表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
電子書籍化決定 地獄劇  作者: ラツィオ
182/197

18章 散りゆく花 2話

 その日の内に、イエスの元にある信じられない一報がアランバから知らされる。


 「なんだと! シャーディッヒがスザクと再戦! しかも真剣での!」


 イエスは神座(かむくら)から立ち上がり驚愕する。 


 「はい。私も耳を疑いましたが、シャーディッヒ様は本気のようで、今は剣の稽古に専念されております。試合開始日は一カ月後に日時を合わせて欲しいと」


 アランバも説明しながら少し動揺していた。


 「……何という事だ」


 イエスは座ると塞ぎ込むような表情になる。


 「イエス様。心労をお察ししますが、私は……賛成です」


 「なんだと! 正気かアランバ⁉」


 アランバは真剣な面持ちで答えるが、イエスは酷く動揺していた。


 「諸事情や機密があるかはわかりませんが、イエス様にある事を伝えたいと仰っていました。そのためには、イエス様の前でスザクにリターンマッチをし勝利する事が絶対条件だ、と」


 「それならばレプリカの剣で済む話だ。わざわざ真剣を使用する事はない」


 アランバはシャーディッヒから事情を詳細に聞いていたが、出来るだけ隠し、真摯に説明するが、イエスは納得がいかなかった。


 「シャーディッヒ様はこうも仰っていました。大切な物を送りたい、と。恐らくその物の値千金になるには『真剣でなければ』と言う意味合いがあるかもしれません」


 「……ふぅー。 ……わかった」


 アランバのひたむきな説明に、重々しく頷いたイエス。


 こうして一カ月後、真剣による、シャーディッヒとスザクの一騎打ちが決定した。


 だが、事も有ろう事か、シャーディッヒの稽古の相手はユエルだった。


 シャーディッヒが直々に指名したらしい。


 広場でレプリカを使用して稽古に励むシャーディッヒ。


 ユエルも動きやすいようラフな格好をしていた。


 「はあ、はあ、強いわねユエルは」


 一度、剣を止めシャーディッヒとユエルは雑談をしていた。


 肩から息を切らしながらシャーディッヒはユエルを称賛する。


 「いえいえ、私もまだ剣の道は道半ばでして。不出来なものです」


 涼やかな表情で、まだ余裕がある感じのユエル。


 「(けん)(そん)しないでよ。フフッ」


 シャーディッヒはそんなユエルを微笑する。


 「それにしてもシャーディッヒ様も無茶をなさいますね。スザク様も幹部なだけあって剣の腕は確かです。そんな相手に真剣で挑むなど」


 ユエルは淡々と喋る。


 「良いのよ。私の贈呈する物は真剣で勝ってこそ価値があるんだから」


 笑みを浮かべ、後悔など微塵も感じられないシャーディッヒ。


 「流石ですね。イエス様の妃と言われる所以(ゆえん)も、その確固たる(きょう)()があればこそかもしれません」


 そんなシャーディッヒを尊敬して止まないような振る舞いをするユエル。


 さながら執事のようなお辞儀の仕方。


 「そんな事ないわ。私は……ただ」


 急に歯切れが悪くなったシャーディッヒに、ユエルは何故か見えない所で薄ら笑う。


 「もしや、例の事でまだ踏ん切りがついていないのですか?」


 「……ええ」


 ユエルはシャーディッヒの顔色を伺うように聞くと、シャーディッヒは暗い表情で頷く。


 そんな消沈しているようなシャーディッヒは、ユエルに取って絶好のカモだった。


 今なら何を言ってもシャーディッヒの心を意のままに操れるような優越感に思わず(ひた)りそうな気がしてくるような。


 「シャーディッヒ様。例え地獄に落ちても(かい)(こん)する事などありません。神であれ誰であれ、心は自由であるべきです。イエス様の心を解き放てるのはシャーディッヒ様だけ。そんな裁量権をお持ちの方の指向に誤りなどありません。どうかスザク様に挑む矜持同様、イエス様にもその羅津の針を向けて下さい。必ずや、イエス様は貴方にどんな形であれ報いてくれます」


  優美に喋るユエル。


 「心を解き放つ……私の気持ちに報いる……「


 シャーディッヒは俯きながら、ぼやくようにユエルの言葉を(ばっ)(すい)でもするかのような反応だった。


 ユエルはそんなシャーディッヒを見て不敵な笑みを浮かべる。


 このままではシャーディッヒは誤った選択をするかもしれない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ