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ママのガールズストーリー  作者: 玉城毬
4/5

④ママの女子生活・後編

「ママが行ったのって、地元の高校だっけ?」

「そう。

 自分で自転車こいで通える、っていう条件がついてたから。

 毎朝ギリギリまで寝て、全速力で自転車こいで、膝下が引き締まったわ~~」

「なんか、食パンかじりながら遅刻しそうな、ダメな女子高生の典型みたい」

「ほんとにね。

 でも最初は苦労したんだ。

 クラスに同中の子一人もいなくって、男女も2対1で女子の人数少ないし、お弁当友達もできなかった」

「ぼっちだったんだ……」

「一ヶ月くらい友達できなかったから、不登校一歩手前だったね。

 休みの日もだるくて、学校行くのが苦痛で仕方なかった」

「それで、解決したの?」

「うん、なんとかね。

 クラスの女子の動きはそれとなく観察してたから、グループの流れが変わりそうなタイミングで思い切って声かけてみたら、仲良くしてくれそうな子が見つかって、そこからやっと学校生活が楽しめるようになったかなぁ」

「よかったねぇ、ママ」

「自分でも、よくがんばったと思うよ。

 他の同中の子にも後で話聞いたら、やっぱり似たようなことあって、結構明るいキャラ演じたりして必死でがんばってたんだって。

 多分、普通のことなのかもしれないけど、ママ達は小中で環境が固定されてたから、高校デビューはみんな一大イベントだったんだよね」

「新しい友達ができて、ママの女子力、上がったの?」

「残念ながら、ママは地味で真面目なタイプでした。

 普通に生きるのも精一杯な方だから、流行に乗って楽しむってことが、そもそも苦手なんだろうね。

 それは今もだけど。

 周りの子は、半分くらい楽しんでたかな?

 細眉で薄ーーいメイクとか、スカートを腰で折ってミニ丈にするとか、ルーズなソックスをゆるっと履くとか、スキンウォーターを顔に吹きかけて保湿するとか。

 男の子も、色気づいてる子は腰パンしてたわ」

「あれ?

 テレビでやってたかも!」

「そう、伝説のカリスマ歌手と年代が近かったんだよね。

 イケてるっていえば彼女の歌やファッションで、街中溢れてたわ」

「せっかくそんな時代に生きてたのに……」

「それでも少しは、女子の手習いも受けたよ。

 脂とり紙で食後の皮脂を抑えるとか、眉のまばらな部分を剃ったり抜いたりして整えるとか。

 制服のスカート丈も、修旅前に膝が隠れるくらいに上げてもらったんだ。

 何もしないと膝とくるぶしの真ん中まであるから、重い制服を少しでもマシに見せたくて、親に頼んだっけ」

「大人しいなりに、がんばってたんだね」

「やっぱり思春期って、いろいろ気になっちゃう年頃だったんだと思うわ。

 一番の娯楽は、やっぱりカラオケだね!

 ママねぇ、流行には基本疎いんだけど、音楽だけは好きでね。

 ラジオやテレビの音楽番組でランキングチェックしたり、カセットテープに焼いて繰り返し聴いたりしてたんだ。

 カラオケのために覚えて歌う練習なんかもしたよ、一人の時に。

 キーが低いから男性ボーカルのが基本歌いやすいんだけど、それじゃジャンルが偏るから女性ボーカルも歌って盛り上げてって友達に言われて、自分なりに分析してたわ」

「流行が全部敵ってわけじゃないんだね」

「自分がうまく乗れないものが多いだけで、メジャーなもの全否定ってわけじゃないのよ。

 まぁ大概、外れてるけどね」

「衣与乃もカラオケ、行ってみた~~い」

「そうだよね、今度、行こう!

 全盛期は、月イチくらいカラオケ行ってたかなぁ?

 イケてる子は、週2~3回は行ってたかも。

 あと、隣の隣の町から電車を乗り継いで、若者通りを練り歩いてショッピングするのも、大好きだったな」

「若者通りって、あの中心部の?」

「その通り。

 衣与乃とも少し行ったかな?

 昔はもっと若者向けのお店がたくさんあって、地域の若人のシンボルだったんだよ。

 帰りは駅から自転車こぐのがしんどくなって、迎えの軽トラに積んでもらったっけ」

「ママの時代って、体力あったんだね。

 そういえば、ママの趣味って、ゲーム?」

「そう。

 家庭用ゲーム機が小学生時代にはあったし、男兄弟がプレイするソフトも多かったから。

 ママの頃だと、中高生で大きくなるにつれてやらなくなる女子が多かったんだろうけど、ママは続けてたからね。

 ベル文字覚えたり、たまごペット育成ゲームにハマったり、バイト代貯めてライブの遠征計画立てたりする子にありえないと言われながら、休日のゲーム三昧を楽しんでいたわ」

「友達減らなかった?」

「かろうじて。

 たまに出かけるショッピングやカラオケには普通につき合ってたし、空気読んで友達といる時にゲームの話は極力しないとか、努力してたからね。

 ある意味、普通の地味な女子高生に擬態しながら、オタ活(サブカル?)まっしぐらだったくらい」

「ゲームはやっぱり、家で一人でやってたの?」

「そうだね。

 本当は、ゲーム友達と一緒にワイワイ楽しくやってみたかったけど、仲間集めはかなり難しかったよね。

 SNSもないし、公言する勇気もなかった。

 攻略本とか、ゲーム原作のマンガや小説とかが売ってるディープなお店を見つけて、一人でこっそり通ったり……。

 小中の友達には割と理解あったから、映画とかコミケにつき合ってもらったこともあったよ」

「コミケって、コスプレイヤーさんがいるところ?」

「ママが行った時は昔だったから、まだいなかったな。

 知人の後輩の子が出店するってことで、買いに行ってみたんだ。

 マンガやゲームの人気作品が多いからママも楽しめるかなって思ったんだけど、その頃は二次創作の魅力にイマイチハマれなくってね。

 二回くらい行って、後は続かなかった」

「オタにも、いろいろあるんだね」

「簡単に一括りになんかできない、むしろ細分化して面倒くさいのよ」

「沼が深いよね。

 でも、ゲームばっかしてて、受験勉強してたの?」

「もちろん、高校の図書室で!

 放課後一人で静かに、割と居残ってやってる人多かったよ。

 わからないところは、先生に聞きに行けるしね。

 まぁママの場合は、家に帰るとゲームの誘惑でできなくなるから学校でやってけって、担任の先生に言われてたからなんだけどね」

「いい先生でよかったね」

「本当に!

 共通試験でやらかしちゃった後でも、受けられそうな学校見つけてもらったりして、先生には頭が上がらないわ」

「それで、晴れて女子大生になったんだね?」

「名ばかりのね。

 華は全くなかったけど」

「都会の大学じゃなさそうだね」

「もちろん!

 もとから上京志向なかったし。

 地方の中心都市って感じだったかなぁ。

 ママが慣れるには、本当にいい感じのところだったよ」

「一応、一人暮らしだったんでしょ?

 すごい自由な感じがする~~」

「イメージだけ、ね。

 ママはバイトほとんどしなかったし、文化部で週一の活動だったし、専らインドアだったよね」

「じゃあ、ゲーム三昧?」

「さすがにゲーム持ち込んじゃうと引きこもり廃人になって卒業できなくなると思ったから、ばーちゃんちに置いてきたね。

 長い休みに帰ってプレイする、オンとオフの切り換えしてたよ」

「じゃあ、きれいな女子大生のお姉さんとは真逆の……」

「そうね、高校生と間違われる、真面目な地味子さんだったわね。

 服も素敵なMサイズは入らなかったから、ルーズだった。

 そんなママが言うのもなんだけど、ママよりはちゃんとしていても、親近感のある女子が多くってね。

 綺麗って言われてたのは、女子が少ないのに美人ぞろいだった理系のクラスと、華やかに盛ってて姫姐さんって呼ばれてたスポーツ系の女子くらいかな」

「綺麗な人と、ママみたいな人の差が激しいね」

「服も髪もメイクも自由だから、格差が広がってしょうがないよね。

 ママは、食費を月二万くらいに抑えたり、学校や市の図書館で本を読んだり、学校のPCでネットサーフィンしたり、献血に通ったり、なんか今とあんまり変わんないね」

「合コンとか、しなかったんだね」

「あ、でも仕事が決まって卒業するまでの間は、髪も初めて染めたんだよ?

 まぁ、彼氏はいなかったし、恋愛とかそっち系に疎いと思われてたのか、しょっちゅうからかわれてたけど」

「よく、結婚できたね」

「そうねぇ、経験は乏しかったけど、人知れず興味はあって諦めなかったから、今があるんだろうね」

「じゃあ最後に、ママの恋バナ、教えてよ!」



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