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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第四章 武器と防具と錬金術
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第七十九話 カフェでのお話

「カフェラテを下さい。ホットで。フランさんはなに飲まれますか?」


「じゃあ私も同じ物お願いします」


「じゃあカフェラテのホット二つで」


 俺とフランさんは近くのカフェに来ていた。

 なんでも最近はここのパンケーキが流行っているんだとか。


 このフランさん、防具屋の外でいきなり俺に声をかけてきたんだけど、なんと防具屋の娘さんらしい。

 アイリスさんが言ってた防具屋の友達とはフランさんのことだったのだ。

 以前にも確かアイリスさんとミーノとの会話の中でフランさんの名前を聞いたことがあったからすんなり受け入れることができた。


 なにか話したいことがあるみたいだったから近くのカフェに行くことになったんだ。

 だが少し話してみてすぐに気付いたことがある。


 どうやら俺はフランさんとの会話が苦手らしい。


「「……」」


 そう、全く会話が続かないのだ。


「パンケーキも頼んでみていいですか? 食べます? ここの支払いは俺が持ちますんでなんでも好きな物頼んでくれていいですよ」


「え、じゃあパンケーキのフルーツホイップにしませんか? 量が多くて一人じゃ食べきれないんですよこれ」


「へぇ~。じゃあそれにしますね。すみませーん!」


 俺はフランさんが言ったメニューを頼む。


「「……」」


 また沈黙が続く。

 ここでカフェラテが届いた。


「……あっ、美味しいですね。俺コーヒーはあまり飲まないんですがこのくらいミルクが入ってると飲みやすい」


「私もカフェラテ好きなんです」


 そろそろ寒くなってくる季節だし、ドリンクのホットメニューも考えてもいいのかもしれないな。

 でもそうなるとサイダーのように瓶での販売は難しいか。


「「……」」


 紙コップでの販売にしようか。

 注文が入ってからウサギが紙コップに注いで転送するんなら魔道具自体に大きな変更はないしな。

 普通のコーヒーも販売したほうがいいか。


「ところでフランさん、なにかお話があったのでは?」


「はい、アイリスが大樹のダンジョンに住み込みで働くことになったって聞いて……本人とはまだ会ってないから元気にしてるかなって思ってたんです。で、さっき注文してた商品を取りに鍛冶屋に行ってたんですけど、帰り際におじさんからさっきまでロイス君が来ててこれから防具屋に行くって言ってたって聞いたものですから急いで帰ってきたんです。急いでといってもすぐ裏なんですけどね」


「そうでしたか。アイリスさんが住むことになったのも突然のことでしたからね。でも土曜の夜には帰ってきて日曜はこっちにいますから毎週会えますよ」


「はい。おじさんからそう聞いてたもののどうしても心配になっちゃって。だってアイリスは町からすら出たことなかったんですよ? それが急に私にもなにも言わずに出ていっちゃうなんてなにかあったと思うじゃないですか? 最初はおじさんたちも心配してたんですけど、月曜に一度ダンジョンへ行ってからはなんだか上機嫌ですし意味がわかりません」


「あぁ~、あの人たちはダンジョンを楽しんでましたからね。といっても鍛冶工房と食堂にしか行ってないんですけどね」


「ダンジョン食堂に行ってきたんですか!? いいなぁ~。私も噂で聞いたカレーが食べてみたいんです」


 そういやアイリスさんもそんなこと言ってたような気がするな。

 ゲルマンさんもおじさんもカレー食べてたし、本当に町で噂になってるのかもしれない。

 口コミって偉大だな~。


「「……」」


 で、話はそれだけなのか?

 アイリスさんの近況が知りたかったんだな。


 ここでお待ちかねのパンケーキが登場した。


「うわっ、これは凄いですね! パンケーキの上にホイップ、周りにはイチゴとバナナがいっぱい散りばめられてて見た目からして美味しそうだ!」


「そうでしょ? 私もアイリスとたまに食べにきてるんです。お腹いっぱいでも食べれちゃうんですよ。ふふっ」


 この見た目のインパクトは凄いな。

 ボリュームがあって色も鮮やかだ。

 ウチではデザート系のメニューは出してないが検討してみてもいいかもしれない。


「「……」」


 うん、パンケーキはふわっふわだ。

 ホイップも甘さ控え目で食べやすい。

 ……美味いな。

 ユウナなんか飛びついて食べそうだな。

 カトレアも意外に甘いもの好きだから喜びそうだ。


「美味しいですね! ウチでも出したいくらいです」


「このホイップが大好きなんです。ぜひ出してみてください。きっと人気商品になること間違いなしですよ」


 でも冒険者たちはこのパンケーキをいつ食べるのだろうか。

 ……三時のおやつというわけにはいかないしな。

 やはりウチでは需要がなさそうだ。

 家の中だけにしておこうか。


「「……」」


 なんだかこうやって二人で一つのメニューを食べているとまるでデートみたいじゃないか?

 会話は全く続かないがな!


 そういやフランさんは何歳なんだろう?

 勝手にアイリスさんと同い年だと思い込んでいたけど、もしかしたらもっと上だったりするのか?

 俺の目は当てにならないからな。


「「……」」


 わかったぞ。

 俺がフランさんを苦手なんじゃなくてフランさんが俺を苦手なんだ。

 さっきから会話が続かないのは全部俺の番で終わってるからであって、フランさんから俺に話しかけてくるようなことは一度もないんじゃないか?


「「……」」


 さっさと食べて出るとするか。

 あまり引き留めるのは失礼だ。

 アイリスさんのことも少しは話せたし満足だろう。

 でも防具屋には行きにくくなったな。

 今日のところは帰るとしよう。


「ふぅ~美味しかった。お付き合いしてもらってありがとうございました。ちょうどお昼になに食べようかなって考えてたところだったんで助かりましたよ」


「いえ、私こそご馳走様です。初対面なのによくしていただいて申し訳ないです」


「そんなこと言わないでください。アイリスさんのお話が聞けて良かったですし」


「いえいえそれは私のほうです。アイリスが元気でやってるみたいで安心しました」


「でも言うほどアイリスさんの話をできませんでしたね、すみません。週末帰ってきたときにでもゆっくり聞いてください」


「はい、そうします。ところで防具屋になんの用だったんですか? 今まで来たことありました?」


 ……おいおい、今度は会話が終わらないじゃないか。

 もしかして自分からは話さないけど相手のターンで終わるのは嫌なのか?

 いや、俺がむりやり終わらしてたのがダメだったのか。

 ほんとに俺は相手のことを考えていないんだな。

 でも初めて質問らしいことをしてくれた。


「こんなこと防具屋の娘さんに言っていいものかわからないんですが、今度ウチでも防具屋を始めようと思ってまして……」


「えっ!? ダンジョンでですか!?」


「はい。なのでライバル店になるかもしれないので実は今非常に気まずいんです。すみません。俺が防具について知らないことが多いので今日は防具屋がどんな商品を取り扱っているのかを見に来たんです」


「そうだったんですか……。で、どうでした? ウチの品揃えは?」


「幅広く色んな商品があっていいんじゃないですかね? ただ俺は本当に防具のことはなにも知らないんです。鎧とローブとそれ以外の服ってイメージしかなくて。すみません」


「いえ、だからこそ聞きたいんです。正直に言ってください。ウチの商品どうでした?」


「えっ……。なら正直に言いますね。お店のことでなく単純に装備品について思ったことですからね?」


「はい……覚悟はできました」


 覚悟って……。

 俺が批判するようなことを言うのはわかってるってことか。

 ここまでしつこく聞いてくるのはフランさんも自分の店の商品が気に入ってないのか?

 なら遠慮なく言わせてもらおう。


「まず鎧ですが、あんなに重いのを着て動ける人はそうはいないんじゃないですかね。分厚くして防御力をあげたいのはわかりますけど。多少防御力が落ちてももう少し薄くして内側に皮かなにかの生地で補強したりするほうが機動力も上がるし着やすくもなると思うんですが」


「……でも昔からこの仕様なので……それに鎧は頑丈さが第一なんです」


「いや、否定してるわけじゃないんです。防御力を高めたいんだったらこれで問題ないんですから。これで盾でも持っていればダメージも減るはずですし本人は。ただ攻撃はできないでしょうしスピードも遅いでしょうけどね」


「装備者のダメージは減っても仲間のダメージは減らせないということですか? 仲間全員のダメージを引きつけることはできないですか?」


「え? そりゃあ正面から敵が一人で来てくれれば大丈夫かもしれないですけど、そんなことってまずありえませんからね。ウチの魔物を見ていても後ろから襲い掛かるなんてのは当たり前ですよ。それに数十体が全方向から襲ってきたりもしますし。もちろん空からも来ます。魔法も使ってくるので一人で受けきるのは現実的ではないですね」


「数十体が全方向から……空からも……確かに仮に一人で受けたとしてもすぐにやられてしまいますね。でもそれは他の装備でも同じでは? むしろ防御力が低い分やられる可能性が高くなるじゃないですか?」


「防御しかしないんだったら当然そうなりますけど、普通は攻撃するじゃないですか。防御力上昇などの魔法を魔道士がパーティ全体に使いますし、集団相手となると前衛タイプは攻撃もできないと役に立ちませんからね。相手が一人とか正面からしか来ないとかならいいんですけど」


「……確かにそうですね。今まで私は前方からの攻撃しか考えていなかったです。あっ、おかわりなににします? すみませ~ん!」


「え?」


 ……まだまだ話は続くようだ。


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