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電子書籍化決定 地獄劇  作者: ラツィオ
123/197

12章 危険な存在 8話

 ジェイルはこの流れで思い切ってあの事を聞いてみよう、と決意し、真剣な面持ちになる。


 「なあ、パーライン。三百年前、俺を憎んでいる訳を聞いたよな? そこまで駆り立てる理由は何なんだ?」


 その言葉を聞いたパーラインは暗い表情で俯き始める。


 ヨシュアも同じ表情になり顔を横に逸らす。


 「ジェイル。……実は」


 「待ってヨシュア! 私が話すわ」


 意を決した表情で喋りかけるヨシュアをパーラインが辛そうな面持ちで制止させる。


 ジェイルの表情にも雲行きが増し、周囲の空気は重く張り詰めていく。


 「私は貴方を恨んでいると言うより、貴方の父親を恨んでいるの」


 深刻な面持ちで語るパーライン。


 「どういう意味だ?」


 理解できず、硬い顔つきでジェイルはそう答える。


 「貴方のお父さんが、当時、家電製品の社長を務めていた事は知ってるわよね?」


 「あ、ああ」


 パーラインの問いに、察する事は出来なかったが、グランの職業を知っている事だけは確かだったジェイルは少し言葉を詰まらせるも、そう返事をする。


 「グラン・マキナが手掛けていた電子レンジに小型爆弾が仕掛けられていた。私の父がその爆発に巻き込まれ……亡くなったのよ」


 衝撃の真実に脳がパニックを起こしかけるジェイルは慌てだす。


 「ちょ、ちょっと待ってくれ! 弁解するつもりはないが、俺の親父はデスクワーク作業のはずだ。手掛けていたって事は、電化製品の製作に直接関与していたのか?」


 「そうよ。正確には現場監督、権社長よ。大企業では珍しいけど、グラン・マキナは従業員と寄り添って行きたい、と言う意向で中小企業の時から変わらないスタンスだったらしいわ。ネットの情報だとね」


 パーラインは今にも泣きそうな表情で語る。


 ジェイルは視線を斜め下にさげ過去の記憶を詮索するが、グランの仕事はデスクワークでの印象しかなかった。


 そもそも、当時六歳だったジェイルはグランから仕事の内容を詳細に聞いてはいないし、仮に聞いていても理解できない年でもあった。


 ジェイルは大企業の社長が現場監督をやる事など夢にも思わなかった。


 せいぜい、現場に行く時は視察ぐらいなものだ、と。


 全てはジェイルの思い込みだった。


 わざわざ語る必要も無ければ、知る必要もない、当然とも思える事象の断片が、この時初めて真実へと書き換えられた。


 それが事実なら、デスクワークでの仕事と違い責任は重い。小型爆弾を仕掛けられていた現場を直接指揮していたグランに対し、憤りを感じるのも無理はないだろう。


 興奮気味のパーラインの話は続く。


 「私が一番許せなかったのは、謝罪にも来ないで辞職すれば(しょく)(ざい)したつもりでいたあの()(そん)とも思える(はなは)だしい態度によ。当時幼かった私にだって、それくらい痛感する程感じたわ。そしてグラン・マキナが亡くなったのを知ってからは、息子である貴方に怒りの矛先を向ける事しか出来なかった。だって、そうでもしないと、気が狂いそうだった。恨むのを止めたら父が報われない気がしたから」


 心を締め付ける過去の話を涙目で語るパーライン。


 「ジェイル。彼女は肉親である、サンマイオさんを失ってからはその二年後には妻であるセネビルさんが病で亡くなったんだ。その後パーラインは児童養護施設に入所したんだ。そこで彼女は虐めに遭い、サンマイオさんとセネビルさんの存在がどれだけ尊いのか身に染みて知った。だからこそ彼女はサンマイオさんの無念を少しでも晴らすべくグランさんの息子である君を恨み続ける事しか出来なかったんだ。そしてパーラインが一九歳の時、住み込みで働いていた花屋で僕と出会い、今に至るんだ」


 これ以上、パーラインが喋る事が出来なさそう、と判断したヨシュアは真面目な面持ちで後の経緯を語る。


 「……そうだったのか」


 辛い表情を浮かばせ俯くジェイル。


 そして、グランにも非がある事を認めていたジェイルは、自分にも罪がある事を自覚し始めていた。


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