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ママのガールズストーリー  作者: 玉城毬
2/5

②ママの生い立ち

「ママがどこで生まれたか、わかる?」

「えーーっと、ばーちゃんち、でいいんだよね?

 大家族だったんだっけ?」

 私は、うんうん、と頷いて続けた。

「そう、正解!

 衣与乃のおうちよりずっと豊かな自然に囲まれた、田舎だね。

 住んでる人もすごい少ないんだけど、家族は同居が多かったし、子どもの数も今より多かったから、いろいろ違うね」

「ママは、兄弟の真ん中なんだっけ」

「そう。

 兄、ママ、弟の三人兄弟」

「女の子一人だったら、すごいかわいがられそう」

「それはもう、家庭によって違うよね。

 友達に羨ましがられることもあったけど、全然そんなことなかったよ。

 女の子はしっかりしなさいって感じで、チヤホヤしてもらえなかったな。

 昔は今より男の子優先で、特に長男が優遇されてたから。

 食事とか教育とかお金かけてもらうとか、格差あったね。

 それに、親戚も近所の子も男のが多かったから、アニメも遊びも男の子モノが優先されて、本当に苦労したよ……」

「うわぁ、かわいそう……」

「だけどね、ママのじーちゃん、衣与乃のひいじーちゃんは、女孫がかわいかったのか、それなりに寵愛されてたわ。

 ママのこと、お福さん、おひいさん、って呼んでたっけ。

 たまにじーちゃんとばーちゃんの間に川の字に寝て、桃太郎の話を聞かせてくれって言われては、またかぁって思いながらむかしむかしって繰り返しお話してたなぁ……」

「すごい、ママ愛されてたじゃん!」

「思い出してみたら、そうだね。

 家父長的立場のじーちゃんにかわいがられてたって、重要なことじゃんね」

「そういえばママって、衣与乃は女の子扱いされて幸せ、ってよく言ってたよね」

「そうそう。

 衣与乃が幸せな女の子でよかったって思った後に、じゃあママはそうじゃなかったんだなって自己肯定感の低さに気づくという……」

「ママがしてもらいたくてもできなかったこと、衣与乃はある程度させてもらえてるってことだね?」

「それはあるよね、子育てあるある。

 でも時々やり過ぎちゃって、子どもを客観視できなくなるっていう……」

「親は親、子どもは子どもなのにね!

 それで、ママはどんな女の子生活してたの?」

「そうだねぇ、逆境だったからこそ、女の子っぽいことに夢中になれたのかもしれないね!

 よくやってたのは、女の子の絵を描くことかなぁ。

 ママんちは貧乏だったから、自由帳とか買ってもらえなくってね。

 広告の裏が白いものや、カレンダーの裏紙をかき集めて、ひたすら描きまくってたね。

 年上のお姉さんに素敵な女の子の絵を描いてもらうのも楽しみで、大事にとっておいたっけ」

「そうなんだぁ。

 ママの絵見たことないから、意外!」

「あんまり一緒にお絵描きしてこなかったしね。

 あと、ぬり絵も好きだった!

 お姫様とかアイドルとか、とにかく目のキラキラした女の子が素敵なお洋服やドレスを着ていて、色鉛筆で薄くはみ出さないように、一生懸命塗ったっけ。

 小物や背景も全部塗りつぶして、一冊全部塗り切ったら、次の新しいぬり絵が買ってもらえて……」

「すごい、たくさんやったんだね」

「そうだね、たーーくさん描いて、女の子の世界を堪能してたなぁ。

 まぁ、大きくなるにつれて、バランスとかファッションセンスが難しくなって、高校前には自然と描かなくなったけどね」

「女の子アニメも、観た?」

「そりゃもう。

 特に夢中だったのは、魔法少女モノだね。

 普通の女の子が、素敵な女性に変身して活躍するっていう、べたで王道なストーリー。

 変身ステッキ持ってるお友達がすごく羨ましくってね。

 自分ちじゃ買ってもらえないから、先が大きなハートの形をしたピンク色の布団叩き棒を、ステッキに見立てて振りかざしてたっけ。

 あと、割り箸に長い紐を結び付けて、新体操のリボンごっこもしたわ~~。

 それから、ストローが手に入ったら、シャボン玉してたっけ……」

「すごい、工夫してたんだね。

 今だったら、100円ショップですぐGETできそう……」

「足りないからこそ、がんばって補うんだよね~~。

 そういえば、ミカちゃん人形も持ってたんだよ、お下がりのね。

 新しい服は買ってもらえなかったから、手持ちの服で繰り返し遊んだっけ」

「それで衣与乃には、たまに新しい衣装を買ってくれるんだね?」

「そうだね、長く楽しく、遊んでほしいからね。

 着せ替える服がなかったら、着せ替え人形の意味が薄くなっちゃうし。

 あぁでも、一年生の時、ミカちゃん人形が出て来る怖いテレビを見てから遊べなくなっちゃって、強制卒業したっけ」

「ちょっと気になるけど、私も遊べなくなったら困るから、やめとく」

 衣与乃は顔を固くしながら、次の話題を促した。

「ママも、プリンセスとか好きだった?」

「大好きだった!

 シンデレラとか、眠れる森の美女とか、何度も読んだよ~~」

「七五三のドレスは、何色?」

「悲しいかな……。

 ママが幼い頃は、大体着物一択だった。

 それでももちろんテンションは上がったし、七五三の写真を来るお客さんに見せては、褒めてもらってたっけ。

 ママの着物は、大体王道の赤だったね!

 ザ・日本人顔だったから、着物や浴衣がものすごく似合って、こけしを見ると思い出すよ」

「昔は、男の子と女の子で好きなものが決まってたっていうよね」

「本当にそうだったよ。

 ランドセルも書道バッグも、男は黒で女は赤。

 ピンクは女の子の色、ブルーは男の子の色、みたいなね。

 今より全然自由じゃなかった」

「ママは一人目の女の子でも、お洋服とか買ってもらえなかったの?」

「ゼロじゃないけど、買ってもらった記憶がほとんどないなぁ。

 親戚とか近所のお姉さんのお古をもらったりね。

 下手したら兄のお下がりの服もあって、悲しかったよ。

 学習机もお下がりで、一人部屋もママだけずっとなかったし……。

 だけど、卒園と入学のワンピースだけは、新しいの買ってもらたんだった!

 甘~~いベビーピンクの、買ってもらったわ~~。

 その頃ショートカットでボーイッシュだったからかなり浮いてたけど、自分的には幸せだったねぇ」

「ママ、すごい嬉しかったんだね」

「田舎で男の子に囲まれて育ったから、オシャレで女の子的なものへの憧れは強かったんだよねーー」



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