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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第四章 武器と防具と錬金術

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第八十四話 店員候補

「その昼カフェをメロさんとヤックに任せたい。時間は十四時~十六時にする。二人にはその昼カフェと翌日の朝カフェの準備を並行してこなしてもらいたい。どうだ? できるかな?」


 もちろん俺もついさっき思いついたことだ。

 どうせ昼カフェの時間帯はあまり客が来ないと思ってるからこそできることでもある。


「……正直少し不安だ、でもやらせてくれ! なぁヤック!?」


「……はい、ダンジョンへ入れなくなるのは少し残念ですが、それよりも面白そうですね!」


 二人がやる気になってくれて良かった。

 さて、あとはメニューをどうするかだな。


「ドリンクは朝カフェと同じものでいいと思う。コーヒー豆は栽培エリアで何種類か作ってみるつもりだから、それを色々試作してより美味しいものを作ってほしい。焙煎や抽出する魔道具は用意するから。このコーヒーの試作はメロさんに任せていいかな? ヤックにはまだ味がわからないと思うんだ」


「おお!? 俺に任せてくれ! やってみたかったんだ!」


「そうですね。僕コーヒーはあまり飲めませんし……」


「俺もコーヒーはあまり飲まないんだがカフェラテは好きなんだ。だからヤックにはメロさんが作ったカフェラテの試飲をしてほしい。それ以外にもリンゴジュースやミカンジュース、バナナジュースの準備と大変だぞ。で、ララ、ミルクが必要なんだがどうしようか?」


「う~ん、やっぱり自家生産がいいよね? でも今のウチの魔物一覧に牛っぽい魔物はいないんだよねー。ミーノさん、牛っぽい魔物の情報知ってたりしない? どこかで出たとかさ?」


「え? 牛の魔物ね……乳牛だよね? それなら確かマルセールより少し北に行ったところにある牧草地帯にカウカウって魔物がたまに出るって取引先から聞いたことがあったような……でも中級者レベルじゃないととても倒せないとか言ってたような……」


「マルセールの北の牧草地帯ね! ありがとう! お兄、ちょっとユウナちゃんとピピとシルバ連れてメタリン馬車で行ってくるね!」


「おう、気をつけてな。暗くなる前に帰ってくるんだぞ」


「はーい!」


「「「「「「……」」」」」」


 ララは慌てて小屋から出て行った。


 ララが外へ行くって言うのは珍しいな。

 少し心配だがユウナとピピたちがいっしょなら大丈夫だろう。

 ピピが上空から探せばすぐ見つかりそうだし。

 四人、いや六人は驚いてるようだが、今のララは強いしな。


「じゃあ次に料理メニューだけど、これも朝のメニューも引き続き出そうと思う。作ってる最中だしね。それとは別に昼カフェ限定のメニューが欲しいんだけど、パンケーキとかはどうかな? ミルクがあればバターもできるだろうし、ホイップクリームを乗せたりもしたい。蜂蜜やバターだけでもいいかもしれない。イチゴとバナナもあるといいな」


「(詳しすぎないか? それに注文が多い)」


「(ロイス君の言うことを実行すれば間違いないのよ! でも聞いたことはあるけど食べたことないからよくわからないわ……)」


「(パンケーキってなんですか? ケーキって作るの大変そうですけど……)」


「(甘いものなかったからいいと思うよ! カフェ行ったことないからどんなものか知らないけど……)」


 パンケーキを注文する人がいるかどうかは微妙だが、俺がいつでも食べれるようになるだけでも良しとしよう。


「あとなにかメニュー案ないかな?」


「……あれはどうだ? ハンバーガー」


「ハンバーガー? なにそれ?」


「え? オーナーが知らないなんて珍しいな。マルセールではカフェにしか置いてないから食べたことなくても不思議じゃないか。パンとパンで具を挟んでるんだ」


「それサンドイッチじゃないの?」


「サンドイッチとはパンが違うんだ。それに中の具も違う。サンドイッチよりボリュームがある感じだな」


「へぇ~。じゃあそれをメニューにしよう。どんなパンかわからないけど、カトレアに言えば作ってくれるはずだから一度試作してみて」


「よっしゃ! ヤック、明日から忙しくなるぞ!」


「はい! 腕がなりますね!」


 ついさっきまで朝カフェも昼カフェもやるつもりなんていっさいなかったのにな。

 ラーメン屋も始めることだし、冒険者たちは食の選択肢が増えて喜んでくれるはずだ。

 四人は明日からは今日までと違った生活が始まるんだな。


 ……あ、従業員を増やさないといけないんだった。


「そうだ、最近お客が増えてきたし、モモがラーメン店に移るから新しい従業員を一人か二人増やそうと思ってるんだけど誰かいい人いないかな?」


「「「「……」」」」


 そんな簡単に見つかるわけないか。

 この四人もたまたま取引先に行ったときに知り合っただけだもんな。


 どうしようか。

 ここに来る冒険者たちに募集をかけてみるか?

 昼営業限定か夜営業限定とかにしておけば希望する人もいるかもしれない。

 というかそれいい案じゃないか?

 十時半~十三時半は食堂で働いてそれからダンジョンへ行ってもいいし、もしくは十六時半まではダンジョンでそれから十九時過ぎまで食堂で働いてもいい。

 勤務時間は三時間だが、給料として300Gもらえるんだったらいい稼ぎになると思う。

 なにより安定してる。

 ウチの従業員と同じ時間になるんならメタリン馬車を利用してもいいしな。


「ねぇロイス君、私たちが紹介していいの?」


「え? 誰かいるのか?」


「誰かというよりも、よく聞かれるのよ。食堂でも町でもさ」


「聞かれる? 誰に? なにを?」


「食堂では冒険者ね。どっちかの営業時間中だけでも募集してませんかってね。町では知り合いね。私たちがここで働いてることはみんな知ってるし、給料のことも噂で聞いてみんな知ってるのよ。だから友達からは募集してないかって聞かれるし、親も知り合いの親から紹介してほしいって言われてるみたい」


 どういうこと?

 ウチで働きたい人がいっぱいいるってこと?

 なんで?

 給料がいいのか?

 実際に冒険者たちもそう思ってるというのは俺の考えた通りなんだと思うが、そんな話俺は一言も聞いたことがないぞ?

 なぜ管理人の俺に尋ねてこないんだ?

 俺には絡みづらいのか?

 町で噂を流してる犯人たちが誰かってことはわかってるんだからな!


「正直、どうなんだ? ウチの労働環境は」


「最高だぜ! 悪いところが見当たらねぇ!」


「実家の肉屋のときよりも遥かに充実してるわね」


「道具屋であることを忘れてしまいそうです……」


「なんだか自分が変われた気がします。ロイスさんのおかげです」


 良かった、気に入ってくれてるようでなによりだ。


 でもこうなると安易にここで募集をかけるのはやめたほうがいい気がする。

 かといって四人の知り合いを雇ったらそれはそれで身内ばっかりズルいとか言われたりするんだろうか。


「俺としては楽しく働いてくれるなら誰でもいいんだけどなぁ」


「じゃあ私の友達でもいい? 可愛い子だよ?」


「俺の妹はどうだ!? 弟はまだ十歳だから無理だけどよ。でもララ店長は十一歳になって間もないんだよなぁ……」


「僕の弟も興味持ってました! 十二歳ですけど……」


「私はあまり友達いないから……」 


 うーん、ミーノの友達とメロさんの妹が有力候補か。

 それにしてもメロさんもヤックも他に妹や弟がいたんだな。

 兄をこんなに働かせて俺は悪者になってないだろうか。


 どうしようかな。

 冒険者にどっちかの営業時間だけ入ってもらうよりかは通しで働いてもらったほうが色々と融通は利きそうだな。


 ……というか既に冒険者枠としてユウナを採用してるじゃないか!

 しかも働きたいよりも先にここに住みたいって言ってきたんだぞ!?

 それに確か理由が遠いからとかそんな感じだったぞ!?

 最近はダンジョン食堂の手伝いすらしてないんじゃないか!?

 まぁ受付の時間帯は手伝ってくれるし、杖の魔力安定化を覚えてくれるんなら良しとするか。


「じゃあ年齢的にミーノの友達とメロさんの妹さんにお願いしようかな」


「本当!? きっと喜んですぐにでも来てくれると思うよ!」


「年齢か……俺の妹は十三歳になったばかりなんだが大丈夫か? ヤックとモモの一つ下だ」


「十三歳……う~ん、ヤックとモモと一つしか変わらないとはいえ二人のときとは事情も違うからなぁ。無理させることもないし今回は見送らせてもらっていいかな……」


「しょうがないぜ。俺も無理させたくないがあいつが行ってみたいってうるさいんで一応な! 気にしないでくれ!」


「私の友達は一つ上だよ! それならいいよね!?」


「てことは十六歳か。その人の都合が良ければすぐにでも来てくれるように頼んでくれるか? 今はすぐにでも働いてくれる人材が欲しい。武器屋と防具屋も開いたら人が足りなくなるのは目に見えてるしな」


「「「「武器屋と防具屋!?」」」」


「あぁ。…………あれ? ララから聞いてないのか?」


 てっきりラーメン屋の話といっしょに聞いてるもんだと思ってたんだが。

 ……よく考えたらこの四人には関係ないことだから話してなかったのか。


「だからこの二人がここにいるのね!?」


「そういうことか!? お前らもここで働くのか!?」


「仲間が増えていいじゃないですか。武器屋と防具屋には少し興味があります」


「新店が続々オープンってわけですね! 燃えてきました!」


 違う違う、この二人はただダンジョンに行ってみたくて無理やりついてきただけだから。


「いや、この二人は……」


「ロイス君! 私決めたわ! 私もここに住み込みで防具屋兼裁縫職人として働くわ! 人探してるんでしょ!? いいよね!? メロたちばっかズルいよ! さっきから聞いてれば美味しそうな話ばっかりしてさ! 防具屋兼裁縫職人兼試食担当でもいいよ!?」


 ……どう反応したらいいんだ。

 確かにフランさんが防具屋で働いてくれるのはいいことだとは思うんだが、なぜか気乗りがしない。

 裁縫職人なんて喉から手が出るほど欲しい人材なんだけどな。


「仕方がないですね。フランちゃんが働くんなら私もここで武器屋として働きます。もちろん住み込みで。いい武器屋にするためにはアイリスちゃんとの連携が必要ですし。従業員は食べ放題飲み放題なんですよね? ロイスさん?」


 ……。


 人は足りてないはずなのに、なんであまり歓迎ムードになれないのかわかった。

 俺、今日は疲れてるんだ。

 町にいたときからグッタリだったのに、むりやり二人を連れて帰らされさらにグッタリ。

 ここで会議してなぜかカフェまで開くことになって色々考えることになって精神的にも疲れてるんだ。


「あ、はい、そうですね。ではみなさん、明日からもお願いします」


 考えることをやめた俺は適当にそう言った。

 今日はもう家に帰って寝よう。


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