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伊藤博文暗殺の謎  作者: やまのしか
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後藤新平②・・・三五公司(さんごこうし)

三五公司は、表面上は日本と中国の合弁会社の形態をとるが、国家的色彩の強い機関であった。

その首脳者として愛久澤直哉が選ばれた。

愛久澤 直哉(あくざわ なおや、1866年-1940年8月17日)は明治後期から昭和10年代にかけての実業家。

日本統治時代の台湾において農場経営ならびにマレー半島においてゴム園を経営していた三五公司の設立者であり経営者である。

東京帝国大学(政治科)卒業後、三菱合資会社庶務部に入社、

1899年11月、33才で依願退職し、同12月より、台湾総督府商工旧慣取調嘱託、参事官室勤務となっている。


三五公司の事業は、まず福建省で産出される樟脳の専売事業である。


樟脳とは天然由来の防虫効果を持った粉末状のもののことで、(クスノキ)という樹木を原料にして水蒸気蒸留法によって製造される。


今のように衣類向けの防虫製品が豊富になかった時代、一般家庭では防虫剤として樟脳を使いながらタンスや押し入れの中の衣類を虫食いから守っていた。


当時台湾の特産品であり、総督府の財政に大きな役割を果たしていた樟脳は、イギリス、ドイツの商人の利権と化していた。


一方台湾財政は政府補助でまかなわれており、本国財政の重い負担となっていた。

財政自立を実現するため、後藤が、その切り札としたのが「阿片」「塩」「樟脳」の三大専売制度の導入であった。

まずは収益の規模から最も期待がかけられたのが樟脳であった。


世界の需要量の8~9割をまかなう台湾樟脳の商権はイギリスやドイツなどの外商に握られていた。


樟脳は投機による価格の変動が激しく、台湾では製脳方法が未熟なため、樟樹の乱伐も著しかった。

これらを改善し、樟脳からの収益を台湾財政に組み入れるには、樟脳を専売制にする必要があった。


しかし、既得権益の喪失を恐れた樟脳業者らが猛烈に反発したため、後藤は苦境に立たされていた。


これに対し、同業者に過当競争の非理を説いて回り、業者の立場から樟脳専売を推進したのが「鈴木商店」の大番頭「金子直吉」であった。


金子は台湾に赴任したばかりの後藤に面会し「製脳事業直営は結構です。わしは長官の意見に賛成です」と言明し、その後、専売当局の祝辰巳と協力して反対陣営を切り崩した。


そして1899年6月「台湾樟脳及び樟脳油専売規則」の発令に至るのである。


金子は、競争相手が多い樟脳よりも、樟脳油の一手販売権を握ったほうが得策と計算した。

その狙い通り、専売制施行後には、樟脳油を重要産物化した功績が評価され、鈴木商店が樟脳油の65%の販売権を獲得するという破格の成果を得た。


ちなみに残り35%の販売権はライバルの糖商増田・安部らが共同設立した台湾貿易会社が獲得、また樟脳の一手販売権はイギリスのサミユル商会が獲得した。


1901年、上海在住の林朝棟が清国の福建省当局から樟脳専売権を獲得しようとした。


しかし資金を集めることに困難を来たした林は総督府に資金援助を求めた。

当時の台湾総督児玉源太郎は、これを「天与の恵み」と考えた。


福建省の樟脳独占専売による利益が得られるのみならず、

台湾の樟脳原木資源の温存ができ、樟木生産地である「蛮地」との緊張を緩和することができるからである。


台湾総督府は、林を排して愛久澤直哉を樟脳専売の実行者として任命した。


愛久澤は一豪商を装い、廈門にて三五公司の責任者として総督の事業を代行することになった。


愛久澤は、まず林に対して設備の弁償金として2万円を支払い、林を福建省樟脳専売事業より切り離し、新設された「官脳局」の技師となった。


「官脳局」すなわち実質的には「三五公司」であるが、その樟脳の移出・輸出量は1907年には、約2700斤に上り、1901年の設立時のそれの17倍となった。



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