19章 救い 2話
その間、ナヌアはガーウェンを見ているのが辛くなり、哀悼の意を持ちながら見守っていた。
「……やるよ」
ガーウェンは涙を拭い、目を赤くさせながら、決意に満ちた表情で口にする。
「……ありがとうガーウェン君。早速だが本題に入ろう。まず、先程も言ったように、現世に居る、ジェイル・マキナと言う男を守って欲しい」
ナヌアは誠意を込め感謝の言葉を告げると、落ち着かない様子で語りだした。
「マキナの姓も、今じゃ絶滅危惧種って訳だ」
ガーウェンは渋い表情でそう言う。
「ああ。そこで私から提案がある」
「聞かしてくれ」
ナヌアの言葉に疑いなく聞くガーウェン
……
「何だと! 俺にそんな事を……」
ガーウェンは驚愕し、その場で塞ぎ込むように俯く。
「これしか方法がない。ユエルとスザクは生者の血を量産して、既に何度か現世に赴いている。いつ現世に居るジェイル・マキナを殺め、天使界で抹消する事など造作もない。彼を救うにはこれしか方法がない」
真摯に説得し続けるナヌア。
「……分かった」
その言葉にガーウェンは渋々了承した。
一体、ジェイルを救う方法とは?
ガーウェンは一度リンダルトに戻ると、組織を構成し、リンダルトを制圧しようと企んだ。
更にベルマンテに居るバロックの元を訪ね、一人分の生者の血を託す。
そして、現世で二千二十七年の十二月二十五日の深夜。
黒いフードを被った一人の男が、ジェイルが住んでいるアパートに向かっていた。
これから行うのは、誅戮でもなければ断罪などでもない。
男は深い罪悪感に蝕まれているかのように涙を流す。
既に右手には自身で戒めと思い刻んだ、十字架の上にドクロを被せるように刻んだタトュー。
そして、男はジェイルのアパートに着くとインターホンを鳴らした。
ジェイルがふてぶてしい態度でドアを開けるや否や、右手に持っていた銃をジェイルの額にゆっくりと向け、引き金を引いた。
絶命したジェイルを悲哀に満ちた表情で見ると、男はすぐにジェイルのアパートを逃げ出した。
まるで逃避でもしているかのように、何かに逃げている感じがしてならない男。
雑貨屋の裏路地に入りフードを脱いだ男。
その正体は誰であろう、ガーウェンだった。
「……すまない……すまない」
嗚咽を漏らしながらひたすら居ないジェイルに謝り続けるガーウェン。
ユエルの提案とは、ガーウェンが自身で手にしている生者の血で現世の地に蘇り、ジェイルを殺し、ナヌアがジェイルを自然界に招き入れ、ユエルを殺してくれと切願する事だった。
そして、ガーウェンがジェイルを保護し、天使界に行くように誘導する事が目的だった。
トラブルが発生したが、幸いな事にジェイルはユエルの元に辿り着けた。
ガーウェンの役目は、ジェイルを救い、導き、ユエルとスザクを抹消する事だった。
今まで迫真の演技を演じ続けていたガーウェンに、ジェイルは度々、不審に思っていたが、腹案通りに事が進んだ。
そして、虚しさしか残らない今に至る。
ここまでお読み頂き、評価して下さった読者の皆様方、本当にありがとうございます。
19章「救い」はここで終わります。
次章で最終章となりますので、是非ご一読ください。
よろしくお願いします。




