20章 フィナーレ 1話
話はガーウェンとニイナの会話にまで戻る。
「あんたが地獄に言ってからは、あたしたちは散り尻になった。アランバとは別れ、バロックと一緒に地獄に落ちたしね。私も新居地を探そうと思ったがいつの間にかお尋ね者となり、放浪していたさ」
ニイナはテラスから歓喜に満ちた天使界の穏健達に目を向けながら尊い表情でそう言う。
「バロックやアランバとは地獄で会った。今じゃ第二の生活を送っていたがな」
ガーウェンは儚げな瞳になる。
「その様子から見たらシャーディッヒは見つからなかったんだね」
「ああ。五十年は探したが結局見つからなかった。ジェイルと別れてからも探し続けたがそれでも手掛かり一つ掴めない」
ガーウェンは消沈としながらニイナの気掛かりな質問に答えた。
「あの子は本当にいい子だった。真っすぐで一途で、何より優しかった」
「……ああ。俺の自慢の妃だからな」
二人は感傷に浸るように話す。
ガーウェンだけでなく、天使界の住民に愛されていたシャーディッヒ。
果たして、シャーディッヒが見つかる日は来るのだろうか。
「まあ、あんたの気が変わって、私に生者の血の秘密を教えたように転機は訪れるさ。あんまり悔やむんじゃないよ」
「……すまないな」
ニイナはガーウェンを憂いて、励ますと、ガーウェンは儚さと有難味を込めた言葉を口にする。
あまりにも疲弊したかのような顔にニイナも心配していた。
「んじゃ私は行くよ」
「じゃあな。……最後に一ついいか?」
後ろを振り向き歩こうとするニイナを最後に呼び止めるガーウェン。
「なんだい?」
ニイナに若干顔を向けているガーウェンに振り向くニイナ。
「お前は楽しかったか? あの十万年以上の日常は?」
ガーウェンは自分と同じく、責務に心を囚われていたのか気掛かりだったニイナにそう声を掛ける。
「そうだねえ。正直に言うと半々かね。物足りなさは感じていたけど、あの穏やかな日常は後になって恙無いものだとも感じた。だからこそ善し悪しで言うと分からないってのが本音さ」
ニイナは愁然とした声音でそう言うと、「じゃあね」と言ってガーウェンの元を去った。
「フン、分からないねえ。まあその気持ちは分かるがな。にしてもナヌアの奴、味な真似しやがって」
ガーウェンは哀愁を漂わせる雰囲気で、最後に右手の甲を見てぼそりと呟く。
ガーウェンの右手の甲のタトゥーを消したのはナヌアだった。
その事に感謝や、余計なお世話など、思う所はあったが、ナヌアを非難する気にはなれなかった。
ニイナが去り、一人黄昏るように天使界の民達を見守るガーウェン。
すると、テラスにジェイルとヨシュアがやって来た。
「ガーウェンじゃねえか?」
「ああ。ニイナさんの言った通りだ」
医務室で治療を終えたジェイルと、付き添いだったヨシュアがガーウェンの元に向かってくる。
「お前らか。そっちも片付いたようだな」
「ん? まあやれる事はやったがお前も何かしてたのか?」
ガーウェンは後ろを振り向きジェイルとヨシュアに意味深にそう言うと、首を傾げるジェイル。
「俺の事は気にするな。それよりどこかに行ってたのか?」
ガーウェンは、はぐらかし話題を変える。
「ああ。さっきジェイルの傷を医務室で塗ってきたんだ。戦闘で負傷してたから」
ヨシュアはそう言いながらジェイルの腹部に目をやる。
「は? わざわざ治しに行ったのか。馬鹿だねえ」
ガーウェンは目を細めながら呆れていた。
「何が馬鹿だ。ほっといてたら出血多量で死んでたんだぞ」
眉を顰めながら反論するジェイル。
「馬鹿は馬鹿だ。なんせ……これから死ぬってのによ」
ガーウェンは不敵に笑う。
その言葉に怪訝な面持ちで向かい合うジェイルとヨシュア。
「おいっ! あれ何だ⁉」
「「んっ?」」
ガーウェンが慌てる素振りでジェイル達の後ろを指さし、ジェイルとヨシュアも動揺しながら後ろを振り向く。
すると。
ド、ドン!
二発の銃声が鳴りなんと、ジェイルとヨシュアが後頭部を撃たれ即死した。
撃ったのはもちろん、見事策略にハマった事をニヤニヤした面持ちで喜んでいたガーウェンだった。
「ハハハッ」
ガーウェンは二丁のピストルを構えながら愉快に笑う。




