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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第四章 武器と防具と錬金術
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第九十四話 問題勃発

「えっ? なくなった? どれが?」


「全部なのです! サンドイッチもホットドッグもおにぎりもなのです!」


「嘘だろ? ララは?」


「フランさんとホルンさんと三人でおにぎりの準備をしてるのです!」


「そうか……ならユウナも手伝いに行ってくれ。ウサギに声かけてホットドッグやサンドイッチもできそうなら頼む。十五分延長するから。並んでる冒険者への説明も頼んだ」


「わかったなのです!」


 ユウナは小屋の中へ走って入っていった。


 朝カフェが始まって三日目の木曜日、八時四十五分。

 各80食、計240食分を用意してたのだがそれが売り切れになったらしい。


 朝カフェの営業時間は九時までだが、その効果があってか冒険者たちがダンジョンへ来る時間は前より早くなっていた。

 全体数が増えたわけではないのでおそらく今日も百六十人前後になると思うが、この時間にまだ来てない人もいるし、一人で複数個購入してる人が多いのであろう。

 さすがに一つじゃ足りないか、育ち盛りだしな。

 でもドリンクも二つ飲むことになるけど……。


 昨日も同じ数を準備していたけど全部余ってたのにな。

 明日からは余裕を持って360食分準備するか。

 売れなくても状態保存はまたかけ直せばいいしな。


 ……いや、待てよ。

 もしかすると状態保存がかかってるのをわかってて複数個購入してるのか?

 明日の朝食べるつもりか?

 それとも携帯食としてダンジョンの中で食べるのか?

 宿へ戻った後の夜食にするのかもしれない。

 昼も地上へ戻らないために買ってるのかもしれないな。


 ……まぁいいか。

 食堂やラーメン屋を利用する頻度が減ったとしても朝カフェの商品を買ってくれてるんだからなにも問題はない。

 そのために早く来てくれるようになったのは事実だしな。

 それに三種類しかないんだからそのうち飽きてどれか一つしか買わないようになるだろう。


「……みなさん単純に食べる量が多いんだと思いますよ」


「え? あれじゃ少ないか? 朝はあれくらいでもちょうどいいんじゃないか? だってあと二~三時間もすれば昼だぞ?」


「……ここに八時半に来ようと思ったら町を七時半には出ます。ということは起きる時間はもっと早いです。女性の方は男性よりももっと早いかもしれません。それにここまで一時間も歩いてくるんです」


 七時に起きてお腹が空いてたとしてもウチに来るまでの一時間半は我慢しなければならない。

 もちろん我慢する必要はないんだが、ウチの商品の味や価格を魅力的だと思ってくれてるんなら我慢するに決まってる。

 ここへ着くころにはお腹ペコペコで一つじゃとても足りない。

 しかも九時までしか販売してないとなるともし明日ギリギリになって販売終了してたら朝食抜きになる。

 ということは万が一の場合に備えて明日の分も買っておこう。

 幸いにも状態保存はかかってるしな。

 って感じか?


 このパターンだと三セット以上買ってることになるが……。

 さすがにドリンク三つは持てないよな。


「単品でも販売したほうがいいのかな?」


「……それが一番でしょうけど、セット販売の内容も変更しないといけませんね」


「そうなんだよなー。単品でドリンクも軽食も10Gだと同じだもんな。25Gでドリンク一つと軽食二つ選べることにするか? でも5Gって半端なのがあまり好きじゃないんだよなー」


「……では30Gでドリンク一つと軽食三つならどうですか?」


「三つは多くないか? そんなに食べれる? ……でも余っても無理に食べる必要はないのか」


「……私は食べれませんが冒険者の方たちはエネルギー使うでしょうし、ペロっと食べてしまうと思いますよ? それに組み合わせの幅が広がっていいじゃないですか」


「食べれちゃうのか。そうか、ならそのセットで30Gでいこう。販売魔道具の変更はすぐできる? 単品も追加ね」


「……はいそのくらいでしたら今すぐにでも……と言いたいところですが今日は在庫がないですし明日にしましょう。500食は準備したほうがいいと思いますよ?」


「500食!? いやいや、さすがにそれは多すぎでしょ。今日の倍だぞ?」


「……明日は今日よりもっと増えると思いますよ? 売り切れになったと知ればみなさんの購買意欲が高まりますしね」


 俺だったらどうするだろう?

 お腹が減ってるとしたら一つじゃ足りない。

 二つ食べたいがドリンクも飲みたいし、全部単品で買うのとセットが同じ価格なら一つおまけでついてくるセットを買ったほうがお得だ。

 それに食べきれなくても状態保存がかかってる。

 うん、セット一択だ。

 ……でもそれなら20Gでドリンク一つと軽食二つのセットにして単品で一つ追加しても同じだよな。


「やっぱり20Gでドリンク一つと軽食二つにする」


「……確かにそのほうがいいと思います」


 仮に全員がセットを頼むと320食前後……。

 やはり一食当たりの量が少ないのか?

 でも10Gにしてはそれなりの量だし、町と比べたらむしろ安いよな?


「500食はいかなくても400食は必要かもしれない」


「……どちらにしてもまた別の問題が出てきますね」


 そうだ、新たな問題勃発だ。

 500食も作れないんだ。

 人員の関係でな。

 今みたいに食堂の従業員以外を使うようなことはしたくない。

 これはあくまで奥の手なんだ。


 となると結局こうするしかないか。


「増やすしかないよな」


「……ですね」


 昼カフェはおまけのつもりだったんだが、これが意外にも好評で思ったよりも忙しいのだ。

 そのため朝カフェ用の軽食作りにさける時間が予定よりも少なくなり、ミーノが手伝ってなんとか240食分作れてる状態だ。

 忙しくなくても500食は厳しい数なのに。

 ラーメン屋ができて食堂のお客が少し減ったとはいえ、食堂の営業時間中に作るのは無理に近い。


 となると後は人を増やすか、ウサギの作業を増やすか、魔道具を増やすかになる。


 下準備以外の作業ではウサギにホットドッグのウインナーを焼いてパンに挟むところまでは既に任せてある。

 サンドイッチとおにぎりは無理だった。

 初めに魔道具でおにぎりを作ることも考えたんだが手作り感がどうしても出せそうになかったのでやめたんだ。


 結局は人を増やすしかないか。

 いくら人手が足りないとはいえこの一月ちょいの間にもう四人も増えてる。

 ララに怒られないかな?

 どこかで器用そうな魔物を探してくるべきかな。


 どうしようか。

 ……160セット売れたら3200Gか。

 材料費はおにぎりの具材や海苔をメロさんに安く仕入れてきてもらってるくらいであとはほとんど自家製だ。

 パンはカトレアの得意分野だからサンドイッチ用とホットドッグ用の誰でも使えるパン作り魔道具をすぐに作ってくれたし。

 米はあるしな。

 なにより自家製の素材のほうが美味しいからわざわざ仕入れてまで使う気にならない。


 ただ自家製の問題点があるとしたら魔力か。

 育てるのに魔力を消費してるからな。

 でも今の問題は魔力とは別に関係ないよな?

 人を雇うのに必要なのはお金だもんな。

 売り上げの観点から見るともう一人雇うくらいはなんの問題もないよな?


 それにこのままだとお金は貯まる一方で今の俺には使い道が見当たらない。

 幸いにもまだ悪い噂は立ってないようだからもう少しくらい町から人手を募っても大丈夫だろう。

 来年四月にはもっと冒険者が集まってくることになるだろうからどうせ増やすことになるしな。

 少し多めでもいいか。


「四人増やそう」


「……四人もですか?」


「あぁ、朝カフェに二人、鍛冶師一人、木工職人一人だ」


「……なるほど、当てはあるんですか?」


「ない」


「え……」


 あったらとっくに雇ってる。

 特に鍛冶師と木工職人なんてのはそうは見つからない。


 こうやってカトレアと話しながらも受付を続けていたが、列がいったん途切れたので時間を見ると九時過ぎだった。

 来場客は既に百三十人を超えている。

 やはり朝カフェ目当てに早く来た人が多いのであろう。

 三十分くらい早くなっただけかもしれないが、これだけの人数が三十分長くダンジョンにいると考えると魔力換算でもけっこうな量になるはずなので十分に利益が出るはずだ。


 明日からは今日までと同じ価格で一つ軽食が増えるとなればさらに利用客は増えるはず。

 お金も魔力も利益が見込め、冒険者たちも喜ぶのであれば方向性は間違ってない。


「お金で魔力買えないかな?」


「……一つ思い当たりますが」


「えっ!? なに!?」


「……魔石です。冒険者たちから魔石を買い取ったらどうでしょう?」


「……さすがにそれは厳しいな」


「……ですね」


 そこまでの財力はない。

 間接的にとなると結局ダンジョンに人が来る方法を考えるのが一番手っ取り早いという結論になってしまう。

 はぁ~、楽して魔力稼げないかな。


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