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第七百三十九話 新たな敵の気配

「ロイス殿~!」


 もう馬を確保してきたのか。

 ミオと二人で食事休憩でもしようかと思ってたところなんだけど。

 馬小屋が近くにあったのかな。

 本当はウチの馬を使えると良かったんだが、馬たちは城に避難させてもらってるらしいからここまで来るのは時間かかるしな。


 ……ん?

 アオイ丸は馬ではなく、騎士数人を引き連れて戻ってきた。


「北西の小門から通信が入ってたみたいでござる!」


「北西? ミスリルゴーレムがいるところか?」


「それがなんと! 仮面をかぶった赤髪の少女が突如として現れて、もうとっくに倒したみたいでござるよ!」


「そうか。早いな」


「いやいやいや!? なんでそんな冷静なのでござるか!? 普通もっと驚くところでござるよ!?」


「西門からだと向こうのほうが近かっただろうし、俺たちが乗ってきた馬車よりダイフクのほうが圧倒的に速いしな」


「いやいや! そういうことではなくて、あのミスリルゴーレムを倒したのでござるよ!?」


「俺たちだって翼ゴーレムを倒せたんだから、あいつらが倒せてても不思議じゃないだろ」


「いやいや、聞けば最後は一瞬で勝負がついたそうでござる! 誰の目にもとまらぬ速さの一振りで首を斬り落としたとか! ミスリルの首をでござるよ!? しかもララ……」


「おい、なんのために仮面をかぶってると思ってるんだ?」


「あ、スマンでござる……」


 素性が知られると色々と面倒なこともあるからな。


「で、馬は?」


「騎士隊の馬を手配してもらったので、あと五分ほどで到着するはずでござる」


「そうか。じゃあ今のうちに食事にしよう」


「だから落ち着きすぎなんでござるよ……。ロイス殿もミオも」


「勝てはしないかもしれないけど、ダイフクがいれば死ぬことはないと思ってたからな。無事に勝てて良かった。あ、ユウナは無事か? というかその騎士さんたちはここへなにしに?」


「……こっちの戦闘が終わったらロイス殿からすぐ連絡が欲しいと言われてたみたいでござる」


 するとさっきからこっちを見てこそこそ話してた騎士が近付いてきて、通信魔道具を渡してくる。


「この魔道具、固定式じゃなくて持ち運びもできるんですか?」


『あっ!? ロイスさんなのです!?』


「ん? ユウナか?」


『そうなのです!』


「お~~。生きてたか」


『なんとかなのです! あ、ダイフク君と代わるのです』


「ダイフク?」


 ララじゃなくて?

 敵を倒した自慢でもしたいのだろうか?


『ニャ~? (そっちも倒したの?)』


「あぁ。敵が一人で戦ってくれて助かった。そっちは誰か怪我したりしてないか?」


『ニャ~(怪我は僕くらいかなぁ。なんかね、敵の集団の中に一匹だけ強いミスリルウルフみたいなやつがいてね、そいつの魔法を足にくらっちゃった。まだ少し痛い)』


「ユウナに回復魔法はかけてもらったんだよな? それでも痛いんなら無理に歩くな」


『ニャ~(うん。でもね、まだやらないといけないことがある)』


「鉱山から出てくるゴーレムたちの相手か? そんなの怪我してるお前がやらなくていい」


『ニャ~(違うよ。さっきの戦闘の前にミスリルゴーレムと話したんだ。それでね、なにか気になること言ってたからさ)』


「気になること?」


『ニャ~(うん。自分が出てきた洞窟の中に、一匹だけ変わった魔物がいるって言ってた。やけに自分にベタベタくっついてきてたくせに、いざ洞窟から出ようとすると外をこわがって付いてこなかったとか)』


「……まさかそいつもミスリルゴーレムか?」


『ニャ? (え? 変わった魔物なんだから別の魔物じゃないの?)』


「それは外見の話じゃなくて性格の話だと思うぞ……。言葉は?」


『ニャ~(話せるから変わった魔物なんだと思ってたけど。あ、それじゃ確かにミスリルゴーレムとは限らないよね)』


 まだ強敵が残ってるかもしれないってことか……。

 一番強い大ボスだったりして……。

 外をこわがってるんじゃなくて単に面倒だからそう言ってるだけじゃないだろうな……。


『ニャ~? (だからね、今から見てきていい?)』


「いや、ちょっと待て。敵のテリトリーに入るってことなんだからもう少し慎重になれ。放っておいても外には出てこないんだし」


『ニャ~(え~~? どんな子なのか確かめてくるって、死ぬ直前のミスリルゴーレムと約束しちゃったもん)』


「そんな約束するなよ……。自分のカタキを討ってもらうためにお前たちを洞窟に誘きよせたかっただけかもしれないだろ……」


『ニャ~(違うよ。最後は確認って感じだったし。戦う前にその子の話をしてたときはミスリルゴーレムもまさか自分が負けるとは思ってなかっただろうし)』


 まぁそれはそうか……。


『ニャ~(なんか色々考えたらしいよ。なんで自分だけ周りの魔物たちと思考が違うのかとか、なんで生まれてきたのかとか)』


 敵でもそういう感情は持ったりするのか。

 ピピみたいに考え込むタイプだったのかもな。


「人間に対しては?」


『ニャ~(結局は人間を殺すためにここにいるんだって結論になったみたい)』


 だよな……。

 目に入る生物全てとかじゃなくて人間だけをってところがおそろしい……。


『ニャ~? (行ってきていい? 今ユウナがまた回復魔法かけてくれたし)』


「う~ん。ユウナに代わってくれ」


『聞こえてるのです』


「ララは?」


『魔力使いすぎで寝ちゃったのです』


「倒れたってことか?」


『その寸前って感じだったのです。しばらく休めば問題なさそうなのです』


「ここに来るまでも魔法使いまくってたからなぁ~。で、ダイフクが言ってることだけど、どう思う? というか今の会話で伝わったか?」


『だいたいわかったのです。私は確認しに行ったほうがいいと思うのです。どちらにしても鉱山の入口を封印魔法で閉じに行くつもりだったのです』


「う~ん、そうかぁ~。そっちの鉱山はアイアン系がたくさん出てきてるんだもんな。もしかするとその敵も外に出てきてるって可能性もあるから注意して行って来いよ? あまり洞窟の深くまで入るのはやめたほうがいい」


「了解なのです。ハリル君もいっしょに行くのです」


「あ、ハリルもいっしょなのか。モリタも無事か?」


『シャルルちゃんに付きっきりなのです。ララちゃんのことは離れた位置から見てたのです』


「ララは初見ではこわがられるからな……。ワタとマカは?」


『ララちゃんの付き添いしてるのです。このまま残ってもらうのです』


「そうか。あ、じゃあリヴァーナさんとメネアもいっしょに行ってもらってくれ。今走ってそっち向かってるから」


『了解なのです。じゃあ途中まで迎えに行ってそのまま鉱山に行ってくるのです』


「わかった。ヤバそうな敵ならすぐに引き返せよ。あと、ダイフクに無理はさせるな」


『わかってるのです!』


『ニャ~? (ロイスは来ないの?)』


「俺は今からマドとコタローを探しに行ってくる」


『ニャ~!? (マド行方不明なの!?)』


「翼ゴーレムが言うには、鉱山の中か外かはわからないがマドと遭遇して戦闘になったらしい。マドは逃げたらしいんだけど、こっちには帰ってきてないんだよ。怪我してるらしいしな」


『ならまずそっちに行くべきなのです!』


「いや、そっちの鉱山の封印結界を最優先にしてくれ。こっちはミオとアオイ丸にピピとタルもいるし、馬車もすぐに準備できる。それに幸いにもこっちの敵はブロンズ系が多いからそっちほど危険はなさそうだし」


『……わかったのです。こっちが終わったらすぐにそっちの鉱山に向かうのです』


「あせるなよ? 敵と対面するのはララが復活してからでも遅くはないんだからな?」


『……ララちゃんにあまり無理させないでほしいのです』


「……そうだな。でもユウナを助けると言って聞かなかったんだぞ?」


『……みんな無茶しすぎなのです。特に前衛は……。じゃあ行ってくるのです』


 そこで通信が切れた。


 そしてちょうど馬車がやってきた。

 空から見回りに行っていたピピとタルも戻ってきた。


「今の会話のせいで騎士たちにララ殿のことがバレたでござるよ」


「この人たちが黙っていてくれれば問題ない。というか現場にはウチの冒険者たちもいただろうから隠し通せるわけがないんだけどな」


「「「……」」」


 仮面なんか被るせいで余計に目立ってそうだし。


「ほら、行くぞ。食事は馬車で食べよう」


「だから食欲がないんでござるよ……。コタローやマド殿のことが心配なのと、それにたった今新たな敵の出現で……」


「情けないやつだな。あとでララに報告しておこう」


「あ、それはやめてほしいでござる……」


「じゃあ早く御者席に乗れ。第二陣が来る前に帰ってきたい」


「第二陣? まだ味方が来るでござるか?」


「サウスモナとリーヌ経由で、船か馬車でな。まさかこんなにあっさり倒せるとは思ってなかったから呼んでたんだ。まぁこれだけ被害が広がってるとも思ってなかったから、町に魔物を侵入させないためにはちょうど良かったかもな。夜中で急だったけどたぶん二百人は来てくれるだろ。というわけで騎士のみなさん、今戦ってる人たちへウチの冒険者たちが到着するまであと数時間の辛抱だとお伝えください」


「「「はい!」」」


 さて、マドとコタローの救出に向かうか。


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