18章 散りゆく花 1話
一階の聖堂の扉を少し開けるシャーディッヒ。
そこには、信仰授受をしていたイエスと民達が居た。
相変わらずイエスは跪く民達に片手を掲げ、敬愛の言葉を下賜する。
シャーディッヒは、その様子を目を凝らして観察していた。
すると、突如イエスの表情が曇っている事を視認したシャーディッヒ。
思わず口元を塞いでしまう。
疲れているのか? または嫌気が差してきているのか? と脳裏ではあらゆる雑然が起きる。
ゆっくりと扉を閉めるシャーディッヒ。
その場で蹲り、自問自答する。
今のは幻覚か? それとも真実か?
混乱していく脳裏を、必死で落ち着かせるシャーディッヒ。
シャーディッヒは深呼吸をし、その場を寂し気な足取りで去って行く。
聞くのが怖くて、何も聞けず、確かめる事が出来なかった。
次の日の午前から、シャーディッヒは鍛冶屋でファルシオン作りに精を出していた。
鍛造型なため、ハンマーで鉄を叩く際、汗が止まらず、格好も溶接服へと履き替えていた。
端正を込めた作業だったが、途中で鉄が割れてしまったり、完成したかと思いきや、ファルシオンの形が歪な時もあり、製作は困難を極めていた。
七日後、通路を憂鬱な気持ちで歩いていると、窓の外から小鳥が入り込んできた。
しかし、その小鳥はまだ雛鳥だった。
シャーディッヒは優しく包み込むように、そっと雛鳥を手で抱く。
雛鳥は可愛らしい鳴き声で翼をバタつかせていた。
どうやら飛ぶ意欲があるが、上手く飛べないようだ。
シャーディッヒは、雛鳥を窓の外に向け、手を掲げたままで雛鳥が飛ぶまで待っていた。
二分経っても飛ぶ気配が一向に無い。
しかし、ここでシャーディッヒは根気が大事なことに気付く。
それは、鍛造も同じだと言う事を。
そのヒントのような物を脳裏で掴んだ瞬間、雛鳥は今までにないくら元気よく鳴くと、翼をバタつかせ飛び立った。
すると、雛鳥が空で旋回し、なんとシャーディッヒに向けファイトと言う文字を描くように飛ぶ。
シャーディッヒは思わず感動し、雛鳥に向け目を大きく開く。
「ありがとう!」
シャーディッヒは感謝の気持ちを明一杯込め口にすると、雛鳥は去って行った。
気合を入れ直したシャーディッヒは急いで鍛冶屋に向かう。
そして、鍛冶屋で再び鍛造に打ち込むシャーディッヒ。
「何やらいつもと違い、勢いの中に精密な打ち付けをしますな」
アランバはシャーディッヒの熱意の中にある物を感じ取っていた。
「ええ。鍛造に必要なのは、思いやりと根気と情熱よ。さっきヒントを得たの」
シャーディッヒは頬に炭を付けながら、満面の笑みで答える。
更に三日間、鉄を打ち続けていくと、今までにない完成度のファルシオンが出来た。
すぐに冷却し、完成したと思われるファルシオンを審査するアランバ。
目を凝らし注意深く見ていく。
シャーディッヒは緊張した様子で固唾を飲み込む。
「……完璧ですぞ。これは天下一品物と言っても差し支えありません」
アランバは感服したかのような表情だった。
「――やったわー!」
シャーディッヒは嬉しすぎて、その場でピョンピョン跳ねながら無邪気な子供のようにはしゃいでいた。
見事な光沢と研ぎ澄まされた刃は、正に究極の剣と言っても過言ではなかった。
「アッハッハッ、これでは私の立つ瀬がないですな」
「そんな事ないわ。アランバが根気よく愛情を持って教えてくれたおかげよ。本当にありがとう」
愉快な気持ちで謙遜するアランバに、シャーディッヒは暖かい笑みで、誠心誠意を込めた言葉を口にする。
「身に余るお言葉ですな。それでどうなさいます? このままイエス様にお渡しするのですか?」
完成してから素朴な疑問を抱いていたアランバは首を傾げる。
「いえ、それじゃ味気ないじゃない。これを渡すときは私の雪辱を果たした時よ」
ファルシオンをアランバから手渡されたシャーディッヒは力強い眼差しになる。




