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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十四章 帰還

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第七百四十一話 救出

 王都南西にある鉱山の入口から50メートルほど左に開いた小さな穴。

 とても人間が入れるような大きさの穴ではない。


「ピィ~(ギリギリ入れそうです。行ってきます)」


 タルが身をかがめてやっと入れるサイズだ。

 人間の子供でも無理だろう。

 ではそれならコタローはどうやって入ったのかということになる。


「別の穴があるでござるな。この穴に不自然な点は見られないでござる」


 そうなるか。

 ピピが言うにはマドたちがいる場所は少し広くなっていて、そのさらに奥にはこれと同じような小さな穴があったらしい。


「とりあえずピピとタル待ちだな」


 敵はここから20メートルほど中に入った場所にいる。

 現在ピピは中で敵と交渉中。


 敵の目的がなにかはわからないが、俺たちを気にしてることは間違いない。

 自分が仕留めた獲物を取られたくないだけならそんなことせずに穴を閉じればいいわけだし。


 それに本当に殺す気ならさっきピピが一匹だけで来たときに戦ってたはず。

 今みたいにタルが入っていって二対一になれば相手が不利になるだけだし。

 ……不利になるとは限らないか。

 一石二鳥とか思ってる可能性のほうが高いかも。


 やはりこの敵もあのゴーレムたちと同類と考えたほうがいい。

 もしくはダイフクが怪我を負わされたというミスリルウルフのようにただ単に強く賢い魔物なだけかもしれないが。


「来る」


 ミオが呟いた。


 ピピかタルか?

 それとも…………あ、ピピだった。


「チュリ(交渉成立です)」


「交渉成立? 言葉が通じたのか?」


「チュリ(たぶん。向こうは終始無言で頷くだけでしたから)」


「無言か。ワタもなんとなく理解するだけならできるし、そいつもまだ話すというところまでいってないだけかもしれない。モリタみたいな動物もいるしな」


「チュリ(タルを見てマドの仲間が迎えに来たと判断したんでしょうね。いい魔物かどうかはまだ判断できませんが、悪いだけの魔物ではないことは確かです。マドとコタロー君の看病をしてくれてたようですし)」


「看病? いいやつじゃないか。仲間になってくれるんじゃないか?」


「チュリ(どうでしょうか。私はあまり好きになれませんね)」


「ピピがそんなこと言うなんて珍しいな。そういや交渉条件は?」


「チュリ(レア袋に入ってた食料全部持っていかれました)」


「全部? 元から入ってた物だけじゃなくてさっき準備したやつもか?」


「チュリ(はい。どうやら既にマドとコタロー君のレア袋をあさって使い方は理解していたみたいで、袋ごと渡すように要求してきました)」


「へぇ? よくあんなぺったんこの袋の中を覗く気になったな。よほど腹が減ってたんだろうか。でもやはりただ賢いだけの魔物じゃないな。今は喋らなかっただけで本当は喋れるんだろう。ますます興味が出てきた」


「チュリ(放っておいたほうがいいと思いますよ。群れるのが好きじゃない魔物のほうが多いんですから)」


「えぇ~~~~。もしかしたらミスリルゴーレムが言ってた魔物はそいつのことかもしれないのに?」


「チュリ(まぁその可能性はありますけど。こちらの鉱山とあちらの鉱山ではかなり距離がありますが、中で繋がってるかもしれませんしね。穴が掘れるんなら自分で繋げたのかもしれませんが)」


「餌付けしてみようかな」


「チュリ? (野良ネコじゃないんですからね? 人間嫌いで噛み殺されるかもしれませんよ?)」


「冗談だって。で、そいつは今どうしてるんだ?」


「チュリ(コタロー君の下に別の穴がありました。それを見せると奥の穴に消えていきましたよ。私のレア袋を持って。マドとコタロー君のレア袋もどこかに置いてあるんですよ)」


「痛い出費だな。というか二人は生きてるのか?」


「チュリ(はい。眠ってるだけのようです)」


「怪我は?」


「チュリ(まだそこまでは見れていません。すやすや寝てる様子なので命に別状はないかと)」


「そうか。じゃあ二人の救出に向かおう」


「ピィ! (ご主人様ー! こっちです!)」


 タイミング良く左のほうからタルの声が聞こえた。

 ミオはすぐに走り出す。

 ほかは馬車といっしょに移動だ。


 タルはどうやら地面から出てきたようだ。


「ピィ(ここの出口だけ土で塞がれてたんですけど、行き止まりで私が困ってたらさっきの子が来て破壊してくれました)」


「ほら? いいやつなんだって」


「チュリ(レア袋三つはさすがに強欲すぎたかなって思ってるんですよ)」


「ピィ(あ、私のも取られました)」


「……まぁコタロー以外の袋の中身は食料がほとんどだろ? こんな穴暮らしじゃ美味い物が食べられる機会も少ないだろうからそれくらいはいいじゃないか。二人の命を守ってくれたのかもしれないし」


「チュリ? (相手が小さいってだけで可愛いと思ってません?)」


「いや、そんなことはない」


「ピィ? (私より小さかったですけど迫力ありましたよ? 目つきとか鋭いですし)」


「暗くてよくわからなかっただけだろ? さっ、早く二人を連れてきてくれ」


「……チュリ(これに味を占めて、今後も人間相手に似たようなことをするかもしれませんよ)」


 最初に俺が食料を与えたせいだとか言われるんだろうか……。

 要求もどんどん大きくなっていったりして……。


「……攻撃しないだけマシだろ? 注意するように一応報告はしておくけど」


 いっそのことユウナの封印魔法で鉱山へ入ることを完全に禁止にしてしまおうか。



 そしてタルを先頭に、ミオとアオイ丸が土魔法で穴を少しだけ拡張しながら中に入っていった。

 俺とピピは馬車で留守番だ。

 馬たちを守らないといけないしな。


 でも本当は俺もその敵に会ってみたい。

 会えないのはさっきからなぜか苛立っているピピが会うの禁止とか言うせいだ。

 レア袋くらいまたカトレアに作ってもらえばいいだけなのに。

 まぁ敵かもしれない魔物の手にレア袋が渡ってしまったのは危険かもしれないけどさ。


「チュリ(最初からロイス君だけを狙ってる可能性も考えてください)」


 そんなまさか。


 ……でも絶対にないとは言い切れない。

 マナのせいで目立ってるかもしれないし。

 それなら行かないに越したことはないからな。


「チュリ(それよりこの鉱山内でなにか異変が起きてるのは間違いないですよ。魔瘴スポットでしたっけ? あれがたくさんあるんじゃないですか? それと私たちのような魔物がたくさん出現し始めたことも気になります)」


「だよなぁ~。どっちにしろ調査は必要になるだろう。封印魔法で入口を閉じたところでそれが通用するのは普通のバカな魔物相手にだけだし。場合によっては鉱山内を浄化したあとに完全に埋めることも考えないといけなくなるかもな。まぁ鉱山を閉じるなんてことは許されないだろうけど」


「チュリ(なら浄化魔法が使える魔道士を鉱山に常駐させるというところらへんが落としどころでしょうか)」


「それいいな。冒険者引退後の職にピッタリだ。戦士が引退後に鉱山で働くパターンも多いらしいし、ちょうどいいじゃないか」


「チュリ(王都では今回の件を機に冒険者や騎士になりたいという人が増えるかもしれませんね。結局自分の身を守れるのは自分だけですから)」


「自分のことはどうでもいいから誰かを救いたいって人もいると思うぞ。アリアさんみたいにさ」


「チュリ? (ならアリアさんは誰に守ってもらうのでしょうか?)」


「う~ん。ララとか?」


「……チュリ(アリアさんより強い男性が現れるといいですね)」


「あ、そういう話かよ。別にアリアさんより弱くてもいいだろ。それに家庭内では剣なんて握らないほうがいい」


「チュリ(ああいう剣が得意な人に限って包丁は苦手な人が多いそうですよ)」


「じゃあララはどうなるんだよ?」


「チュリ(あ……。まぁララちゃんは半分魔道士ですし。それよりさっきから気になってるんですけど、魔物が寄ってくる気配が全くないですよね)」


「というかこの鉱山近くに来てから一匹も来てないぞ。入り口から離れてるから死角になってるんじゃないかな」


「……チュリ(もしくはロイス君のせいですかね)」


「俺?」


「チュリ(マナのせいで魔物が嫌がってるのかもしれません)」


「へぇ~? こわくてFランク以下は近寄ってこれないとか? でもじゃあ俺のせいじゃなくて俺のおかげって言ってくれよ」


「チュリ? (その分どこかにしわ寄せがいってるんですよ?)」


「そこまで責任は取れないって。少なくとも俺が安全ならピピも安心だろ?」


「チュリ(まぁそれはそうですけど。でも馬車で移動してたときは寄ってきてましたから気のせいですかね。あ、出てきましたよ)」


 穴の中から音が聞こえてきた。


 そしてまずアオイ丸が姿を見せた。

 その後ろには横になった状態のコタロー。

 どうやらコタローの両足を抱え、引きずってきたようだ。

 コタローのお腹の上ではマドが寝ている。


「本当に寝てるだけか?」


「たぶん……。起こしても起きないのでござる……」


 起こしても引きずられても起きないとは……。

 変な呪いにかかってるんじゃないだろうな……。


「マド? マド? 大丈夫か?」


「……」


 確かに息はしているようだ。

 心臓も動いている。

 ……でも服の損傷は酷く、体も土で汚れている。


 コタローの服にも破れている個所が多々見受けられる。

 擦り傷もかなりできており、血の跡も多く残ってる。

 だが真新しい血は出ていない。

 ポーションが効いてるんだろうか。

 よくこれだけのダメージを負いながら生きてたな。


 そしてコタローとマドを馬車に運んだ。


「コタロー……」


 アオイ丸は泣きそうな声を出す。


「骨が折れてるかもしれないから起きても動かないように言ったほうがいい。もしかするとダメージが大きすぎて回復するために体が睡眠を欲してるのかもしれない」


 数分後、ミオとタルも戻ってきた。


「穴埋めてきた」


「ピィ(レア袋もマドのやつ以外の三つは置いてありました。食料は空でしたけど)」


「やっぱりいいやつなんじゃないか?」


「……チュリ(レア袋は一つあればいいという判断でしょう。でも食料全部と、地味にマドの杖も持っていかれてるんですからね。それより少し北に移動してユウナちゃんたちを待ちましょう。ここにはいたくないです)」


 ピピはあの敵をどうしても仲間にはしたくないようだ。

 小さなネコかもしれないとはいえ、よほど敵の顔がおっかなかったのかもしれない。

 それではララのお眼鏡にはかなわないということだろうか。



 ミオが御者席に座り、馬車は移動を始める。

 やはりこちらから近付いていくと敵は襲いかかってくるようだ。


 そして俺が馬車の後方に座り、後ろを警戒していると、遠くでなにかがキラリと光るのが見えた。

 やっぱり仲間になりたいんじゃないだろうか。


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