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電子書籍化決定 地獄劇  作者: ラツィオ
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7章 思わぬ邂逅 12話

 ジェイル達は外に出るといくつかの街灯が暗い夜道を照らしていた。鳥や虫の鳴き声すら無く静寂としている。


 それでも兵士の一人や二人はいるのではないか? と辺りを警戒するジェイル。


 「そんな所でキョロキョロしてないで行動あるのみだ」


 いつの間にか平常心を取り戻したガーウェンはジェイルの先を歩きだした。


 そして、ガーウェンは少し進んだ家の裏の物陰に隠れ辺りを見回し進んでいく。


 ジェイルもその後に急いで付いていく。


 すると、ランタンを手にした兵士達が町を巡回していた。


 「気を付けろ。こっちは兵士が一人ら()られている。もしかしたら複数犯の可能性もある」


 「分かっている。とにかくあのコートの男以外を見かけても迷わず殺せ。(てん)使()(せい)(かい)からの通達だからな」


 ジェイル達の前にいるその兵士達は既に剣を手にし、同胞以外を手に掛ける事を容認している様子だった。


 「おいガーウェン。もし(てん)使()(かい)の住民達がここいらをうろついてたらまずいんじゃないか? 殺されるぞ?」


 家の裏の物陰から息をひそめていたジェイルは(てん)使()(かい)の人間の安否を気にする。


 「安心しろ。あの口ぶりからして既に住民達は帰宅させてるはずだ。いくら俺らを殺すための強硬手段とは言え長年掛けて(かい)(らい)としてきた住民達を安易に殺すような()(こう)はしないだろう」


 緊迫した空気の中で兵士達を観察していたガーウェンの推測にそうあって欲しい、と願うジェイル。


 家の裏の物陰からジェイル達は兵士達に(けい)(がん)するような視線を向けていると、兵士達二人は身体を反転させ左右別々の道に歩いて行く。


 二人の兵士達がジェイル達の視界から消えるとガーウェンが「行くぞ」と指示を出し駆け出していくとジェイルもその後に続く。


 隠密でありながら素早く移動していくジェイル達。再び別の二人の兵士達がジェイル達の前を歩いてくる。急いで家の裏の物陰へと隠れるジェイル達。またいなくなった隙を突いて進んで行こう、と思い定めていた。


 しかし、今度は一人の兵士が道の前で止まり辺りを監視し、その(かん)もう一人の兵士が家の中や物陰を隈なく探し、探し終えると道で監視している兵士と合流し、前へと進んで行く。


 既にジェイル達が前や左右に移動しても家の物陰を探す兵士の目には入らないが、道で監視している兵士の視界には入ってしまう。かと言って後退しても進む意味が無くなってしまう。


 このまま二人の兵士達が近づいて来ればジェイル達は間違いなく見つかる。


 「どうする?」


 不安な面持ちになるジィエル。


 「俺が囮になって引き付ける。お前は今の内にこの家を回り込んで奴らの一人を()れ」


 ガーウェンの鋭い声にジェイルは動揺する。


 ここに来て初めて人を(あや)めてしまうのか、と思うと手が震えてしまうジェイル。


 「ジェイル。幽界の地で殺せってのは言葉の綾見たいなものだ。どうせ復活するんだからな。この程度の事で揺らいでいたら、お前の(おん)(てき)を抹消するなんてのは夢想家と同じ戯言(たわごと)で終わるぞ」


 ガーウェンは()(しゅく)しそうなジェイルを見て奮い立たせようと()()する。


 「……分かってる」


 ジェイルは動揺は残るが、俯きながらそう答えると隠れている家の裏から右に回っていく。


 そして、ジェイルが家の右の裏に回ったことを確認したガーウェンはわざと兵士達の前に姿を現す。


 「何者だ貴様⁉」


 ガーウェンを視認した兵士達は鋭い声を上げながら、剣を構えガーウェンの元に走り出す。


 「おいおい、そんな物騒な物持ってたら女なんて寄り付いちゃ来ないぞ」


 嘲笑いながら挑発するガーウェンはそのまま先程の家の裏の物陰に身を潜めた。


 兵士達は剣幕を突き立てながらガーウェンが隠れた家の物陰に入ろうと左に曲がった。


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