パーティーメンバー
この護衛依頼に参加している冒険者は私含めて6人だ。
これが多いのか少ないのか私には分からないが依頼票には最低5人と書いてあったので少ない方なのかもしれない。
報酬面で考えれば20アル×6人になるので120アル。つまり合計1ガルと20アルとなる。
平民の年収が大体4ガルらしいのでその約4分の一である1ガルと20アルを報酬とするのだからハウワル商会は金持ちだということが改めて理解させられる。
そんな事を出発した直後に私は考えていた。そして、今は今回共に旅する人たちの自己紹介をしている。
「この護衛依頼の間リーダーを務めるゴルドンだ。階級は魔鉄級で指揮権は俺が保有しているがそれが出来ない時は各自で判断してくれ。そして、見ての通りだが最前線で戦う」
まずは最初に話したデカい戦斧を持つゴルドン。そして、次に口を開いたのはピョコッと生えてる猫のような耳とゆらゆら風に靡いてるかのように揺れてる尻尾が特徴的な、彼であった。
「僕はテル。階級は金級で治癒魔法特化だから怪我したら僕が治す」
彼は獣人族と呼ばれる種族なのだろうな。あの耳と尻尾がその証拠だ。
少し丸っこい顔つきに優しそうな眼が猫耳と尻尾の次に特徴的とでも言おうか。腰につけたホルスターに差し込まれたポーション?と彼の発言内容からして本当に治癒特化の冒険者っぽいな。
治癒魔法を使える人物は珍しいと言うのにーー使えるだけで国に雇われる存在だーー冒険者になっている事に勿体無いと思ってしまうのは貴族としての感覚か?
あと、個人的に女性が良かった。なぜこんな事を思ったのかは不明だが……最初に見た時に残念だと思った自分が居たのは確かだ。
テルの次はチェック柄のバンダナを頭に巻いてる彼が話し始めた。
「このパーティーの中で恐らく斥候や警戒を務める金級冒険者のシットだ」
若干吊り目なシットは周りに紛れるためか迷彩柄の服を着ている。そこにバンダナで顔を隠して紛れ込まれれば見つけるのは容易ではないな。
外見では彼の武器は不明だが身軽さを斥候は必要とするため短剣とかだろうか?
そして、シットの次に同時に話し始めたのが双子の女性だった。
「炎と風魔法を使える金級冒険者のウィーファと」
「水と大地魔法を使える金級冒険者のウィーニャ」
「「見ての通り双子なのでよろしくお願いしまーす。見分け方は雰囲気で頑張ってください」」
どちらも承和色の肩甲骨あたりまで伸びた髪を持っており眼も髪と同じ色だ。それだけなら良くある。しかし、顔つきも、身長も、仕草も、着ている服も、その上の装備も……何もかも一緒な彼女達をどう見分けろというのだ。
魔法士という存在はありがたいが、どちらかに用がある時に困りそうだ。名前を呼べばいいと思うが……それが叶わない状況下なら絶対に間違えそうだ。
ここまで似るのか?と思ったが、服や装備を揃えてきてる時点で故意だと私は考えた。だけど、何もかも一緒というのは相手を混乱させることが可能だと気づいた。
例えば、盗賊などを相手する対人戦の場合だとウィーファさんの炎魔法を警戒していたらウィーニャさんと入れ替わってて水魔法を放ってくるという事が可能になる。もし私が戦うならば確実に頭がこんがらがるだろう。
ゴルドン、テル、シット、ウィーファとウィーニャが私以外の冒険者だ。そして、気づいたことが一つある…
私以外、全員階級高くね?と……
私という存在が凄く場違いだと思うが順番的に私で最後なので静かに深呼吸をしてから自分の名前を告げる。
「私はシアメル。階級は鉄級になったばかりですが、よろしくお願いします。近接格闘が一応出来ます」
「これで全員か。シアメル、今回のように他の全員の階級が高い事は珍しいからしっかり勉強するんだぞ」
「はい。しっかり学ばさせていただきます」
「自己紹介は済みましたか?」
カウマッチさんがそう聞くとゴルドンさんが肯定の返事を返した。個人に聞かれない限りリーダーが受け答えするのが普通なのか?
まだまだ冒険者としてのルールや暗黙のルールは知らないことが多すぎるから下手に行動するのはやめた方が良さそうだ。
「シアメル。いや、シアちゃんと呼ぶけどいい?」
ゴルドンがカウマッチさんと何やら話しているところを見ていると双子のどちらかがそう聞いてきた。
見分けが付かないので彼女がウィーファさんなのかウィーニャさんなのか分からないが、今の質問ならあまり影響は無いはずだ。
それはそれとして、私のことをシアちゃん呼びとな。ちゃん呼び以前にあだ名で呼ばれた事自体が未だかつて無かったので新鮮な気分に陥いる。
「えぇ、大丈夫ですよ」
「ならシアちゃんはどれくらい戦えるの?」
「金級冒険者のお二方からすれば幼稚なものですよ。それに、私は戦えると言っても技術は無いですから精々が敵の気を引く囮になれるかどうかです」
「魔法とか使えるの?」
「試したことはありませんが、恐らく使えないでしょう」
一時期魔法には心の底から憧れたが、魔眼でなんとかなることに気づいた瞬間に憧れは一瞬にした霧散した。そのため魔眼を使わずに自分の力のまで魔法を使えるのかどうか確かめたことがないのだ。
「なら休憩時でいいから確認してみよっか」
「そんな事が出来るんですか?」
「私たちは基本的な炎、水、風、大地魔法を使えるから」
「そこを上手くあれこれすればその四つが使えるかどうか分かるって事」
「そんな事が可能なんですね」
「「凄いでしょ」」
双子の先輩冒険者がドヤ顔をしてくるが、口角の上がり具合や目元が同じなので何度も言うように区別は付かない。
これを雰囲気で見分けるなんて不可能ではないのか?と思うが、どうなんだろうか。
読心の魔眼を使用すれば分かるかもしれないが、何故だかは分からないがどちらも同じ事を考えていて無意味だという予感がした。
ドッペルゲンガーとかじゃないよな…?
出発してしばらく、太陽は既に頂上を過ぎて傾き始めているが日没までまだまだあるだろう。
大南国へと向かう道中に出会う人は居たが油断させるために扮した盗賊ではなかったり、時たま現れると言うはぐれ魔物にも遭遇しなかった。
魔物ならすぐに分かるし倒せばいいだけの話だが、一般市民に扮した盗賊は面倒なのだ。盗賊ということが分かれば問答無用で殺すというのは可能ではあるが、場合によっては生きたまま連行しなければならないなんて事も起こりうるからだ。
実際そういう状態になったらどういう対応をすればいいのか私には分からない。休憩時にでも先輩冒険者達に聞いてみよう。
さて、何も起こらずに平和に旅が進んでいくというのは誰にとっても嬉しいものだ。しかし、私の心のどこが求めてるのだ。
そう、刺激を。
平和なこの空間を乱してくれるような刺激を私は求めていた。
盗賊でも、魔物でもいいから退屈を紛らわせてくれないものか私は心の中で願った。しかし、神様に願いは届かず……カウマッチさんの口からそろそろ休憩としましょうという声が出てしまった。
開けた場所で太陽の日差しを馬車の影で回避しながら私は双子冒険者の二人と数時間前の会話内容にあった私が魔法を使えるのかどうか確かめていた。
なにやら手を差し出して欲しいと言われたので差し出せばウィーファさんなのかウィーニャさんのどちらかに手をガシッと掴まれた。
「これは何を?」
「魔法の適正検査みたいなものかな?今は炎と風を確かめてるよ。詳しいやり方は秘密ね?」
「分かりました。この適正を確かめるのは?」
「あっ、こっちも秘密でお願いね?」
この適正検査が彼女達しか出来ないのなら…貴族としての私は国のために密告をする可能性が高いだろう。しかし、今の私は貴族ではないため彼女達の許可が出ない限りこの秘密は墓まで持って行こう。
「分かりました。信頼されるほどの関係ではありませんが私の……誓うものを今は持ち合わせてもりませんから代わりに私の冒険者人生に誓って秘密を守りたいと思います」
「ちょっと重いよぉ」
流石に重いのか?と思うと、もう一人の方はどこか神妙な顔つきをしていた。
「……ねぇ、シアちゃん。もしかしてだけど貴方……いや、なんにもない」
「ウィーファさんが何を考えているのか分かりませんが、気になるのなら全然聞いても大丈夫ですよ」
私がそう言うと彼女達は目を少しパチクリさせたあと、両者とも顔を俯かせて小さく震えてる。
何か気に触るような事を言ってしまったかと思い焦っていると彼女達は急に笑い始めた。
「「ふふふっ、あはははっ!!」」
「な、どうし、たんですか?」
「ふふっ、シアちゃん。ウィーファは炎と風を使えるんだよ?」
「えぇ、それは知ってますが何が関係して………ん?」
少し考えて私は疑問を覚えた。
今もなお私の手を握って魔法の適正検査をしている彼女が言った言葉が……炎と風を確かめてるだったか?そして、神妙な顔をしていたのはもう一人の方だった。
私は神妙な顔をしている方の名前を呼んだのだが、実は適正検査をしていた方だった…?つまり名前を言い間違えたと言う事になるのか?
「えっと…名前を間違えて申し訳ありませんでした」
「慣れてるから大丈夫、大丈夫。でも」
「ここまで綺麗に間違えるのは珍しくて、つい笑っちゃった」
こんなに早く間違えるとは思いもしなかった。
この2人を一瞬で見分けられる日が来るのだろうか?
いや、絶対に来ないだろうなと私は心の底から思うのであった。
質問・誤字報告があれば遠慮なく言って下さい
次は8月15日です。




