誕生
初めましての方は初めまして。そうでない方も初めまして。
四葉のアミアです。
魔眼×商人を組み合わせて唯一無二の存在を生み出したい。そして、作者自身の願望も混ぜ合わせたいという思いからこの作品を書いております。
これから9話は主人公が旅立つまでの話などです。それが終わり次第本編が始まります。
気に入っていただければ幸いですし、ブックマークや感想なども頂けるとさらに嬉しいです。感想は全て返すつもりです。
では、魔眼商人をよろしくお願いします。
魔眼。それは、特殊な力を宿した眼の事だ。
数々の神話の物語や英雄譚に度々登場するそれは全てが強力な代物であった。
例えば、未来視の魔眼。これは数秒先の未来を見通す事が可能な魔眼だ。
例えば、看破の魔眼。相手の強さや弱点を看破する事が可能な魔眼だ。
例えば、創造の魔眼。無から自在に物体を作り出す事が可能な魔眼だ。
例えば、破壊の魔眼。どんなに硬い物でも破壊する事が可能な魔眼だ。
こういった魔眼を持つ者は全員が世界に名を轟かせた。そして、そう言った者たちの英雄譚を聴いたものは誰もが一度は魔眼が欲しいと願い、大半が諦める。
だが、魔眼は誰もが持てるものではない。もし誰もが持てるのなら世界などとっくの昔に滅びているだろう。
魔眼は人を選ぶ。大きく分けて先天性と後天性の2つだ。簡単に説明するとだ。
先天性は産まれた時から魔眼を持っている。
後天性は外的要因によって魔眼の力を得る。
結局のところは魔眼を持つのだが力の内容や出力などの決定的な差が両者には存在しているのだ。
後者の外的要因とは様々な物がある。激しい感情による覚醒、古代遺跡に存在する劇物を飲む、成功確率が未だゼロに等しい手術を受ける……そして、
とある人物から魔眼を購入して取り付けてもらうである。
魔眼商人。噂でしかない存在だが、実在はしている。何故なら実際にその者から魔眼を購入したものがいるからだ……そして、こんな噂も流れていた。
"魔眼商人は人を選ぶ。認めた者には幸運を、それ以外には死を運ぶ"
〜〜
「君はどんな人生を送りたい?」
そんな言葉が私の耳ではなく脳に直接響く。
気づけばここに居た私は現状を理解するのに普通なら数時間は必要だと思ったが不思議と私の脳は腑に落ちたかのようにすんなりと受け止めていた。
周りには何もない。ただ純白のだだっ広い空間が広がっており、そこで私は目の前に立つ何者と対面している。
人間ではないと考える前に分かった。なにしろ目の前の何者かは顔が無いマネキンと表現するのが適切かと思えるような風貌だったからだ。
そんな何者かが開口一番に問うてきた、君はどんな人生を送りたい?という質問に私は素直に答える。
「自分の店を持つような…もしくは、世界中を転々とするような自由な商人ですね」
「商人と言っても幅が広いからね。次の人生で過ごしてもらう世界では君が元居た世界よりかは少ないけれど数は多いから、具体的に教えてくれると嬉しいな。無いようならこっちが勝手に決めるけど」
次の人生や私が元居た世界などと気になる単語が出てきた。それらをゆっくりと自分なりに考えて理解しようとすると一つの答えが導き出された。
私は死んだ。と言う事だ。
死んだ、と言ってもその時の記憶は無いし……死ぬまでに生きた人生の記憶も思い出せない。
今はそれよりも具体的な内容を優先すべきだろう。死んだと言っても実感がないようでは気にしようとも思わない。
「では、人を選ぶような商人が良いですね。私が認めた者には商品を購入する権利を与えるという幸運を、認めてないのに脅したら盗みを働こうとする者には死を与える……そんな商人になりたいです」
「なら君には魔剣……いや、魔眼生成の力を与えよう。あとは身体構造を特殊にして身体能力と魔力量は高めに……運も高めにしておこう。大盤振る舞いだね」
どこから取り出したのか分からない紙か何かに文字を綴る何者かに私は勇気を出して言う。
「一つ質問をしても?」
「なにかな?」
「何故私の願い事を聞いてくださるのですか?」
そう、疑問だった。いきなり質問してきて答えたらそれを叶えようとしてくれる。
私の記憶には目の前の人物と関わったことすら存在してないと言うのに……
私の質問に何者かは腕を組んで答える。
「面白い、たまたま、精神構造など理由はたくさんあるけれどやっぱり君という人物に期待をしているからね」
「なるほど」
と言ったものの、全くなるほどと思ってない私である。
期待されている、と言われては嬉しいものがあるが…やはり状況が状況なため不安要素も残ってる。本当はもっとちゃんとした理由があって私に言えないような内容なのではないのか?と想像すればするほど出てきてキリがない…
よくない考えを無理やり捨てようとしてると何者かは言ってくる。
「ならお別れの時間だ。君の次の人生では、魔眼生成という唯一無二の力を持っているけれど使い方は感覚で分かるはずだよ。君がどういう人生を歩むのかゆっくりと見させてもらうよ」
「分かりました。期待に応える働きをしてみせます」
「いやいや、君がやりたい人生を送るんだ。期待に応えなくてもいいから」
手を横に振りながらそう言うが、果たして信用をしていいのか。
「最後に名前を言ってなかったね。僕は■■■■…おや、ノイズが走ったようだね。ふむ……ちょっとした神様と思ってくれればいいよ」
そう言い終わると同時に私の意識がぼんやりとしてくる。抗えない睡魔に襲われたような……そんな、感覚だ。
「では、よい人生を」
そして、私の意識は完全に途切れた。
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メルス・フィルディーリナ。それが私の名前だ。
侯爵貴族の三男として産まれた私は特にこれといった問題は起きず平穏にすくすくと成長して、つい先日15歳と言う成人を迎えた。
親の庇護下から離れ、自分の身一つで生きていくことも可能な年齢になった私は誕生日の晩に家族に言ったのだ。
商人になってみたい、と…
驚いてはくれたものの意外なことに認めてくれた。なにせ、貴族が商人をやるのは普通ありえないのだから。
どんな商人になりたいのか?と聞かれた私は魔眼生成の力については明かさず、人を選ぶ商人とだけ答えた。
なんたって、私が売るのは魔眼なのだから…
そうハッキリと言えればスッキリするものの、この世界において魔眼とはいわば誰もが欲しいと思える代物。持っているだけで人生が成功してるとも言われるそれを売ると宣言したら私はきっと捕まって死ぬまで魔眼を生み出し続けねばならない人生を歩むことになる。
それがたとえ家族であろうと信用はできない。国の利益になるならば三男の私など一瞬で売るだろう……
魔眼生成の力で魔眼を生み出して、それらを売る。まさしく人を選ぶ代物だ。
なにしろ、下手に売れば噂が広まるし指名手配という名目で国が捕まえようとしてくるかもしれない。それ以前に魔眼そのものが人を選ぶ。
この人は魔眼を与えるに値しない人物。
この人は与えるに値する。けれど、適正はこの魔眼ね?と言う感じだ。
既に魔眼生成の力を完全に理解した私は、ハッキリ言って敵なしではないのか?と思えるほどの力を持ってる。なにしろ、魔眼を全て扱えるのだから……
そして、成人を迎えた日から約1年。準備をした私は商人になるために親と兄弟が用意してくれた道具を持ち、家族に見送られながら"魔眼商人"としての人生を歩み始めたのであった。
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