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男爵令嬢アンリエッタの一等星



 お前は母親に似て愛らしい顔立ちをしているが、だが決して母親のようになってはならんぞ。


 それが、男爵令嬢アンリエッタに幼い頃からかけられた呪いであった。

 呪いといっても実際に本当の呪いというわけではない。だがしかし、その言葉は確かに呪いであった。


 顔立ちは確かにとてもよく似ていらっしゃる……それでは将来はきっとあの方のように……


 そんな言葉が幼いころから身近で囁かれていた。


 アンリエッタの母親は既に亡くなっている。アンリエッタに母の記憶はほぼ無い。思い出らしい思い出はなく、母についての情報は周囲の方が余程詳しいくらいだった。

 けれど、幼いアンリエッタが母の事を聞くと途端に気まずそうな顔をして何事もなかったかのようにやんわりと話題を変えられてしまうのだ。

 これで何もなかったなんて思える程、アンリエッタは能天気な子供ではなかった。


 母親について詳しく知る事になったのは、本当に何の事はない。

 そこにアンリエッタがいるという事実に気付かずに彼女の母親について話をしていた使用人たちからである。


 アンリエッタさまは日に日にクローディア様に似ていらっしゃる……

 あぁ、あのまま成長なされたら、さぞそっくりになる事だろう。

 おぉ、何と恐ろしい……

 旦那様もお可哀そうに。最愛にして最も憎むべき方とそっくりな娘の成長を見守るしかないなんて……


 聞こえてきた声に、あぁ、これはわたしの母についての話をしているのだな、とはすぐにわかった。

 クローディア、というのがアンリエッタの母の名であるのだろう。

 今までその名前ですら家の中では忌々しいとでもいうのか、口に出される事などなかったのだ。


 ここでアンリエッタが姿を見せれば即座に使用人たちは口を噤むだろう。だからこそアンリエッタはそっと物陰に隠れるようにしてその話に聞き耳を立てていた。


 母の思い出などほとんどないアンリエッタは、どんな内容であっても母の事が知りたかったのだ。


 けれども、その思いはきっと叶わない方が良かったのかもしれない。

 アンリエッタが知った事実は、自分によく似た母親はどうしようもないロクデナシである、というものだったのだから。


 父と母は見合い結婚であったが、それでも仲睦まじく暮らしていた。アンリエッタが生まれた時もだ。

 だがしかし、アンリエッタが生まれた直後からそれは徐々に崩壊の兆しを見せていた。


 本来クローディアは恋多き女であったらしい。

 だが蝶のようにひらひらと異性の間を飛び回って婚期が遅れてしまえば、クローディアの両親は彼女を異性と関わる事もない修道院へ入れるつもりでいた。

 どうやらクローディアはそれを回避するためだけに定められた婚約者であるアンリエッタの父と見合いをして、結婚し、そうして子供を一人産む――まではどうにか我慢していたようなのだが。

 長らく奔放に生きてきた女が急に貞淑になどなれるはずもない。むしろその期間だけとはいえ我慢できていた事実は褒められるべきなのだろう。


 アンリエッタは直接見たり聞いたりしたわけではないが、当時の事を知る使用人たちや父の様子からそれはきっと、アンリエッタの想像を容易に上回るものだったのかもしれない。

 醜聞、と一言で言ってしまえばそれまでだが巻き込まれる側はたまったものではない。


 だからこそ、痴情の縺れの果てに死んだ女の事をこの家では禁忌として極力口を噤んでいたというわけだ。


 だが、彼女が遺した一人娘は恐ろしいまでに母親と瓜二つであった。

 幼いうちはまだしも、成長するにしたがってどんどん生前のクローディアへと近づいていく。

 生まれた後はロクに母と触れ合う事もなく、ほとんど乳母が育てたようなものだというのにアンリエッタのちょっとした仕草は生前のクローディアと重なる事があった。それが、余計に父に難しい顔をさせる原因となったのだろう。


 流石にこれだけの事を知ってしまえば、アンリエッタももう母の事が知りたいなどと言えるはずもない。むしろ母のようになってはならない、と幼いながらに戒めた。


 けれども、どうするのが正解なのかがよくわからなかった。


 そもそもアンリエッタは意識して母のようになろうと思っているわけではない。だが、日々成長していくたびに勝手に似ていく顔はどうしようもないし、自分では特に気にしているわけでもない仕草が似ていると言われてもそれだってどうしようもない。

 別に真似をしているわけではないのだ。そもそも母の事を知らないので、何をしたら母とかぶるのか、というのもわかっていない。


 だが、知っている人は知らないアンリエッタの行動の一挙手一投足を見て似ている所をみつけてはひそひそと囁くのだ。

 どうしたものかな、と悩んでいたアンリエッタではあったが彼女に転機が訪れたのはその後誘われた茶会であった。



 茶会、といっても本格的なものではない。

 デビュタントすらまだという令嬢たちが集まっての、ちょっとした予行練習のようなものだ。

 誘われるのも知り合いくらいの、ちゃんとした茶会と比べればまだ気楽に参加できるようなもの。


 とはいえ、アンリエッタはその茶会を主宰している伯爵令嬢とは知り合いというわけではなかった。自分の友人でもある子爵令嬢がその伯爵令嬢と仲が良いらしく、アンリエッタはたまたまその縁で誘われ、そして参加できたに過ぎない。そうでなければこのような集いに自分が参加できるはずもなかったのだ。


 だが、そこでアンリエッタは理想を見た。


 一つ年上の令嬢。

 聞けば侯爵令嬢らしく、その所作は年が一つしか変わらないだなんて嘘のようだった。

 彼女の周辺だけはやけに輝いて見えた。


 息をするのも忘れる勢いでアンリエッタはその令嬢を見つめていたのだ。


 そんな令嬢の名を、エメラダという。


 この瞬間、アンリエッタは彼女のようになりたいと強く願った。

 彼女こそが私の道標なのだと信じて疑わなかった。


 彼女のようになれば、きっと母のようだなどと言われる事もないだろう。

 それは、アンリエッタにとってもたらされた救済ですらあったのだ。


 彼女のようになれば、もう父も、母を知る使用人たちも誰も悲しむ事はない。


 アンリエッタにとってそれは天啓ですらあった。


 他の者が聞けばそんな事はないと失笑したかもしれないが、アンリエッタにとってエメラダという存在はアンリエッタを救うために天がもたらしたものだと信じて疑わなかったのだ。


 それからアンリエッタはエメラダに少しでも近づけるよう努力した。

 遠くから見ているだけでは参考するにしても限度がある。少しでも近づいて、彼女の全てをこの目に焼き付けなれば。

 彼女の近くにいても許されるような存在にならなくてはならない。

 そもそも自分は男爵令嬢で相手は侯爵令嬢だ。だからこそ近づくのは容易ではない。礼節を弁えなければ、彼女の不興を買うような事になれば、あっという間にその存在は遠ざかるに違いないのだ。


 だからこそアンリエッタはエメラダに対する好意を隠しもしなかった。

 尊敬と好意とを只管前面に押し出してエメラダの視界に入る事を許されるようにと言動には細心の注意を払った。


 結果として、周囲はアンリエッタをエメラダを慕う令嬢の一人と認識した。

 別にエメラダに近づいて、彼女の持つ権力のおこぼれに与ろうだなんて思ったりはしていない。ただ、近くで見て、彼女のようになりたいだけだ。


 とはいえいきなり内面をそっくりそのままエメラダのように、というのは無理な話。

 この時点でできるのはドレスの色を似せる程度だった。


 そうして前回参加した茶会の時と同じ色合いのドレスを着て参加する、というのを繰り返しているうちに周囲の令嬢の目についたのかそれはどういうつもりかと聞かれてしまったが、アンリエッタは隠す事なく心情を伝えた。どうせ色だけだ。ドレスそのものを同じにするなんて事はできるはずがない。相手は侯爵令嬢で、自分は男爵令嬢。財力からして大きな違いがある。

 もし前回のお茶会でエメラダ様がお召しになっていたドレスと同じ物が着てみたい、なんて父に言ったとして、果たしてその願いが叶う事はなかっただろう。まだ幼いアンリエッタには自分の家の資産がどれくらいあるかを正確に把握してはいないが、それでも一度くらいのお願いならともかく今後毎回そんな事を言えばあっという間に家の財政は傾くと理解できていた。


 エメラダも色くらいならまぁ……と受け入れてくれたので、堂々と参考にする事ができる。


 けれども、アンリエッタにとって不幸な事にエメラダは貴族院へ入学する事になったので一年会う事ができなくなってしまった。

 その一年の間、アンリエッタは友人たちの茶会などでエメラダの情報をどんなものでもいいからと必死に集めた。少しでも近づきたいという願いは変わらなかったのだ。


 そうして一年後。アンリエッタもようやく貴族院に入学する年齢になり、ようやく自分の目でエメラダを見る事ができると気持ちは大変浮ついていた。

 エメラダと会えない間に、以前彼女がよくやっていた髪型にしていたけれど貴族院に入ってからのエメラダの髪型は以前とは変わっていた。

 髪の長さは昔と比べて差はそれほどないので、同じ髪型にやろうと思えばできなくもない。


 けれど、アンリエッタはあまり器用な方ではないので使用人の手も借りずに一人だけでエメラダの髪型を真似ようとするのはすぐには無理そうだな、と断念する。

 断念といってもあくまで一時的なものだ。いずれは同じ髪型にしたいと思っている。


 それよりも先にできそうなのは、エメラダが所持しているハンカチの刺繍だった。


 器用ではないアンリエッタだが、それでも刺繍などのコツコツと時間をかければ最終的にどうにかなるタイプのものはそれなりの出来で完成させることができる。

 だからこそ、エメラダが使っているハンカチの図をしかと目に焼き付けて、記憶を頼りに夜な夜な自らのハンカチに刺繍を施した。

 とはいえ、どうやらその模様はエメラダの家の家紋でもあったらしく、それを使うのはやめるようにと後日窘められてしまったのだが。


 まぁ、勝手に家紋を使うのは万一何かあった時にお互いよろしくない。

 それにここで駄々をこねてエメラダの近くにいる事すら許可されなくなるのはもっとよろしくない。

 アンリエッタは物分かりのいい振りをして、家紋については諦める事にした。とはいえ、そこに使われていた花だけならば刺繍に使っても問題ないとの事なので、嬉々としてその花をハンカチに刺繍する事にした。



 その後、エメラダに少しでも近づけるようにとアンリエッタはできるところから手を付けていく事にした。ちょっとした装飾品。流石に同じ物は財力的に無理だけど、似たようなものならどうにかなる。

 それから髪型。日々悪戦苦闘しつつあったが、どうにか同じものが自力でできるようになった。

 そして近くでエメラダを見続けた事で彼女のちょっとした仕草などもより理解できるようになってきた。


 着々と彼女に近づけている。

 そう、思っていたというのに。


 アンリエッタにとっては不幸な事に、そこでとうとうエメラダが学院を卒業する事になってしまったのである。


 卒業間近にエメラダが婚約者から贈られた香水と同じ物を用意したかったが、流石に無理があった。エメラダの婚約者は公爵家の人間だ。どう足掻いても同じ物をポンと手に入れられるだけの財力はアンリエッタにあるはずがない。だからこそ、匂いを覚えて極力近いものを自分の懐からでも支払える店でオーダーして作ってもらった。どうにか卒業式に間に合ったものの、けれどもエメラダとはこれで当面会う事ができなくなってしまう。

 学院にいる時は、ちょっとした外出は許可されるがあくまでも必要な物を街に買いに行くだとかの本当にちょっとした外出であって、卒業し、婚約者と結婚し他の街へ行ってしまったエメラダに会いに行くのはちょっとした外出の範囲を超えてしまっている。


 とはいえ、学院内で知り合った学友たちからエメラダの噂は常に聞かせてもらっていたので、これならアンリエッタが学院を卒業した後、もしエメラダに会えたとして折角似てきたというのにそれがかけ離れてしまう、なんて事にはならないだろう。


 アンリエッタにとってエメラダは目指すべき目的地であった。

 このまま母そっくりになるのではないか、と思う自分を救うただ一つの指針。

 大海原を行くための、さながら羅針盤のような存在。


 彼女のようになれば、自分は救われるのだと信じてやまなかった。

 それは初めて出会った時から変わらない。


 アンリエッタが学院を卒業した後は、再びエメラダの近くに行くのだと既に進路を決めていた。

 エメラダのようになりたい、とはいえ、そうするためには足りないものが沢山ありすぎる。

 エメラダは学院を卒業した後で婚約者と結婚した。

 つまりは、自分にも夫となるべき存在が必要である。


 欲を言うならエメラダの夫と同じような相手がいい。しかしエメラダの夫は公爵家の人間だ。男爵令嬢であるアンリエッタを妻にしよう、などと思う公爵家の令息がいるとは思えないしましてや年頃の令息はとっくに相手がいる。

 アンリエッタと同年代で婚約者が決まらない、という令息は大抵身分が低い家がほとんどだ。


 だが、そういった相手と結婚するのはアンリエッタにとって何一つとして意味がない。

 そういった男と結婚したとして、果たしてアンリエッタがエメラダに近づくための何か役に立つか、となるとまず無理だろうと思ったのだ。

 アンリエッタにとって夫とは新しい家庭を築くための伴侶ではなく、エメラダに近づくための舞台装置の一つでしかなかった。


 アンリエッタは母親の事もあってかまだ父が婚約者を決めかねていたのもあって、だからこそ家の方で決めようとしていた相手の釣書からアンリエッタ直々に選ぶことにした。自力で相手を見繕うにしても、流石に学院を卒業後にすぐさまエメラダのように結婚するなら時間が足りなさすぎる。であるならば限られた手札の中から選ぶしかない。


 そうして選んだ相手はエメラダの夫のような身分の高い男ではなかったけれど。

 しかし彼ならば、アンリエッタの目的を果たしてくれるだろうと彼女は信じて疑わなかったのである。



 アンリエッタが結婚相手にと選んだ男は商人であった。

 代々続く商家で、その財だけなら下手な貴族以上に裕福な男だ。

 そんな裕福な男がどうして男爵令嬢などという相手を選んだか、というのは割とわかりやすい理由からだ。

 男は野心家で、あと持っていないものは身分だけであった。

 勿論大陸中に名をはせる豪商であるといえども、それでも身分は平民である。

 貴族としての身分を得る、それが男の望みでもあった。

 とはいえ、身分が上の高貴なご令嬢が金と引き換えに身分を売り払うような真似をするはずもない。家が傾いて余程切羽詰まっているような家ならまだしも、残念なことにそういった条件の令嬢はいなかったのである。何十年か前であったらいたようなのだが……


 低位とはいえ貴族は貴族。男はアンリエッタを妻とする事で貴族の仲間入りを果たす事にしたのであった。


 そこから何か功績を出せば新たな爵位を賜る可能性もある。実力でのし上がれ、というのであれば男にとってそれは得意分野であった。ただ、今までは貴族となるための功績だとかそういったものとは無縁であったが故に、平民でいるしかなかったに過ぎない。


 男の目的はハッキリしていた。

 だからこそ、アンリエッタもまた自らの目的を告げたのだ。

 エメラダに近づきたいと。

 彼女のようになりたいのだと。


 男は侯爵令嬢エメラダの事を知っていた。

 そしてアンリエッタがエメラダに憧れ、彼女のようになりたいと色々している事を。

 実際に高位貴族に知り合いがいるのであれば、男が新たな客を獲得する事にも繋がるだろう。だからこそ、男はアンリエッタのその願いを止める事はしなかった。


 アンリエッタが学院を卒業してすぐに二人は結婚し、新居はエメラダが嫁いだ街に決めた。

 学院にいた時よりは近づけないかもしれないが、それでも同じ街に暮らす事になるのだ。そうなればエメラダ本人を目にする機会はある。幸いな事に、と言っていいものか、アンリエッタの夫となった男は早速街の中であれこれ行動に出ていたらしく、挨拶回りのようなものだ、と言ってアンリエッタを伴ってある場所へと連れていってくれた。


 いくつかの家の貴族たちのもとで挨拶をする事になり、そしてその中にはエメラダが過ごしている家もあった。


 エメラダ様はこのような家に今住んでらっしゃるのね……とアンリエッタは早速その光景を瞼に焼き付けんばかりに見ていたし、夫には要望を伝えた。

 今から家の外観をエメラダの暮らす屋敷と同じようにするのは無理だとしても、内装をせめて近しい感じにしたいのだ、と。

 男は正直それに何の意味があるのか……と思いはしたが、それでも妻の望みを叶える事にした。

 どうやらこの妻は、エメラダが好きで好きで慕っている事は周囲の貴族にとって既に知られている話であるし、また、それらを微笑ましく見守られているのだというのも一応噂で聞いていたからだ。

 その噂が本当である事を確認し、では、エメラダと繋がりがある貴族には比較的話をしやすいだろうかと考える。

 どうあっても妻の存在はそのための話のネタでしかない。

 とはいえ、切っ掛けになる話なんて意外とどうでもよかったりするものだ。


 そんな冷めた内情の夫とは対称的にアンリエッタはより一層エメラダへ近づくべく努力を重ねていった。


 今まではエメラダに近づくといっても、例えば同じ色合いのドレスであったり似た装飾品だとか、パッとみた雰囲気が似ているだけのもので精一杯だった。

 けれども今は違う。


 これからは、エメラダが身に着けていたドレスと同じデザインのものをオーダーする事も可能になるのだ。


 今までかけられていた制限が解除されたアンリエッタの行動力は凄まじいの一言に尽きた。

 積極的にエメラダの話を集め、そこから彼女に近づこうとしていくそれは情熱というよりも執念と呼ぶべきものだった。


 そうまでしてアンリエッタが咎められる事がなかったのは、物理的にエメラダに強引に接近しようとするでもなく、ただ噂を集めて、そして時に直接目にした情報からエメラダに似せようとしているだけで済んでいたからだ。


 もしエメラダの家に強引に押しかけて彼女の迷惑も顧みずにやらかしていたのであれば、周囲の貴族たちのアンリエッタへの態度ももっと違っただろう。

 けれども、憧れている女性に近づきたい、という単なる好意と羨望だ。

 貴族の流行など大抵上の身分の者から発生するし、例えばちょっと風変わりなデザインのドレスを着ている発端が男爵令嬢であれば笑い話にされる事もあろう、けれどそれが女王が着ていたならば。あっという間にそのデザインは他の貴族女性も取り入れるに違いないのだ。


 だからこそ、アンリエッタがしている行為は貴族女性としてはそこまでおかしなものではない。


 ない、のだが。



 彼女の情熱と執念は留まるところを知らなかったのか、気付いた時には引き返せないところまできてしまっていたのである。

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