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ママのガールズストーリー  作者: 玉城毬
3/5

③ママの女子生活・前編

「ママが女の子の友達と遊ぶようになったのって、小学校に入ってから?」

「大体そうだね。

 低学年の頃は男女関係なく一緒に遊んでたけど、衣与乃と同じ三年生くらいになると、なんか自然と同性の友達と遊ぶようになってった。

 習い事なんかも始めて、女子にはピアノが大人気だったね!

 ママもすっごくやりたかったんだけど、月謝が5000円で高過ぎるって言われて、ダメだった。

 代わりに許されたのは、月謝1500円の格安書道塾で、兄弟みんなして通ったわーー」

「やっぱり、お金なかったんだね」

「経済力は大事よ?

 まぁ足りないからこそ、がんばれたっていうのも大きいんだけどね」 

 私は三十年以上前の記憶をたぐり寄せながら、続けた。

「同性で過ごすようになると、見た目のポイントも重要になってくるよね。

 髪の毛も、伸ばしてる子が多くなって。

 一番髪の長い女の子に、ヘアアレンジさせてもらうのが楽しくってねぇ~~。

 みんなで順番待ちしたくらい。

 その練習のおかげで、三つ編みできるようになったっけ。

 編み込みは未だにできないけど」

「どう違うの?」

「その違いも、説明できないんだわ。

 言えるのは、ママには無理ってこと」

「ママ、私のアレンジも、一つ縛りかハーフアップの、二種類だけだよね」

「衣与乃の髪、サラサラで縛りにくいのよ。

 それに、凝ったアレンジしてほしかったら、休日のパパにお願いした方がいいよ」

「ママって、結婚式以外、髪伸ばしたことあるの?」

「失礼しちゃう。

 成人式の頃とか、小学校高学年、高校~大学、結構あるよ。

 中学の時は、肩より短くあるべしっていう暗黙の規則があったから、絶対守ってたけど」

「昔の不良マンガみたい……」

「本当に、そういう時代だったんだよ。

 今だから、お笑いみたいに言えるけどね」

 自分が生きてきたほんの数十年でも、すごい時代が変化していたのがわかる。

「髪型もだけど、洋服とかも気になってきたね。

 かわいいワンピースとか、見たこともないジャケットとか、すぐに影響されて、どこで買ったか聞いて、色違いの買ってみたりして」

「ママでも、そういうことしてたんだ」

「それまでは、男の子の中で特に考えたこともなかったし、話題も出ないしね。

 スカートかズボンか、ワンピースか、色とか飾りとか、いろいろ興味持って見たり考えたりするようになったよね。

 まぁ、体操着のことも多かったけど、中学になったら制服になっちゃうから、高学年の時は毎日私服で行って体育の時だけ着替えたくらい、ファッションがんばってたね!」

「ママって、いつ太ってたんだっけ?」

「中学で、運動部に入ってからかな。

 それまでは大体標準だったから、サイズ気にすることなく楽しめてたんだ~~。

 短かった、黄金時代」

「休み時間とか、何して遊んでたの?」

「そうだなぁ、縄跳びとか、健全だったなぁ。

 カードゲームも流行ったけど、外で体動かせって、雨の日限定になったね。

 占いとか、おまじないなんかもあったねぇ」

「今と、そんなに変わんないね」

「そうね、王道ってあるんだろうね。

 占いっていえば、今だと朝の星座ランキング毎日やってるけど、ママがよく見たのは少女マンガだったなぁ。

 そこで12星座覚えて、友達の星座まで覚えたり……。

 周りの友達で流行ってた二大少女マンガ雑誌を、ママも親に頼み込んで買って読んだんだ。

 男兄弟にはデカ目過ぎってバカにされたけど、そんなこと気にする必要がないくらい、価値があったね!

 大好きな世界に入り込んで、ちょっと年上の中高生の世界を覗けて、友達や恋愛のことがいっぱいあって……。

 友達も読んでたから、ストーリーについて語るのも盛り上がるし」

「ママのガールズライフの、お手本だったんだねぇ」

「ある意味、女子の教本だったかもね。

 女の子のイラスト描くのも参考になったよね、目をキラキラさせるのとか。

 おまけに付録もついてたから、作ってよし、使ってよし、何倍も得した気分だったなぁ~~」

「少女マンガ、いつまで買ってたの?」

「中2。

 段々年齢が上がってきて、現実が見えてきたし、雑誌が低年齢化しちゃったんだよねーー。

 小学生が主人公とか。

 あと、衣与乃もハマった、少女戦士シリーズあったでしょ?

 それの原点になったって言われてる、制服ガールズ戦士の連載が、ママが読んでた雑誌で始まってね。

 歴史的に画期的だったみたいなんだけど、ママは従来の少女マンガを求めていたから、小さな女の子向けの展開が許せなくってね。

 私もお姉さんだしぃみたいな感じで、潔くやめた。

 それからは、好きな作品をコミックで買ったり、人気作品をレンタルして読んだりになったね」

「そうなんだぁ。

 今って、大人女子向けのマンガもあるみたいだけど……」

「そうだね、マンガに限らず、ファッションや情報の雑誌でも、年代やテイストが細かくなってあらゆる本があるよね~~。

 そういうのをライフステージ毎に渡っていくのも、アリだと思うよ。

 スマホでも、いろいろできるよね。

 リアルに友達が少なくても、情報を得たり、共有したりできて。

 ママは苦手だからやんないけど、衣与乃が大きくなったら、普通にやってる気がするなぁ」

「ママにも、できると思うけどなぁ?」

「そのうち、必要に迫られたらね。

 少女マンガもすごい読んだけど、小説もクラスでブームになって、よく読んだよ!」

「小説!?

 そんな難しいの、流行ったんだ?」

「いやいや、小説っていっても、低年齢少女向けの簡単な文庫本だよ。

 表紙も挿絵もかわいい、今でいうとライトノベル的な。

 イラストと原作がセットになってることが多かったから、絵で好きになる子、お話で好きになる子、みんなそれぞれに推しがあってね。

 図書室にあるものから入って、それぞれ好きな推し作家さんの本を買い集めて、貸し借りして語りあったりしたっけ」

「楽しそう!」

「みんなの好みがいろいろで、おもしろかったな!

 人気シリーズで続くと、新作が出る度に買ってたっけ……。

 同性愛、殺人、不倫、中学生にはハードだったけど、お話だから知って楽しめることってあるよね」

「衣与乃だったら、プリンセスとか魔法の世界とか、読んでみたいなぁ」

「そういうのもあると思うよ?

 ていうか、今の児童書ってすごくいいのたくさんあるよね!

 今度、一緒に図書館行こう!」

「はぁ~~い……。

 じゃあ、本以外で、流行ったことってある?」

「そうだなぁ、ママの友達の間でだけど、交換ノートとかやったねぇ。

 仲のいい子と、気になってることからくだらないことまで、おしゃべりするみたいに書いてたわ」

「盛り上がりそう!」

「確かにそうなんだけど、逆に微妙になっちゃうこともあったよ。

 みんな価値観が違うんだから、当然のことなんだけどね。

 そういうのが嫌でやらない友達もいたし、やってる子同士でも、いっぱい書く子とスカスカな子、はやく回す子と時間がかかっちゃう子それぞれバラバラで、最終的には空中分解で消滅した気がする」

「よくも悪くも、なんだね」

「楽しいことばっかじゃないよね。

 あと、転校で少しだけ一緒だった子と、文通したりしてたわ」

「ママ達って、お手紙とか普通にやりとりしてたんだよね?」

「メールがなかったからね。

 けどママは、リアルのお友達としかやり取りしたことないなぁ」

「全く知らない人と、文通することあったってテレビでやってたよ?」

「確かに、そういうのもあった。

 今のSNSみたいに、リアルじゃないところで、好きなこと話したかったのかもね。

 個人情報の取り扱いもユルかったし。

 あとはね、便箋を集めて交換するのが、楽しかったよ」

「100均でも、いっぱいあるよね」

「それは、今の時代だから!

 安くて、かわいくて、いっぱいあって、うらやまし過ぎるーー。

 ママの子ども時代は、文房具屋さんや雑貨屋さんに300~400円台で売ってて。

 少ないお小遣いで一つしか買えないから、よ~~く見て、これっていうのを選ぶんだ!

 で、そのコレクションを友達同士で持ち寄って、封筒と便箋を一つずつセットにして交換こしたの。

 少女マンガの付録にもよく便箋セットがついてきたから、それも貴重だったね」

「雑貨屋さんかぁ。

 ばーちゃんちの方って、お店ないよね?」

「確かに、近くにはないよ!

 でも、バスや車で街中に行けば唯一の雑貨屋さんがあって、小学生から高校生まで女子に大人気だったからね!

 特に買う物がなくっても、友達と見ておしゃべりするだけで、幸福感が半端なかった。

 プレゼントの包装を頼むと、その頃は無料で、しかも包装紙の柄やリボンの色も数種類から選べて、何倍も得した気分になったね。

 ママはやったことないけど、自宅用でもラッピングしてもらってた人っているんじゃないかなぁ。

 SDGsの現代じゃ考えにくいよね」

「雑貨屋さん、衣与乃も行ってみたいなぁ」

「これから、お友達と行くようになると思うよ?」

「そういうお友達、できるかなぁ?

 その前に、もっと自転車の練習しないと!

 ママに付き添って来られちゃう」

「友達同士で行くなら、自分で自転車移動できる方がいいよね」

「雑貨屋さん以外にも、お洋服とか買いに行ったりしたの?」

「行ったよーー。

 さすがに地元の街中には店がないから、電車に乗って4つ隣の市まで足を延ばして、洋服見たり買ったり、ご飯や甘い物食べたり、楽しかったなぁ。

 でも帰りに逆方向の電車に乗り間違えちゃって、急いで次の無人駅で降りるんだけど、一時間に一本しか走ってないから、みんなで近くのコンビニ行って時間潰して。

 その頃ママは缶とか紙パックの紅茶がオシャレで甘くってハマってたから、よく飲んでたっけ……」

「紅茶って、なかったんだ?

 てか、電車乗り間違えるほどいっぱい走ってたの?」

「ううん、一つだけだよ。

 でも、上りと下りがあるじゃない?

 時間ギリギリだったから、ホームに止まってる電車見つけて、慌てて滑り込んだんだよね。

 田舎者丸出しだったけど、みんなで笑っちゃって、いい思い出」

「ママの小中って、クラス替えがないくらい、人数少なかったんだよね?」

「そう。

 ケンカすることもあったけど、すごい濃くて楽しかったなぁ。

 中学の時は文化祭で洋楽に合わせて創作ダンスしたり、女子の結束も強かった。

 部活は運動部と文化部が一つずつしかなかったから、ママは運動がしたくて一択だったけど、3年の時部活中に関係ないスポーツしてふざけてたら、顧問の先生に何日か活動停止にされて、帰りがけの先生の車に泣きながら追いかけて、許してもらったりしたっけ……」

「!?

 昭和のドラマみたい!」

「青春時代が、あったんだよね。

 それに比べると、高校は8クラスで同中率が激烈低かったから、まぁ苦労したねぇ……」

「ママの青春、苦労編だね?」



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