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電子書籍化決定 地獄劇  作者: ラツィオ
183/197

18章 散りゆく花 3話

 時は経ち、一カ月後。


 広場にて、シャーディッヒとスザクとの一騎打ちが行われようとしていた。


 両者ともコンディションは万全で、抜かりない様子。


 中央で睨み合うシャーディッヒとスザクを見届け見守るイエスと隊長二名と一般兵五名。


 今回は、ニイナとバロック、アランバも立会人となっていた。


 「まったく。レプリカの剣でチャンバラするなら容認できるが、真剣でやり合うなんて、万が一死んだら地獄行きだよ」


 ニイナは不安な面持ちで喋る。


 「そんな事はこの場に居る全員が百も承知だ。だがシャーディッヒ様の要望である以上無下に出来ない。それに今回はシャーディッヒ様には真剣でなければいけない並々ならぬ事情があると言う。致し方あるまい」


 バロックは浮かない表情で渋々口にする。


 「まあ、もしもの時のためにわし達が居る。スザクがシャーディッヒ様を手に掛ける前に止めるのだ。今回は前回と違って距離を詰めていると言うし、これで何とかするしかないだろう」


 前回の稽古の時と違って、今回の一騎打ちでは、シャーディッヒ達との距離が狭まり、万が一の事があれば、すぐさま駆けつけ、シャーディッヒを護衛する事が出来ると言う仕組みだった。


 アランバは遣る瀬ない面持ちで述べる。


 イエスも落ち着かない様子が目立っていた。


 そんな重苦しい空気の中、シャーディッヒは心を落ち着かせ、闘気を燃やしていた。


 手にはイエスのために作ったファルシオンが握られていた。


 どうやらシャーディッヒの武器は自身で製作したファルシオンのようだ。


 その様子をアランバは居た(たま)れない気持ちで見ていた。


 シャーディッヒの考えを理解しているからこそ、不安でしょうがないのだ。


 スザクは相も変わらず槍を手にしている。


 「両者、前へ!」


 審判役の一般兵が声を上げる。


 その様子を立会人の一人となっていたユエルは常にニヤついていた。


 ヘルメットを脱がせてやりたいと思う程、見るに堪えない獣のような微笑み。


 そして、前へ出たシャーディッヒとスザク。


 二人は独自の構えを取り睨み合う。


 「今回の勝敗は私の独断で、戦闘不能続行と見なした場合とします。決して怪我や深手を負う致命傷などの傷を与えるのは厳禁とします。では、試合……始め!」


 審判の声と共に先に仕掛けたのはスザクだった。


 スザクはシャーディッヒの腹部や腕など突き刺そうとしてきた。


 だが、シャーディッヒは臆する事無く、ファルシオンで(さば)いていく。


 シャーディッヒは少し勢いが弱まった所を見計らい、()かさずファルシオンで(じゅう)(おう)()(じん)に斬っていく。


 スザクは槍で防御し、持ち堪える。


 一振りの攻撃が弱まった所をスザクは槍で薙ぎ払いシャーディッヒを押し退ける。


 「――くっ」


 体制が崩れ足がよろついてしまうシャーディッヒ。


 その隙を逃さず、スザクは槍で事も有ろう事か、シャーディッヒの心臓目掛け、突き刺そうとしてきた。


 「なに!」


 イエスはそれを驚愕して見るとすぐに二人の間に割って飛び込もうとする。


 他の全員も同じくイエスに続く。


 しかし、シャーディッヒはよろついた足取りで、まるで柔軟な動きで身を横に捻らせクルリと回り、スザクの槍で突いてきた攻撃を(かわ)す。


 そして、シャーディッヒは横に回転しながらファルシオンでスザクの後ろに回り込む瞬間、後頭部を(みね)()ちする。


 カーン!


 スザクのヘルメットに金属の反響音が鳴り響くと、審判が「そこまで!」と語気を強め二人を制止させる。


 二人は互いに背中を向けた状態だった。


 シャーディッヒはその場で止まり、拳を強く握る。


 ……勝った、勝ったんだ。


 シャーディッヒは胸の内で喜びに打ち震えていた。


 しかし、スザクは制止しなかった。


 「うおおぉぉ!」


 怒号のような声で、後ろを向いていたシャーディッヒに目掛け槍で突き刺そうとしてきたスザク。


 そこで、ニイナが瞬時に距離を詰め、スザクの腕を鷲掴みにすると、一本背負いで地面に叩きつけた。


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