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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第四章 武器と防具と錬金術
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第八十二話 従業員会議

「ここがダンジョンなのね!」


「ダンジョンという感じはしませんが……」


「この大きい建物の中にダンジョン食堂があるの!?」


「あっ鍛冶工房って書いてますよ。アイリスちゃんここにいるんじゃないですか?」


 町の武器屋からさっさとダンジョンに帰ってこようとしたら、なぜかフランさんとホルンさんにダンジョンの施設を見学させることになった。


「この時間はそこの小屋には誰もいないよ」


「小屋? これが小屋? どう見てもそっちの家より大きいよ?」


「そうですね。小屋と呼ぶのは変ですね」


「……昔の名残でね」


 どうしようか、今日はもうこの二人の相手をするのは面倒すぎる。

 ユウナいないかな。


「おかえりなさい。なんの騒ぎですか?」


「あぁ、ただいま。悪いけど指輪を二つ頼む。工房内にも入れるようにしてもらえる?」


 カトレアは小屋の中へ入っていった二人を不審に思いつつも指輪を用意してくれた。


「……どちら様ですか?」


「町の武器屋と防具屋の娘さんだよ。なぜか見学させることになってな。二人ともアイリスさんの友達らしい」


「……そうですか。でも小屋の中は会議中ですよ?」


「え? 会議? 誰が?」


「……私とアイリスちゃん以外のみんなです。私は隣で魔道具作成中ですので」


「なんの会議? そうだ、カトレアこれお土産。ユウナと二人分だけど、先に好きなほう選んでいいよ」


「……え? お土産ですか?」


 カトレアは緩んだ表情を見せ、包装を丁寧にほどいていった。


「……これはローブですか? 嬉しいです」


 うん、嬉しそうで良かった。

 やっぱり被るタイプのほうを選ぶんだな。

 色も前と同じだから見た目はあまり変わらないけど、中の生地はダークラビットの毛皮を使ってるから暖かいはずだ。


「……この裏地はもしかして」


「わかるか? ダークラビットだ」


「……はい、ちゃんと使ってもらってるんですね……良かった」


「この服作ったのいま入っていったうちの一人なんだ。橙色の髪の子」


「……防具屋の娘さんというわけですか? もしかしてウチで雇おうと?」


「そう防具屋の娘さん。いや、雇うわけじゃなくて彼女の作る服を仕入れることになった」


「……なにか事情がありそうですね。それよりも中に行ったほうがいいかもしれません」


「確かにそのようだな」


 小屋の中が明らかにうるさくなった。

 なんでまたこんなところで会議をしてるんだ?


 一番奥の買取カウンター近くのテーブルに人が集まっているようだ。


「あっ、お兄!」


 俺を見つけたララが駆け寄ってくる。


「どうした?」


「あの人たちなんなの? 従業員の四人は知り合いっぽいけどさ」


 俺はララにカトレアにした説明をもう一度する。


「ふーん、見学に来ただけなのね? てっきりまたお兄が女の人連れてきたのかと思った」


「おい……俺だって連れてきたくなかったんだからな。営業の挨拶回りも大変なんだぞ」


「はいはい、お疲れ様。それよりあの黒髪の人にいきなり体調の心配されたんだけどなんなの?」


「あの人は真面目で少し心配性みたいなんだ。気にしなくていい」


 すると今度はユウナがやってきた。


「あの人とは合わないのです。なんか会話が噛み合わないのです。避けられてる感じなのです。あっちの人もなんか変なのです」


「あぁ、初対面だから緊張してるんだ。ダンジョンに来るのも初めてだから色々気が散ってたりもするんだろう。それよりユウナにお土産を買ってきたから家に行って見てくるといい。カトレアに渡してあるから」


「お土産なのです!? やったーなのです!」


 ユウナは走って家に戻っていった。


「お兄、私にはお土産ないの?」


「あぁ、どうもパッとしなくてな。今度買ってくるから許してくれ」


「むぅ~」


「それよりなんの会議をしてたんだ?」


「ラーメン屋の話だよ。そこのテーブルでみんなでご飯食べながら話してたら色々話が盛り上がってというかややこしくなったというかね。それでなんか会議みたいになっちゃった」


「モモはなんて?」


「やりたいって言ってくれたよ!」


「それならなんでややこしくなるんだ?」


「それがね……まぁ聞いたほうが早いよ」


 俺とララはテーブルに近づく。

 町の同年代の六人が集まってるのだからそれはもう賑やかなこと。


「おい、フラン! お前まで来ることないだろ!」


「え、私だってダンジョンに来てみたかったんだもん」


「メロさん、そんな言い方しなくてもいいじゃないですか? 久しぶりに会う友人によく来たなくらい言えばいいのに」


「ホルン、この二人のことは放っておいていいのよ。メロはアイリスちゃんとフランちゃんには頭が上がらないんだからね」


「そんなことないからな! 年が同じだから気遣ってあげてるだけだ!」


 フランさんとメロさんとアイリスさんは同い年なのか。

 ここに来る冒険者も含めみんな年齢が近すぎてごちゃごちゃになるな。


「えーっと、いいかな?」


「あっ、オーナー! ラーメン屋のこと聞いたぜ!」


「ロイス君! ちょうどいいところに帰ってきたわね!」


「ロイスオーナー、どうにかしてくださいよー」


「ロイスさん! 私頑張りますからね! いっしょに店を盛り上げましょうね!」


「ちょっとロイス君、メロはクビにしてもいいと思うよ!」


「ロイスさん、ここにはお客さんも来るんじゃないですか? もう少し静かにするか別の場所に移るかしたほうがいいのでは?」


 ……本当にうるさいなこの人たち。

 それにいっせいに話すからなに言ってるかさっぱりわからん。


「ちょっと静かにしてもらってもいいですか?」


「「「「「「……」」」」」」


 おっ? みんな素直じゃないか。

 低めのトーンで言ったのが結構効果があったようだな。


「まずフランさんとホルンさん、どこから見学したいですか? アイリスさんの鍛冶工房に行きますか? それとも軽くダンジョンのフィールドを歩いてみますか? 魔物と戦うこともできますけど? お二人も戦闘を経験することでそれぞれの仕事に役立つこともあると思いますよ? ちなみにミーノ以外の三人は毎日三時間近くダンジョンで戦ってます。それか食事にしますか? メニューはあちらです。今ならララがいるからすぐに用意できると思いますけど? どうしたいですか?」


「え……ホルンどうする?」


「……そうですね、食事にしませんか? カレー食べてみたいですし」


「あ、私もカレー食べたい」


「じゃあそれでいいですね? ではそちらのテーブルでお待ちください。ララ、カツカレー二つ頼めるか?」


「うん! 五分で作ってくる」


「頼んだ」


 ララは厨房エリアに行ったようだ。

 二人は隣のテーブルに座るかと思いきや、食堂のサンプルやメニューのあるほうへ見に行ってしまった。


「オーナーやっぱすげぇよ」


「あの二人を相手によくやるわね」


「ホルンさん怖いんですよ。フランさんはよくわからないけど」


「ホルンちゃんは真面目すぎるの。フランちゃんは防具バカだけどね」


 モモの言葉が核心をついてるな。


「で、なんの会議なんだ?」


「そうだオーナー! モモばっかズルいぜ!」


「いえ、モモはできる子だから当然よ!」


「少し羨ましいです。僕もそのうち店持ちたいです」


「私だってお客さんと話せるように努力してるんだからね!」


 方向性が見えないな。


「順番に行こうか。まずモモはララから話は聞いたんだよな?」


「はい! ラーメン専門店の店長やりたいです!」


「そうか。店長といってもホール担当がメインだぞ?」


「もちろんです! 店長は店を上手く回してこそです!」


「接客してもらうことになるが大丈夫そうか?」


「そのために練習してきたんですから! やらせてください!」


 凄い意気込みだ。

 店長という言葉がモモを変えたのか?


「朝と夜の営業前は食材や備品のチェックとかあるからな。休憩時間は今までと同じでいい」


「そのことなんですけど、仕込みも私がやったらダメですか?」


「仕込みを? モモが? それだとダンジョンに入れなくなるぞ?」


「ダンジョンよりもラーメン屋のほうが大事ですから! 私もお姉ちゃんみたいに任されてみたいです」


「ミーノはどう思う?」


「モモがやりたいって言うんなら任せてあげてほしいの。私も補佐として手伝うからどうかな?」


「モモがいいんなら構わないが。ラーメンのスープ作りに具材作りは大変だぞ? ウサギたちと連携取りながらできるか?」


「はい! やってみたいです!」


「ならモモに任せる。早速明日からララとミーノとやってみてくれ。ダメなときには遠慮なく言うんだぞ?」


「はい! ありがとうございます!」


 モモがダンジョンよりもラーメンを優先するとは思ってもみなかったが、ラーメン屋にとってはそのほうがいいな。


 と、これで終わる話じゃないのか?


「他にはどんな内容が?」


「俺も店持ちたい!」


「僕も!」


 そういうことか。


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