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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第四章 武器と防具と錬金術
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第八十九話 品質チェック

「これで全部だよ!」


 床一面に服、ローブ、帽子、手袋、靴が並べられていた。

 服を広げて置いているからか、想像してた以上に多く見える。

 ……メタリンは重かっただろうな。


「よし、じゃあまずは自由に見てくれ。順番に話しかけていくから気にせず見ててくれていい。もし欲しい物があったらきちんとフランが設定した定価で買うこと。これから作る商品は従業員割引も考えるけど、ここの商品はまだ町の防具屋の商品だからな」


「「「「「「「はーい!」」」」」」」


 みんなは目当ての服に向かっていっせいに散らばって行った。

 メロさんやヤックまで行っちゃったじゃないか。

 俺も見てみるとするか。


 冒険者向けだけあって男性物が多いかと思っていたがそうでもないようだな。

 男性女性どちらでも着れるように作っているのかもしれない。

 でも明らかに女性しか着ないと思われるような服もあるな。

 スカートはさすがに男性は履かないだろう。

 ……履かないよな?

 いや、別に履きたかったら履いてもいいんだけどね。

 偏見はよくない、うん。


 そういや町の防具屋には男性向けとか女性向けとかでわけてるようなコーナーはなかったな。

 職業、性別、年齢によっても売れ筋が変わってくるんだろうし、限られたスペースでどの商品を置くかは確かに難しいところだ。

 その点ウチに来る冒険者は十五歳~二十歳くらいだからターゲットを絞りやすい。

 店もこれだけ広いからある程度冒険した装備品も置くことができる。


 しかしあれだな、ざっと見た感じだが昨日のフランの発言とは少し違った商品も多いな。

 ダークラビットのローブを二つ買ったときの話だが、俺が違う色もないかと聞くとフランは売れ筋だから黒しかないと答えたはずだ。

 俺はユウナには白のローブを買いたかったんだが、そう言われたから仕方なく黒を買うことにしたんだ。


 それがどうだ、今ここに並べられている服は色のバリエーションが結構豊富に見える。

 まず売れ筋の色を作ってから同じ商品の他の色に手を出すのならわかるが、ここの商品はそうでもないように思えるし。

 俺はレジカウンター付近でみんなから離れて心配そうに見ているフランの元へ行く。


「フラン、少しいいか?」


「うん、なに? ……どうかな?」


「すまん、まだあまり見れてないんだ。その前に色について聞きたいんだが、昨日俺が買ったローブは黒しか作ってないって言ってたよな? 売れ筋だからとか言ってたけど、ならなんで他の服はこんなにカラフルな物が多いんだ?」


「あのローブは店に置く商品だからだね。1000Gもしたでしょ? ダークラビットの毛皮まで使って売れなかったんじゃ店は潰れちゃうよ。だから黒なの。ここにあるのは比較的安い素材で半分趣味で作ってたものだからかな。加工業者で使わなくなった素材をもらって作ってるのもあるし。だから防具というより服屋の服と思われても仕方ないね。でも戦闘の激しい動きに耐えられるようにしっかり計算して作ってるんだよ? 安い素材でも何枚か重ねて作ったりしてるしさ! 色は私のそのときの気分で使う色を決めてるから正直適当だけど」


 なるほど。

 聞きたかったことはほとんど聞けたな。

 安い素材やいらない素材を上手く活用して防具にできるなんて職人として腕がいい証拠なんじゃないか?

 仮にも防具になるんだからいくら素材が悪くても耐久性や可動域はしっかりしてないといけないだろうしな。

 ということは裁縫職人としての基本はしっかり身についてるんだろう。


 偉そうに言ってる俺だが服や防具のことはなに一つ知らん。

 冒険者でもないから防具は装備したことないし、今来てるこの服についても特になにも思ったことはない。


 そんな俺が防具に求めることは丈夫さと動きやすさとデザインだ。

 デザインとは防具の形状や色、つまり自分の目で見たときに単純に着たいかどうかだ。

 町の防具屋では残念ながらそう思うようなものは一つもなかった。

 だがここには何点か着てもいいなと思うものがある。

 俺の中ではデザインを重要視しているんだろう。

 だって俺は戦闘はしないし、散歩以外に運動もしないからな。

 俺にはいくら動きやすくても分厚すぎるのは邪魔だな。


 うん、なにが言いたいかというと俺には防具を語る資格はないし見る目もないということだ。

 俺は無言でフランの元を離れ、ララのところに行く。


「ララ、気に入ったのはあったか?」


「うん! いっぱい! 三つだと悩んじゃうよ。商品になるんだからあまり数が減ってもいけないしね」


「そうか。で、品質はどう思う?」


「品質? 丈夫なんじゃない? 素材のことはよくわからないけどさ。動きやすそうだし、色もいっぱいあるし。このスカート見てよ。中は短パンみたいになってるの! なんかおしゃれじゃない? あの靴……ブーツ? っていうのかな、あれもいいな~。三つだと厳しいなぁ~」


「……そうだな。四つにしていいぞ」


「ホント!? やった~お兄大好き!」


 ララは目をつけていたであろう服の元へ走っていった。


 ララは動きやすさとデザインを重視してるみたいだ。

 俺とあまり大差なさそうだ。

 でもそんなものなのかもしれない。

 俺は再度フランの元へ行く。


「フラン、耐久力の高い装備はどうやって作れるんだ?」


「え……それはもちろん素材ありきの話になるよ?」


「それならいい素材さえあればフランもいい防具が作れるのか? 技術的な部分で他の裁縫職人に引けをとらないか?」


「……作るよ。私も負けてないもん!」


「そうか。わかった。なら防具は全部フランに任せる。素材はダンジョンのものを自由に使っていいから。とりあえずここにある服の予備は作らなくてもいい。ダンジョン産の素材で新しく防具を作ることを考えてくれ。でも冒険者たちのリサーチはしてくれよ。需要のない装備品を数多く作っても意味ないしな。そのうえで色やデザインはある程度冒険してほしい。定番や売れ筋にこだわらなくてもいいから。まずは服を作るのに必要な素材を洗い出してくれ。魔物一覧は渡すがここの冒険者は初級者ということも考えてくれよ」


「……うん! 私頑張るからね!」


 大事なのは意欲だ。

 と思うことにした。


 だって武器も防具もわからないんだもん。

 専門家に任せよう。


「私たちに内緒でこんな楽しそうなことしてズルいじゃないですか」


「そうなのです! まだやってて良かったのです!」


「「!?」」


 えっ?

 カトレアとユウナがバックヤードから入ってきた。

 大丈夫なのか?

 みんなは服に集中していて俺とフラン以外は気付いていないようだ。


「……ドラシーさんがくれた薬を飲んだら体調がよくなりました」


「そうなのです! あの薬凄いのです!」


「……そうか、その……すまなかったな。無理させて」


「……いえ、気にしないでください……といっても気にするでしょうから、何枚か服を買ってもらってもいいですか?」


「そうなのです! 私も靴が欲しいのです!」


 二人は俺の考えを見透かしていたかのように、俺が少しでも気にしないですむような提案をしてきた。


「あぁ、好きなものを選んでくれ。三つまでな」


「……ふふ、ローブの下に着る服が欲しかったんです」


「三つもいいのです!? やったーなのです!」


 二人も服が並べられている場所へ向かっていった。

 ララもみんなもビックリしていたが、ドラシーの薬と聞くと納得したようで、また服を見はじめた。


「いい人たちだね」


「あぁ、そうだろ」


「私も仲良くなれるかな。その……防具以外のことも話せるようになりたいな」


「それはあまり気にしなくてもいいんじゃないか? 話したいときに話したいことだけ話すだけでもさ。ここにはみんな目的があって来てて、その目的もみんなそれぞれだからそもそも共通の話題なんて少ない。カトレアだってあまり話すタイプじゃないけど楽しそうにやってるぞ。だからフランも自分のやりたいことだけやってればそれが一番楽しいことなんだよ」


「……うん。食堂とかカフェとか楽しみなこといっぱい」


「おいおい、ラーメン屋も忘れるなよ? ララが作った豚骨ラーメンは町のよりも格段に美味いんだからな! それにみんなは服……防具に夢中なんだからな。ほら?」


「フランちゃん! この服はいくらなの!?」


「フラン! 少しはサービスしろよな! それよりオーナー! 俺たちにも買ってくれよ! ララ店長たちばっかりズルいぜ!」


 みんながフランに話しかけてくる。

 まぁこれは防具の話題だが、他の話題でもそのうち自然に話せるようになるだろう。

 例え話せなくてもなにも問題はないはずだ。

 防具を作ってるときが一番楽しいだろうからな。


「わかった。じゃあみんな二つまでな! 仕事もあるからカトレアとユウナ以外はあと十分で終了だぞ!」


「「「「「「やったー!」」」」」」


 ……今月の小遣いだけじゃ足りないかも。


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