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全能神  作者: 碾貽 恆晟
第四章 魔神に魅入られた男
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第13話 拷問





 マーヴァミネの髪を掴んで、引っ張る。


 怯えた目が、こちらをのぞいてくる。優越感、というものを感じたのはいつぶりだろうか?


 感傷、愉悦、悲哀、それらは混ざり合い、言葉にできないような感情が胸の内に満ちていく。


「どんな気分だ?」


 マーヴァミネの肉体は完全に元通りとなっている。とてもつまらない。


 俺が楽しむためには、と一つのことを思いついた。その考えに従って、ゆっくりと全能の力を流し込む。


 魔法が俺の力を反発してくるが、その様子はまさに紙装甲の言葉にふさわしいものだった。


 ゆっくりと、まずは右足から。


 まず、爪が剥がれて、分解する。強烈な痛みが走り、マーヴァミネはその不気味な感触に不快感を覚える。


 髪から手を離し、顔を自由に動かせるようにしてやる。だが、急に離したせいで頭は地面に激突し『ゴッ』っと鈍い音が響いた。


 ゆっくり、おそるおそるマーヴァミネは首を捻って足元に視線を向ける。


「なっ、なっ……」


 言葉にならない。そういった面持ちのマーヴァミネの瞳に映った光景。それは皮膚が崩れていくもの。


 俺はボロボロと原型もとどめないように、めくって壊して、塵とする。それは足の指から足の裏、足首を通って、ふくらはぎ。そこまでくると指先の筋肉が崩壊していく。


 剥き出しになる白い骨が、映えて見える。それと同時に、血管から血が流れる出てくるのが見えた。


 白い骨に血が滴り落ちる。だかそれもすぐにポロポロに崩れて、血溜まりが生まれるだけ。


 その血溜まりは次第に広がっていく。


 ついに、マーヴァミネのふとももまの皮膚まで崩れて、最後には片足が丸々消えて無くなった。


「アァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッ????!!」


 信じられない。信じたくない。痛みなど二の次で、ただただ、目の前の光景から逃避するための叫び。


「ん〜、さすが。痛みを感じない魔法でも使ってるのかな?」


 マーヴァミネの記憶を除けば、すぐにその答えがわかった。やはり、使っていた。なら、これを解除しないと。


 こういうのをちゃんと確認しないから効率が悪いだとか思われるんだろう。今回は余裕だとわかっているからこそ、そんな事前準備をほぼ投げ出すような方法だったが、いつもいつもうまくいくとは限らない。万が一に備えて相手が持っている能力を丸裸にするだとか、効果的な攻撃と、効かない攻撃を知る程度は、やっておかなければいけないだろう。


 ……でないと、戦闘中(拷問中とも言う)に見なければいけないことになる。今後は気をつけよう。そう、気持ちを新たにしてマーヴァミネを見据える。


 さぁ、もう前準備はこれで済んだだろう。それじゃあ、右手に行こうか?


 それとも、やり方を変えてみようか。


 ふと、また面白いものを思いついた。


 まず利き手、つまりマーヴァミネだと右手の人差し指をいっさいふれることもせず、全能の力だけで切り飛ばす。


 そしてその指を拾って、右手の手のひらに乗せてみる。反対の左手でマーヴァミネの髪を引っ張り上げ、そのまま彼の口に近づける。だがしかし、彼はいっこうに口を開こうとしない


 力で強制的にこじ開け、意識的にだろうと無意識にだろうと閉じれないようにする。


 そしてそのまま空いた口に切り飛ばした指を突っ込んでやった。そして、そのまま口を閉ざす。だが、自らの指を喰らうのは嫌なのか一向に咀嚼する気配がない。


 しようがないと、強制的に口を動かさせ、さらには指をガリガリと噛んで、肉を飲み込ませる。ちょっとした配慮として、左頬で原型を留めている骨を喉にひっからない程度に噛み砕かせてやる。そして最後に、『ゴクリ』と飲み込ませてやった。


 その間中、ずっとマーヴァミネは目を見張り、必死に体を動かそうとしていた。だが、脳から発せられた命令は全て俺が遮断し、体はピクリとも動かない。まぁ、実際はとても微弱ながら振動しているが、それは元来のもなので放置しておく。


 全ては俺の意のままで、マーヴァミネはほとんど抵抗できていない。そうさせているのは俺だが、そうであってもここまで無抵抗の相手を前にするのは初めてだ。


 左手で突かないでいた髪を引っ張ってマーヴァミネの頭を俺の目の前に持ち上げる。


 反抗的な瞳が、そこにはあった。


 憎たらしい。思いっきり腕を振り上げ、地面にその頭を叩きつけてやる。一回だけじゃない。二回三回四回五回六回七回八回九回十回……。それでも、まだ足りない。


 マーヴァミネが感じる痛みはこの程度ではない。この程度で済ませていいわけがない。これは私刑だ。私刑ならば、もっと悍ましいことをするべきだろう?


 自由に口を動かさせられるようにする。


 それは、彼のくだらない囀りを聞くためであると同時に、彼の無様さを自分の記憶に刻みつけるためなのかもしれない。


 そして、それ以上は踏み込まない。自分の気持ちを自分で分解して理解しようとは思わないからだ。自分のことを知ることは重要だが、自分のことを隅々まで知ろうとは思わない。


「お前は、悪魔だ……」


 呟くような彼の声。


 その声に、どこか高揚した気分を覚える。それの言葉は正しくありながら間違ってもある。


「お前ほどじゃない」


 何千という長い年月の間、人を殺し、そう仕向けてきた彼に、悪魔などと言われるほど俺はできちゃいない。


 けど、今からやることは悪魔的かもしれないと我ながら思う。


「そろそろ出てきていいよ。オウラン」


 遥か遠くまで響く俺の声。その言葉通りに、遠くにある木の後ろから、オウランがやってきた。


 さぁ、ここからが本番だ。こいつを、絶望のどん底なんて言葉ですら言い表せないところまでやってやるよ──。




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