い間があったことをここに付記しておく。


「けど、わからない? “授与の根源”を引き剥がされたせいで、本来与えられる力が浸透する前に雪崩れ込んできて、それを制御できなくなって、肉体崩壊。それから宇宙空間での再構築が行われました。“授与の根源”の近くで復活したけど、与えられた力は体に浸透してないし、意識は回復してなかった。けど、無意識のうちに地球に近づこうとして宇宙を漂ってたんだよね。で、地球と月の間ぐらいまできたところで、目が覚めたってわけ。素晴らしい説明でしょ?」


「まぁ、わかりました」


 納得いかない顔をしているが、一旦納得してやるといった態度のオウラン。どうやら、俺の拙い説明でも理解できたらしい。すごいぞオウラン!


「うるさいです」


 思考を読まなきゃいいのに。


「……」


 図星を刺されて恥ずかしかったらしい。少し頬が赤くなっている。


 それにしてもと、悩めるオウランを見つめる。なぜって、彼女の人の姿をじっくり見るのは何気にこれがはじめてだからだ。


 じっと見つめていると、煩わしかったのか顔を背けるオウラン。そして数分後(実際には時が動いているわけじゃないけど)。


「わかったわ。で、何の用できたの?」


 その声を聞いて、思わずニヤリと笑みを浮かべてしまう。それじゃあ、話そうか。マーヴァミネを苦、ゴホンゴホン、いたぶッゲホゲホッ倒すための話を。




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