漢気ジャンケンで勝ったので戦闘機パイロットになった。
2XXX年、迫りくる宇宙からの侵略者によって地球は滅亡した。
地球人は地球から脱出し、複数建造した数十万人を収容できるコロニーに移住していた。
ここは第七日本支部のコロニーの居住区画。
三人の年若い青年達が集まってじゃんけんをしていた。
たかがじゃんけんと侮ってはいけない、――漢気じゃんけんである。
「「「ジャンケンポン!」」」
二人の青年が勝った。
彼らは宇宙戦闘機パイロットに志願することとなった。
戦闘機パイロットの志願者は一年のパイロット用訓練を受けた後、二等兵として前線へ投入される。
二人はコロニーに残った一人を孤独にしないため、絶対に生きて帰ると誓い合った。
座学と戦闘訓練以外の全ての休憩時間を、AI搭載の現実の挙動と機能を完全再現したパイロット訓練用ARゲームで過ごした。
一年間毎日協力戦や迎撃戦、撤退戦等様々なシミュレーションを五十戦以上続け、訓練生の中では頭三つほど抜けていたのだった。
前線の大型戦艦へ配属された初日、当たり前のように敵勢力の襲撃によって迎撃戦が始まった。
上官の指示に従い、機体に乗り込んで発艦する。
視界に映る光景は、ARで見た景色と同じ宇宙空間。
様々な状況を想定して作られたゲームで鍛えられた二人にとって、この初戦は初戦ではなかった。
「よーし、いつも通り行きますか」
『ばーか、上官の命令に従うんだよ』
「上官もう死んでるよ」
『――、……マジじゃねえか』
上官は発艦直後に流れ弾によって通信途絶していた。
図らずもフリーになってしまった第三部隊の内の二人は、即座に作戦を練り上げた。
「180方向にある大型母艦のワープ装置と主力の推進エンジン破壊、OK?」
『おー、初っ端それか。お前こそいけんのか?』
「何? ビビってんの? 直近100回成功してるし楽勝でしょ」
『ヒューッ アニキかっけ~(笑) んじゃ後で』
「んー」
最後まで緊張感を感じさせない口振りで別れる。
勿論緊張していないわけがない。ただこれまでの経験上、こうして軽口を叩いている時が一番普段通りの実力を発揮するということが分かっているから、二人共そうしているだけだ。
完全マニュアル操作で変則機動を行いながら、大型母艦へと接近していく。
敵の迎撃をいつもの調子で紙一重で躱し、撃破数を重ねていく。
追加でやってきた敵機体が母艦から発艦したタイミングを見計らって、すれ違いでシールドの隙間を抜ける。
母艦の下へ潜ると、既にワープ装置からは火が吹いており、相方の機体とすれ違った。
「っち、今回は負けか」
お互いが、相方を追ってきた敵機体をすれ違いざまに殲滅する。
主要推進エンジンにミサイルを射出して、反対側の母艦側面へ出る。
迎撃に戻ってきた敵機体を利用し、再度シールドを抜ける。
言うは易く行うは難し、数センチズレればシールドに接触するか、敵機体と接触するシビアな技である。
作戦司令室に通信すると、歓喜とも驚愕とも取れる声が挙がる。
帰還が不可能になった敵大型母艦を放置して距離を取り、撤退戦に移行される。
『俺もう50機は撃破したけど、俺の方が昇進早そうだなー』
「はいはい。こっちは40機プラス特殊機体3機落としてるから、全体の貢献度は俺の方が上ね」
二人はその中でも撃破数を競い合い、どちらが早く昇進できるか煽り合っていた。
帰還後、二人は軍から勲章を受け取り、二等兵から特別昇進を果たした。
二人の戦術、戦略的に特化した技能が評価され、特別戦略兵という新たな階級が創設された。
この階級は、彼らの英雄的な行為と技能を称え、特別な責任と権限を与えるために創設される。と地球軍のホームページで紹介された。
そして特別戦略兵を率いる指揮官に二人は任命され、それぞれ部隊を持つこととなった。彼らはリーダーシップ能力と戦略的思考を活かす機会を得たのだ。
彼らが授与された勲章は二つ。
星間勇気勲章: 最も高い名誉を表す勲章で、彼らの勇敢な行動を称える。この勲章は、彼らが達成した戦略的勝利を記念して授与される。
太陽系平和勲章: 敵母艦の破壊により太陽系全体の平和に貢献した功績を称える勲章。この勲章は、戦争の終結に向けた重要な一歩として評価された。
想像以上に評価されてしまった事実に二人は震え上がった。
撤退戦後、コロニーに居る一人と電話を繋ぎ、連絡を取る。
『おい! お前ら何やらかしたんだ? 居住区画がとんでもない大盛り上がりだぞ』
「あーいや、……それが訓練通りやっただけなんだよ。多分軍が英雄的象徴を作ろうとしてるんじゃないかな」
「それもあるだろうが、純粋に俺達が成果上げすぎただけじゃねぇか? 迎撃開始20分で敵母艦の無力化だぞ? 訓練生の時も、最後まであれできたの俺達くらいだったしな」
『はぁ……、一人で心配しながら待ってた身にもなれ! 俺も志願するからな、待ってろよバカ共!』
「一般人が吠えよるわ」
「俺の下に入れてやるよ」
売り言葉に買い言葉、完全にキレた友人からの通話が切れる。
話している内にいつもの調子を取り戻した二人は、ニヤリと顔を見合わせる。
「アイツが来たらもっと面白くなりそうだな」
「次会ったら訓練ARでボコってやろうぜ」
「はははっ そりゃ良いな!」
――こうして二人の快進撃は幕を閉じた。
一年後、三人と部隊での快進撃が始まるのだが、それはまた別のお話。




