10章 明かされる真実と記憶 7話
そんな老いたオキディスを見て動揺するジェイル。
ジェイルは何とかオキディスも助けよう、とオキディスを抱き抱え、開いている門を通ろうと足を引きずるようにして近づく。
すると、門は勢いよくバタン、と音を立て閉じてしまった。
驚いたジェイルは思わず後ろに下がる。
すると、今度は閉じた門がゆっくりと音も無く開き始めた。
「オキディス。これは一体――」
どうなっているのか? と不安な表情で考えながらオキディスに聞いてみようと顔を向けるジェイル。
しかし、オキディスは答える気力も無くなっていて、ただ顔を横に振っていた。
それを見たジェイルはオキディスを連れて行く事が出来ないのではないか? と察した。
動揺しながらそう考えていく内に青白く光り輝く門が徐々にその輝きが薄れていく。
どうする! どうする! と焦りながら考えオキディスと青白い門を交互に見るジェイル。
そんな心境のジェイルの傍らにいるオキディスが門に向けゆっくりと指を差した。
ジェイルはその動きを焦りながらも目で追う。
「――行け」
最後の力を振り絞るようにオキディスがそう言うと、ジェイルは悲しみと自身の情けなさに打ち震えながら奥歯を噛みしめ決心する。
ジェイルは老体のオキディスの身体に衝撃を与えないようにゆっくりとその身体を虚無の地につけ寝かせる。
「すまない! オキディスさん!」
ジェイルは両手と額を虚無の地につけ深々と平伏した。
今までの非礼と感謝をめいいっぱい込めて。
オキディスは弱々しく頷くとジェイルは涙腺に涙を浮かべ顔を上げると青白い門に向け歩き出す。
青白い輝きは消えかける寸前だった。
ジェイルは衰弱した身体で引きずるように歩き出す。
力も上手く入らない不随しそうな身体。それでも懸命に必死に息を切らしながら門へと一歩一歩近づいて行けた。
そして、遂にその門を通るまであと一歩と言う所だった。
今までにないくらい意識が朦朧とし始め、弛緩していくジェイルの身体。
あと一歩なんだ、と心の中で他に雑念がない程ただそれだけを強く思い、最後は前に倒れ込むようにして門の中へと入ることが出来たジェイル。
◇◆◇
暗く、ただ暗く。深淵の深海に沈んでいくような感覚。しかし溺れている訳ではない。ただ、ただ、海水に沈んでいく仰向けのジェイルの身体。このまま途方もない境地にまで放浪してしまうのか?
しかし、そこで、ふと背中から身体全体を覆い隠すぐらいのブクブクとした気泡で勢いよく押され、深淵の深海から光り輝く太陽へ向け浮上していく気がするジェイル。まるで深く閉ざされた記憶をこじ開けてくれるような奇妙な感覚。
一体誰がジェイルを導いてくれているのか? 朧げで途切れそうな瞳で背中から受けている気泡の方を覗いてみると、薄っすらとした水色の体表を目にしたジェイル。
気泡が邪魔でしっかりと視認することが出来ず、暗い深海から光の先へと気泡で押し出された。
視界と意識はそこで完全に遮断されてしまった。
そして、ジェイルが辿り着いた場所とはジェイルが本来、既知していた記憶の断片の世界。
現世で額を撃たれ、地獄に落ちる前の物語。
いつの間にか木製の椅子に座りテーブルの上に手を付け、もたれかかっていた事に気が付いたジェイル。
その時にジェイルがいた場所は小さな丸太小屋の中だった。
二人で住むのがやっとと言える感じのスペース。
森林の中にいるのではないか、と思う程、丸太小屋の中は自然の匂いで充満していた。
「大丈夫かね?」
そこで知らない男の声に呼ばれている事に気付いたジェイルはゆっくりと目を開け上体を起こす。
「ここは‥‥‥」
誰に語り掛けた訳でもない言葉を口にしながら知らない声の主に目線を向けてみるジェイル。
「やあ、初めまして。私はナヌア・フィールドだ」
その男は白髪の髪を三つ編みにし、肩から垂らし、おっとりとした目で紳士的に話しかけてきた。
「‥‥‥ああ、俺は」
見知らぬ相手とは言え、自己紹介をされたので、ジェイルは咄嗟に名乗ろうとしたが。
「君は名乗らなくていいよジェイル君。私は君の事なら何でも知っている。今までの君の経緯は話さなくても結構だ」
ナヌアは目を細め、笑みを浮かばせながら淡々(たんたん)と言った。




