10章 明かされる真実と記憶 3話
ともかくジェイルが殺された一年前の同じクリスマスの日にオキディスは殺された。
「だが、こうして真実を口にしたとしても、この虚無の世界に落とされたとなっては」
急に悔しそうな表情になるオキディス。
「この虚無の世界ってのは何なんだ?」
落ち着きを取り戻したジェイルはオキディスにそう聞いてみた。
「虚無の世界とは、天使界と地獄から完全に隔離された異空間だ。ここでは肉体が時の針と共に経過する」
「つまり、どう言う事だ?」
首を傾げるジェイル。
「現世と同じく、普遍な肉体であると言う事だ。老いもすれば、飢えもする。ここはそう言う牢獄だ。天使界で飢えを無くす儀式を受けていてもどうにもならない。ここで死ねば、魂も他の所に行く事がなく虚無の世界に永遠に閉じ込められる」
陰鬱な表情で説明するオキディス。
「……くそ」
ジェイルは閉ざされた虚無の世界の仕組みを理解するとどうにもならない、と悟り悔しさと怒りが込み上がってくる。
「そもそも、お前はどうやって神官になったんだ? ガーウェンの話じゃお前は短期間で神官の地位にいる事があり得ないって言ってたぞ」
そして、ジェイルは少しでも気を参らわせよう、と目の前にいるオキディスに詰問する事にした。
「あの男はそこまで知っているのか? いや、今となってはどうでもいい事だな。どうせ文字通り死ぬのだから」
死期を悟ったかのような切ない表情のオキディス。
確かにガーウェンは色々と知ってるが、そんな事でガーウェンを疑う事が無かったジェイル。
既にジェイルの中では窮地を何度も救ってくれたガーウェンは信頼できる恩人でもある。
「すまない。少し話が脱線してしまったな。続けよう」
そう言うとオキディスは気持ちを切り替える。
「私は死後、当然ながら地獄に落ちた。そしてイルメン島で彷徨っている私を、地獄の定期調査をしていたユエルに救済されたのだ」
「お前あんなイカレタ島にいたのか?」
少し驚くジェイル。
「ああ、そうだ。そして、何故かユエルは神に私を神官に出来るように進言したんだ」
ただでさえ地獄に落ちた人間を天使界に招き入れる事などあり得ないのに、神官にさせると言う更にあり得ない話に、納得がいかないジェイル。
そもそも地獄に落ちた人間を神官にさせるなど、他の兵士達が納得いかないはずだ。そんな受け入れ難い話すらも神であるスザクなら説き伏せたと言う事になる。
「あのスザクって奴は本当に神なのか? どう見てもそこらにいる爺さんと変わんないぞ」
オキディスの話からスザクが本当に神であるか、と疑念を持ち始めるジェイル。
「今いる神はハッキリ言ってしまえば代理人だ。大昔にいた神が行方を晦まし、天使界にいる幹部達の推薦で、古株であった当時の幹部であるスザク様が、神が見つかるまでの代理人の神として選ばれた」
少しずつ今の天使界を理解していくジェイル。
「でも普通、神の代理人に選ばれるとしても、当時の神の右腕と言われる神官が務めたりするもんじゃないのか? 例えばユエルとか」
ジェイルはユエルが神だ、と思うと不快な表情になってしまう。
「大昔の神が行方を晦ますと同時に、当時の神官達も姿を消した。私はユエルからそう聞いている。それと当時のユエルの事に関しては、私は一切知らないんだ」
それで仕方なく神官の次の地位の人間に神の代理人を務めさせたと言う事か、とジェイルは理解した。
それにしても何故ユエルは地獄の人間であったオキディスを神官にさせたかったのかが腑に落ちないジェイル。




