20章 フィナーレ 2話
そして、少しの時が経ち、ジェイルとヨシュアはリンダルトに戻っていた。
木が並び立ち、石造りの家なども近くにあるいつも通りの辺鄙な場所。
「くそっ! ガーウェンの奴」
ジェイルは虫の居所が悪いように不機嫌な様子だった。
「そう怒らないであげなよ。ガーウェンも考えが合っての事だと思う」
ヨシュアは落ち着いた様子でジェイルを宥める。
ちなみにジェイルはこれでガーウェンに二度殺された事になる。
ジェイル自身それを知る術はない。
「せっかく傷を治したってのによ。骨折り損だぜ」
ジェイルは自身で刺した腹部を見て見ると、塗った後が残っていたことに気付く。
どうせ蘇生されるなら傷跡が残らないで欲しかった、と思い、同時に殺されるならわざわざ直す必要も無かった、と後悔するジェイル。
「ようお前ら。久しぶりの地獄の空気はどうだ?」
木の影からニヤニヤした面持ちで出て来たガーウェン。
「このヤロー! よくも殺してくれたな!」
ジェイルは剣幕を突き立てながらガーウェンに近付く。
「どの道、天使界にいてもやる事ないだろ? それにここの方が都合がいい」
「何の事だ?」
ガーウェンはいけしゃあしゃあとそう言うと、ヨシュアは首を傾げる。
「念のため聞いておくが、パーラインはどうした?」
ヨシュアの質問に答えるでもなく、まるで現状確認でもしようとしているガーウェン。
「……パーラインなら生者の血で現世に蘇った」
ヨシュアがどこか悲傷した表情で言う。
「そうか。ならヨシュア、お前を現世に蘇らせてやる」
ガーウェンがニヤついた笑みでそう言うと、ジェイルとヨシュアは驚愕する。
「ま、待てよ! じゃあお前が腰にぶら下げている剣には生者の血が付いているのか?」
ジェイルは慌ただしい様子でガーウェンの腰に備えているファルシオンを指さす。
「いや、この剣には生者の血は付いていない」
それもそのはず。ガーウェンは先程、生者の血を邪神の血に転換させ、スザクを抹消した後だったため手にしている訳がない。
ガーウェンがイエスの名だった頃、地獄に持ち込んだ生者の血は三人分。
一人分は自身に使い、現世に行き、ジェイルを殺し、もう一人分は地獄で再開したバロックに託し、残りの生者の血はスザクを抹消するために取って置いた。
ジェイルにガーウェンが手引きしている事を悟らされないため、敢えてバロックに託した事もあった。
それは、ナヌアの提案でもあった。
少しでも、現世でジェイルを殺した張本人をガーウェンと気付かせないための配慮。
ガーウェン自身、ジェイルを現世で殺した事は今でも後ろめたく思っているからだ。
後に傷跡や芥蔕を残さないためでもあったのだ。
そんな事など露ほども知らないジェイルは何を馬鹿な事を言っているんだ? 見たいな表情でガーウェンを見る。
「だったらどうやって僕を現世に蘇らせるんだ? 生者の血はないんだろ?」
ヨシュアが怪訝な面持ちでそう言うと、ガーウェンはコンパスのような物を取り出した。
「あれ、それ船で持ってたやつだよな?」
「そうだ。これは六角形の懐中時計みたいな形状だが、これは時計ではなく、生者を呼び寄せる生神盤だ」
「せいしんばん?」
ガーウェンの淡々とした説明に首を傾げるジェイル。




