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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第四章 武器と防具と錬金術
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第八十六話 武器屋防具屋設計中

「ロイス君! いいところに来た!」


「ロイスさん、聞いてください。新しい店のレイアウト考えてみたんです」


「あ、ロイス、体調はどう? 熱下がった?」


 牛の魔物であるウェルダンが仲間になった後、今日もフランさんとホルンさんが来てることを知らされた。

 昨日はミーノたちといっしょにメタリン馬車で帰り、今日もまたいっしょに来たようだ。

 三人は鍛冶工房の休憩部屋でソファに座りなにか話し合っている。


「どうしたんですか今日も来て」


「だって色々決めないといけないでしょ?」


「そうです。善は急げと言います」


「ん、本当にいいの?」


「まぁ人手は足りてないですしね。それに二人とも専門ですし」


「ん、ならいいけど。二人ともしっかりしてるから大丈夫」


 俺が二人と出会ったのはまだ昨日のことだ。

 だから二人のことはなにも知らないに等しい。

 アイリスさんのことは昔から知っていたからそれとはまた話が別だ。

 昨日の流れでなんでこの二人は住み込みで働くって話になったんだっけ?


「店のオープン日はまだまだ先の予定でしたけど」


「私の商品はいっぱいあるよ?」


「武器は足りませんね。アイリスちゃんに頑張ってもらわないと」


「ん、さすがにまだキツイ。一日三本が限界」


 フランさんは鎧は作れないしな。

 鎧作りが得意で武器も作れる鍛冶師がもう一人いたほうがいいのかもしれないな。

 ……引き抜くか。


「アイリスさん、誰かここで働いてくれそうな鍛冶師さんはいませんかね?」


「ん、いなくもないけど。お爺ちゃんとお父さんが許してくれないかも」


「ですよねー。そんな簡単には見つからないかぁ。てわけでホルンさん、なにかいい案あったら教えてくださいね」


「わかりました。私も武器屋の店長として恥ずかしくないような品揃えにしたいですから。それとオーナーなんですから私たちには敬語なんて使わないでください。他の従業員の方に示しがつきません」


「そうだよ! 一日経ったらもう忘れてるでしょ!?」


「ん、私も呼び捨てでいいよ」


 話し方を普通にするだけならいいけど、カトレアとは違ってアイリスさんを呼び捨てにするのはちょっと抵抗があるんだよな。

 年上だから気を遣いたいってのもあるし、昔からずっとさん付けで呼んでるからなぁ。


「ロイスさん、私は同い年ですから気にせず呼び捨てで呼んでください」


「同い年!? 十五歳ってこと!?」


「なんですかその反応は? もしかしてもっと上かと思ってました?」


「いや……大人びてるなぁと思ってたから年下はないだろうと思ってたけど」


「失礼ですね。罰としてさん付けも敬語も禁止です。いいですね?」


「え……わかりました……」


「ん、ロイス、本当になにも気にせず普通でいいからね」


「うん、そうだよロイス君。これからはここでいっしょに働く仲間になるんだよ? 私もみんなと防具以外のことも話せるように努力するからね!」


 そうだ、俺にとっては家だが、みんなにとっては下宿先みたいなもんだから気を遣わせるようなことはしてはダメだ。

 単なる下宿先ではなく家だと思ってもらえるようにしなくてはな。


「わかった。癪にさわったらいつでも言ってくれ。ホルン、早速だけどレイアウト見せてくれるか?」


「はい。鍛冶屋と武器屋と防具屋を横並びで考えてます」


 ホルンが作成したレイアウト設計図を見る。

 ふむ、町の武器屋防具屋と似てるな。

 大きさも同じくらいか?

 もっと通路を広く取ってもいいのに。

 ……まぁここの仕組みを知らないからそんなに大きくすることは考えられなかったか。


「全然ダメ」


「「え!?」」


 二人はまさかあっさりダメ出しされるとは思ってなかったんだろう。


「インパクトがないな。せっかくの自分の店なのにもっとエゴを出さなくてどうする? それに狭すぎる。大きさは自由でいいからもう一回考えてみてくれ。それと自分の部屋をどうするかもな」


「「……」」


 あれ?

 そこまで悩むようなことだった?

 自由に決めていいんだよ?

 自由と言われれば逆に困ったりするものなのか。


「わかった、とりあえず俺が簡単に配置を考えるからそれについて意見を言ってくれ」


「うん!」


「はい、お願いします」


 鍛冶工房の大きさと同じくらいにしたんだろうな。

 横並びに考えたんだから当然か。


「ホルン、販売品と見本品は別にして、販売品は倉庫に置いておこうと思うんだが、一つの武器につき何本見本として店に置く? あ、売る武器は全種類見本を置くからそこも考えてくれ。見本品は販売しない」


「え……じゃあ三本とかですか?」


「了解」


 通路はできるだけ広く取りたい。

 特に武器の場合は手に持って色々と確認したくなるからな。


 それにだいたい百人は同時に入ることを考えとかないと痛い目を見るのはわかってるからな。

 ……うん、こんなもんでいいだろう。


「フラン、防具は各商品を一枚ずつ見本として置くからな。本当はサイズごとに置きたいがさすがにそれは厳しいだろう。試着用にはサイズ別に一枚ずつ、販売用としてもう一枚ずつの計二枚は最低でも作ってくれ。見本は畳んで棚に並べるんじゃなく全部ハンガーに吊るす。販売用は全部倉庫だからきちんと包装しといてくれ」


「え……そんなに……できるかな。今は一枚ずつしか作ってないから全部もう一枚いるんだよね……そんなに作っても売れなかったら」


「売れる自信がないんなら試着用は用意しなくてもいいよ。ただ俺は防具も武器も新品ならきれいな状態のものを買いたいだけだからさ」


「いや、やってみる! だから突き放すようなことは言わないで……。いっぱい作って売れなかったときのことを考えると不安なの」


「……それもそうだな。すまん、職人の気持ちを考えてなかったかもしれない。一度全部持ってきてくれるか?」


「いいの。チャンスをくれたのはロイス君なんだから。実はね今日全部持ってきてるの」


「全部? ってどのくらいあるんだ?」


「う~ん、私の家の商品より少し少ないくらいかな?」


「そんなにあるのか……あとでララたちにも見てもらおう」


「うん!」


 そうだよな、俺は一商品としてしか考えていないが、フランやアイリスにとっては一品一品が自分の大事な作品だ。

 お詫びとして店は少し大きめに作ろう。


「よし、できた。三人ともちょっと見てくれ」


「……ロイス君、鍛冶工房のサイズは今と同じと考えていいの?」


「あぁ、保管庫やら今いる住居スペースの場所は変わるけどな」


「……ロイスさん、なにから言ったらいいかわかりませんが、とにかく大きすぎません?」


「このくらいは必要になると思うぞ? まだまだダンジョンに来る客は増える予定だからな」


「……ロイス、三人でいっしょに住むの?」


「そのつもりだけど? 三人が嫌なら変えるし、ウチに住んでもいいよ」


「ん、私はいっしょがいい」


「私も! 楽しそうだし!」


「私もいっしょのほうが心強いです。一人暮らしは初めてなので少し不安でしたし、それにこれは個人の部屋ですよね? リビングも広そうですし、キッチン、風呂、トイレまであるじゃないですか。もう家ですよ」


「もちろん家のつもりで作るからな。これは玄関だ。店のバックヤードの真ん中あたりから入れるようにした。建物を二階建てにしようかとも考えたけど、一応この上は小屋があることになってるからやめといた」


 バックヤードからは厨房エリアにも出れるし、鍛冶工房、武器屋、防具屋へと裏から入ることができ、さらにそれぞれの販売品倉庫にも行けるようにした。


「店の裏の通路が全部繋がってるのはわかるけど、店内も鍛冶工房から武器屋、防具屋へ行けるわけ?」


「あぁ、そのほうが便利だと思ってさ。武器屋と防具屋の間にも壁はなくてベンチと観葉植物を置く。景観も大事だからな」


「武器屋と防具屋のレジカウンターも繋がってるように見えるんですが」


「うん、特に分ける必要はないかなって思って。そういやここの鍛冶工房のシステムは一通り見た? ここにはレジ用の魔道具や転送魔道具というものがあってさ、武器屋と防具屋の商品はタグというものを取り付けてそれで識別して転送できるようにするつもりだからレジ番はいらないと思ってるくらいだ。もちろん売り上げは武器屋と防具屋別で管理できるから安心してくれ」


「「……」」


「ん、すぐ慣れるから大丈夫」


 いきなりこんなことを言われても理解できなくて当然だと思う。

 レジに人がいらないんなら店内に人は必要ないんじゃないかと思ってもおかしくはないからな。

 でも武器屋の武器を管理する人は必要だし、武器のアドバイザーはさすがにウサギではできない。


「まぁおいおいわかると思うから今は気にしないでくれ。ホルンは販売する武器の種類をここの冒険者たちの装備を見ながら考えてくれ。アイリスはいつも見てるはずだから聞いておくといい」


「はい、聞きたいことは山ほどありますが今は大丈夫です」


「うん。販売するのが大変なのは武器より防具だからな。裾直しとか必要になるだろ? 試着室での裾直しの印は全部ウサギが担当するから」


「「!?」」


「その前に試着のシステムだな。例えばズボンの見本を見て試着したいと思うとするだろ? この見本のズボンの傍には販売用のタグと試着用のタグをそれぞれサイズ分置いておくんだ。Sサイズを試着したい場合、試着用Sサイズのタグを取り、試着室へ行く。試着室には転送魔道具があって、この転送魔道具の上にタグを置くと、試着用の商品が転送されてくるんだ。この試着用商品にもタグが付いてる。実際に試着した後、また転送魔道具の上に商品を置くと、最初に置いた試着用のタグが戻ってくる。商品が欲しいなら見本のところから販売用タグを持ってレジへ行けばいいし、いらなければ試着用タグを戻してくれればいい」


 なんとなくだがわかってくれてそうな感じではあるな。


「で、裾直しだが、これはレジで商品を購入してもらった後にウサギが受け付ける予定だ。裾直ししたい人は裾直し担当のウサギに言って、購入した商品を試着室で着てからウサギが印を付ける。そしてウサギは受付で引き換え用のタグを渡し、受け付けた商品とタグを持ってフランに渡す。このような流れでいくつもりだ。まだ魔道具もないから今はわからなくてもいい。店の拡張だけはこの後やってしまおう。今客がいないんだったら今すぐにでもいいんだけど、とりあえず三人で部屋割りを決めてもらえるかな? アイリスの部屋のものはそのまま移動させるからさ。他にこのレイアウトで気になるところある? なければとりあえずこれでいくよ?」


「「「……」」」


 武器屋と防具屋も少しずつ固まってきたな。

 まずは見かけから入ることにしよう。


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