18章 散りゆく花 4話
叩き付けられたスザクは、呻き声を上げ仰向けに寝転んでしまう。
「シャーディッヒよ! 怪我はないか?」
イエスが逼迫した表情でシャーディッヒの元に急いで駆けつける。
「大丈夫よ。それより貴方……」
シャーディッヒは麗しい瞳で、ファルシオンをイエスの元に伸ばす。
「ん? これはどう言う事だ?」
シャーディッヒに訝しい目を向けるイエス。
「貴方のために作ったの。私と剣を交えるのに相応しい剣を。貴方の懐に収まる私の分身を……渡したかったの」
シャーディッヒの真心こめた言の葉に、イエスは目を大きく開く。
その剣は正に端正された物だった。
雑念や疚しい気持ちなど込めず、ただ愛しき人のために製作した至高の剣。
「……そうだったのか。お前はスザクとの一騎打ちに勝って、この剣をの価値を高めたかったのだな。どの聖剣とも比較にならない素晴らしい出来だ」
イエスは尊い表情でファルシオンを受け取る。
すると、見届け人となっていたユエルはヘルメットを脱ぎ、拍手をする。
それに続き見届け人となった全員が喝采となる壮大な拍手をした。
シャーディッヒは安堵した表情でイエスと抱き合う。
イエスもまた、落ち着いた表情を取り戻していた。
一分程して離れると、拍手も止まる。
そこでイエスはスザクの前に険しい表情で向かって行く。
「何か申し開きはあるか?」
「……ございません。如何なる処罰も受けます」
スザクはヘルメットを脱ぎ、その場で平伏する。
「待って貴方! 私が彼を巻き込んだようなものよ。それこそ私欲で。だから彼が咎められるなら、その責任は私にあるの。だから彼を許してあげて」
シャーディッヒは畏まるようにしてイエスとスザクの間に割って入る。
すると、イエスは浮かない顔でその場で深慮する。
「イエス様。今回の一件、事由に気付けなかった私達にも少なからず責任はあります。どうか、寛大な処置を」
バロックは、シャーディッヒに一助するため、そう提言する。
「……分かった。今回の事は不問にしよう。だがスザクよ、次に同じ過ちを繰り返せば、即刻、除名を宣告する。肝に銘じておけ」
「――はっ! かしこまりました」
イエスの凄みに圧倒され、その場で地に頭を付け快諾するスザク。
すると、シャーディッヒはアランバに「付き合ってくれてありがとう。さすがアランバね」と言ってウインクする。
アランバは親指を立て、「グウー」と意気揚々として答える。
その後、シャーディッヒは見届け人の内の一人だったユエルの元に駆け寄る。
「ありがとうユエル。貴方のレクチャーのお陰で窮地を脱したわ」
「とんでもございません。あの戦果はシャーディッヒ様ご自身のお力によるもの。私などほんの契機の糸に過ぎません。どうか胸をお貼りください」
シャーディッヒは、はしゃぎ気味でユエルにお礼の言葉を言うと、ユエルは紳士的な振る舞いで答えた。
バロック達も胸を撫で下ろし、安堵した表情だった。
そして、シャーディッヒは改めて感謝の気持ちを伝えるため、広場に居る全員に、笑顔で手を振る。
すぐに拍手が沸き起こる。
イエスもファルシオンを片手にシャーディッヒを慈しむように見つめていた。
そのまま、仲睦まじく、イエスとシャーディッヒは暖かく見守られながら、二人で剣の稽古をした。
見るからにいちゃ付き合っているかのように微笑ましいものだった。
こうして、一騎打ちの決闘はハッピーエンドで幕を閉じた。




