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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第四章 武器と防具と錬金術
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第九十九話 鋭い冒険者

 いよいよ武器防具屋のオープンの日が来た。

 今朝はみんな少し早めに朝食をとり、七時半からウチで最終打合せをすることになっている。


 アイリスはフランとホルンが来てからは自分たちの家で三人でご飯を食べるようになった。

 だからウチはまた以前の四人での朝食に戻っている。

 今日は月曜だからアイリスたち三人は町の家からの出勤だけどな。


「ん? この出汁巻きいつもと味が違うな。これはこれで美味しい」


「わかる? ハナちゃんに教えてもらったの!」


「ハナにか。本当はもっと違う料理を作りたいのかもな」


「ん~、そうかもしれないけど楽しそうだからいいんじゃない?」


「そうだな」


 みんなよくやってくれてると思う。

 アンが心配だったのは最初だけで、仕事中は兄であるメロさんも驚くほどの真面目っぷりだ。

 そのおかげか食堂は四人で回せている。

 そのためミーノとあと一人誰かで裏方作業と朝カフェメニューの準備をすることができ、昼カフェの時間に焦らなくてもよくなった。

 ラーメン屋はモモが営業も仕込みも一人でこなしてくれてるしな。


 だから交代で毎日一人休みにする提案をしたんだ。

 もちろん給料は六日分と変わらずでな。

 でも全員がそれを断った。


 一番の理由はこれ以上待遇が良くなると周囲の目がこわいということらしい。

 決して断りづらい雰囲気の職場とかじゃないからな!

 そもそも俺は十五歳以下の子供をこんなに働かせてる時点で周囲にどう思われてるか不安で仕方ないというのに。


 昨日だって親たちに怒られることも覚悟してたのに、なぜかみんなお礼ばかり。

 確かに子供が働いて家にお金をいくらか入れてくれたら親としてはありがたいだろうけどさ。

 さすがに家庭の事情まで俺が口出しすることではないからなにも聞かないしなにも言わない。

 本人たちが望んでここへ来てくれて楽しそうにやってくれてるならそれが一番だよな。


「チュリリ! (誰か来ましたよ!)」


「わふっ(あれはティアリスたちだね)」


「なんだと?」


「どうしたの? なんて?」


「アイリスさんたちが来たのです!? 早く食べなきゃなのです!」


「……違うようですね」


 あのパーティはいつも早いがまだ七時半にもなっていない……。

 もしかして……


「ティアリスさんたちが来たらしい」


「「「えっ!?」」」


 俺は急いでご飯を食べ、管理人室へ向かう。

 すぐにティアリスさんパーティ四人がやってきた。


「……おはようございます」


「「「「おはようございます!」」」」


「……今日はまたお早いですね」


「ロイスさん! 今日なにかありますか!?」


「なにか新しいことありそうだったから早めに来たの。こないだの鍛冶工房は八時オープンだったしね」


「「管理人さん! 教えて!?」」


 なにかだと?

 ということはなにかがなにかを知らないのか?

 カマをかけてきてるのか?


「鍛冶工房のときのようにそのなにかがどこかで噂にでもなってたんですか?」


「そういうわけじゃないけど、昨日町の様子がすこしおかしかったからね」


「ん? 町がですか?」


「えぇ、武器屋も防具屋も鍛冶屋も午前中で営業は終了したみたいで午後に行ってもどこも開いてなかったしね。普通日曜はここのダンジョンの冒険者たちが一番店に来る日でしょ? そんな日に営業しないなんてよっぽどのことよ。町の行事かなにかとも思ったけど他の店は通常営業してたからね。念のため道具屋と肉屋と八百屋も行ってみたら閉まってるじゃない。となるとここのダンジョンになにか関係してると思うでしょ? 武器屋と防具屋も鍛冶屋の関係で繋がりあるだろうしさ」


「……」


 くっ、鋭いな。

 さすがティアリスさんといったところか。

 それにしても昨日はどこの店も店番すら残さずに店を閉めて家族や従業員全員で来てたってことか?

 確かに見たことない顔が多かった気がしたがまさか店を休んでまで来てるとは思わなかった。


 なんの告知も看板すらなくいきなり八時からオープンして驚かせようと思ってたが、まぁ今回はなんの店かまではわかってないから良しとするか。

 といっても入り口は既に後ろにあるんだけどな。

 俺へ問いただすことを優先してそれに気付かないとはらしくないな。


「鍛冶工房の横をみてください」


「え? ……あっ! いつのまにか入り口が増えてる!?」


「ダンジョンストアって書いてますよ!?」


「「ダンジョンストア!?」」


「ストアってことは飲食店じゃなくてなにか物を販売するお店ってこと!?」


 名前はダンジョンストアに決定した。

 いずれ武器や防具以外の店が横に増えることになってもいいように汎用的な名前にしたんだ。


「そうです。販売する商品がどんなものか聞きたいですか? それとも三十分後のお楽しみにしますか?」


「「「「聞きたい!」」」」


「……」


 普通お楽しみにするもんじゃないんですかね?


「はぁ、そうですか。なら言いますけど、武器と防具です」


「「「「武器と防具!?」」」」


 店の中に入ってから驚いてほしかったな。


「ということはアイリスさんの作った武器ってこと!?」


「えぇまぁ。他にも鍛冶師はいますけど」


「エルルちゃんですか!? あの子も作れるんですか!?」


「作れますよ。彼女は武器より鎧のほうが得意ですが」


「「鎧もあるの!?」」


「そりゃあ防具も扱ってますからね」


「でも鍛冶師が作るもの限定ってことよね? 魔道士用の装備はさすがにないよね……」


「そうですね、ティアリスさんとジョアンさんには申し訳ないですが杖や弓はないんです。すみません。でも防具なら鎧以外にも服やローブ、その他たくさんありますよ?」


「え!? ローブもあるの!? 杖は仕方ないよ……」


「僕が着てるような服もあるんですか!? 弓は仕方ないです……」


「ありますよ。品数的にはそっちのほうが多いくらいです。女性専用コーナーもありますからティアリスさんはぜひ一度覗いてみてください。ただし、武器も鎧もそんなにお安くはありませんけどね。そこは期待しないでください」


「なぁこの皮の鎧よりもいい装備あるかな?」


「鎧がいいんだけどあまり重いのはちょっと……山登るの疲れるし」


「どうでしょうね~。鎧は重いものですから我慢するしかないんじゃないですか? 金属ともなると値も張りますしね~」


「ふ~ん。二人とも期待してていいわよ。ロイス君のこの言い方はなにか考えがあるときだわ。でも勝手に買ったらダメだからね? まず私に相談しなさいよ?」


 いつ見てもティアリスさんのほうがお姉さんに見えるな。


「ロイスさん、八時オープンなんですよね? 先に小屋開けてもらうことできませんか? 朝食も食べれたらありがたいんですが」


「八時の予定ですけど、今から最終の打合せをするのでもしかしたら遅れることもあるかもしれないです。小屋は開けましょう。朝食の魔道具も使えるようにしますので少しお待ちを。ダンジョンストアの中は飲食禁止ですのでご協力くださいね」


 まず水晶玉で朝カフェ販売魔道具を準備する。

 そして小屋まで行き、小屋の鍵を開けた。

 その間にカトレアが四人の受付をやってくれたらしい。

 三人は小屋の中へ入るとまず朝カフェ販売魔道具に向かったようだ。


 そういえばもう七時半を過ぎてるのにアイリスたちはまだ来ないのか?


「ねぇ、高いって言っても本当は安いんでしょ?」


 ティアリスさんは小屋に入らず俺を待っていたようだ。


「いえ、安くしたいのは山々なんですが安くできない事情がありまして」


「町の武器屋と防具屋の関係で?」


「それもないとは言えませんがそれとはあまり関係ないですね」


「……なるほどね、素材の問題? それとも魔法付与がしてあるとかかな?」


「まぁもうすぐわかることですし、それにティアリスさんに隠し事は無理そうだから言いますけど、どうも素材が少し特殊みたいで。俺はあまり詳しくないんですけどウチの裁縫職人がうるさいもんですから。残念ながら魔法付与はしてませんよ」


「裁縫職人もいるんだ! 素材が特殊ってことはダンジョンの素材なんだよね? ダークラビットの毛皮とか? 魔法付与は難しいって聞くからいくらカトレアさんでも無理だよ」


「……きっと気に入ってもらえるローブもあると思いますよ。でもそれはお高いでしょうけどね」


「どうせなら可愛いのがいいな! でも剣とかはあって正直少し羨ましいよ。私もユウナちゃんの杖みたいに攻撃魔法が出せるやつ欲しいのに」


 ティアリスさんも小屋の中に入っていった。


「……やっと来たか」


 遠くに馬車が見えた。

 凄いスピードで近付いてきて家の前でとまった。

 馬車からはアイリス、エルル、ホルン、フラン、フランママの五人……だけじゃなくて十二人が降りてきた。


「……どういうこと?」


「おはようロイス君! 私たちもオープンの様子が見たくてね!」


「そうだぜ! 休憩スペースで朝食食べながら見させてもらうな!」


「この時間だとここに向かって歩いてる人がいっぱいいるんですね!」


 そこにはダンジョンストアの従業員だけじゃなく飲食店の従業員たちもいた。


「……邪魔するなよ? じゃあ五人は打合せするから会議スペースに移動して。それともう小屋の中にお客さんいるからな」


 いよいよダンジョンストアのオープンだ。


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