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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十四章 帰還

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第七百二十九話 王都到着

 ダイフクに乗る位置を少し変更しての再出発となった。

 一番前にリヴァーナさんで、俺、ララ、メネア、ミオの順だ。


 敵がいるというピピからの指示を俺がリヴァーナさんに伝える。

 さすがに俺も攻撃をしないとマズいと思い、左右や上空を警戒するものの、なにも言わなくてもマカとタルが先に風魔法の杖で攻撃してくれる。


 ダイフクのスピードはさらに上がった。

 それが怒りのせいかはわからない。

 悲しみを乗り越えるためかもしれない。

 こうやって人は成長していくんだろう。

 人じゃなくて魔物だけど。


 ララは完全に落ち込んでしまい、ずっと泣き続けている。

 メネアはそんなララがバランスを崩さないように、ララの後ろから肩をしっかりと支えてくれている。


 リヴァーナさん、メネア、ミオにはまたもやツラい現場に同行させることになってしまった。

 しかも俺の情けない姿も見せることになってしまったし……。

 でもこれからもこんな場面がたくさんあるかもしれない。

 敵となる魔物はこれからもどんどん出現し続けるのだから。


「ホロロ!」


 ワタは再びダイフクの首の上の服の中に入り込んだ。

 どうやらその位置がお気に入りのようだ。

 さらにこの疾走感も心地いいらしい。


 それにしてもあの光はいったいなんだったんだろうか。

 ダイフクを助けようとしてくれたのは間違いないと思う。

 ダイフクの最期に俺と話をさせてくれたのもあの光のおかげだろう。

 まぁそのおかげで悲しみもより深いものとなってしまってるわけだが。

 こんな気持ちになるのなら、完全に死体のウェルダンと対面したほうがよかったかもしれない。


 ……いや、それはないな。


 例えあれが俺の妄想だったとしても、ウェルダンと話せて良かった。

 ウェルダンもそう思ってくれてるんならいいんだけど。


 ……相変わらず後ろからはララのすすり泣く声が聞こえてくる。

 もしかするとドラシーはこうなることがわかってたから、ララと俺を行かせたくなかったのかもしれない。

 でもその場合はウェルダンを発見することすらできなかった可能性がある。

 あの場所に魔物の気配がなかったのもあの光のおかげのような気もするし。


 それともドラシーは俺とあの光を会わせたくなかったのか?

 もしかして悪い光なのだろうか?

 でもウェルダンが言うには優しい人って言ってたしな。

 ウェルダンの体の傷を治してくれたのもその光だろう。

 だからあの光が人間であろうが魔物であろうが、解放したことに後悔はない。

 また湖に行けば会えるのだろうか。


「チュリ! (もうじき山を抜けます!)」


 やっとか。

 いや、もうか。


 もう少し時間が欲しかったかもしれない。

 いや、そんなこと言ってる間にも人はどんどん死んでいってるかもしれない。


 ララは大丈夫か?

 戦えるか?


 ……無理かもな。


 というかさっきはダイフクに俺がカタキを討つとか言ったけど、そんなの絶対に無理だからな?

 カタキを討つ現場に居合わせるって意味だぞ?

 ここにいるみんなは俺が口先だけの男ってことはわかってくれてるよな?


「ピピ、先に見てきてくれ」


「チュリ(はい)」


 ピピが一番大丈夫じゃないかもしれない。

 自分のせいでウェルダンが死んだとか思ってそうだ。

 早くゲンさん来てくれないかな。


 そして山を抜け、平地に入った。


 ……あれが王都か。

 こんな真夜中でも明るいんだな。

 今日だけかもしれないが。


 右のほうでは確かに火の手が上がっているのがわかる。

 煙のにおいもする。


「ニャ~!? (どっち行くの!?)」


「とりあえず真っすぐ行ってくれ。西側にも大きな門の入口があるらしいから」


 さて、メンバーはどうする?

 ララは戦力として数えないほうがいいな。

 となるとリヴァーナさんにはミスリルゴーレムと戦ってもらうのは確定として、誰と組ませる?

 翼ゴーレムと相性がいいのはミオとメネアのどっちだ?

 ……ミスリルを破壊するとなるとミオのクナイのほうがいいか。


 じゃあメネアとダイフクと俺は翼ゴーレムだ。

 ピピもカタキを討ちたいだろうからこっちだな。

 マカはミスリルで、タルは翼にしようか。


 ……でもウェルダンが勝てなかった相手にメネアとダイフクで勝てるだろうか。

 しかも敵は統率型とかいうやつかもしれない。

 従える魔物も数多くいると見ておくべき。

 ブロンズ系の魔物くらいなら魔法剣があれば俺でもなんとかなる気はするが、アイアン系がいるとさすがにキツイ。

 どう考えても俺が足手まといだ。


「お兄」


「……なんだ?」


「大丈夫だから」


「なにが?」


「私も戦える」


「……いや、戦わなくていい」


「悪いけど、ダイフクは私といっしょに行くから。私とダイフクとマカがミスリルゴーレムと戦う。だから翼ゴーレムはお願い」


「……本当に大丈夫なのか?」


「うん。完全に吹っ切れた」


「変な吹っ切れ方してるんじゃないだろうな? 死んでもいいとか絶対に考えるなよ?」


「死んだらウェルダンが悲しむよ。それじゃなんのために犠牲になってくれたのかわからないじゃん。それに翼ゴーレムじゃなくてミスリルゴーレムを選んだのは私が冷静な証拠でしょ?」


「……わかった。じゃあミスリルゴーレムは任せる。リヴァーナさんパーティと俺は翼ゴーレムに行くからな?」


「うん。あの剣とお兄の腕があれば大丈夫だから」


「俺の腕は大丈夫じゃないと思うけどな……」


「大丈夫。……ピピが戻ってきたよ」


 ララは大丈夫そうだ。

 この落ち着きようが逆にこわい。


「チュリ! (翼ゴーレムが南西部の封印結界を破壊してます! ミスリルゴーレムはおそらく最初の場所かと!)」


 ピピからさらに詳しい状況を聞く。


 まず南西部、封印結界が破られ、翼ゴーレムが指揮をとっているのかブロンズ系の魔物が大量に町中に侵入している。


 次に北西部。

 封印結界は破られていない。

 だが外壁の外にはアイアン系の魔物の大群が不自然な輪上になって押し寄せているらしい。

 おそらくその輪の中心にはユウナとミスリルゴーレムがいるはず。

 つまりユウナはミスリルゴーレムを封印結界内に閉じ込めることに成功した。

 ミスリルゴーレムはアイアン系の魔物たちに封印結界を外から破壊させようとしていると考えるのが普通だろう。

 だから対ミスリルゴーレムに関してはユウナの勝利だと言っていい。

 まぁユウナが無事かどうかはわからないが……。


「ララ、いけるか?」


「うん。危なそうだったら私も封印結界に閉じこもるから大丈夫」


「そうしてくれ。すぐに助けに行くから」


「うん。寝て待ってる」


 ……まぁ結界が頑丈ならやることないもんな。


「異論はないですか?」


「うん! ララちゃん、ロイス君のことは私に任せてね!」


「……今だけはお願いします。ミオちゃん、お兄をよろしくね」


「任せて。町中だと敵より私のほうが絶対有利」


「うん。メネアさんは消火活動がてら水魔法使いまくってね」


「あ、それいいかもね。そしたらお姉ちゃんみたいに女神様って呼ばれちゃうかも」


 砂漠の女神様じゃなくて火事場の女神様か。


「鉱山入口の封印はあとでいいよな? 統率型の敵が相手にいる場合、まずそいつを潰すことが先だって言ってたし」


「うん。まずはミスリルゴーレムと翼ゴーレムの討伐が優先。二体が分かれて行動してくれてることはこっちにとってはありがたいことだよね。じゃなきゃユウナちゃんも無事じゃなかったかもしれないし」


「……ユウナはまだ無事と決まったわけじゃない。外側だけ強固な結界にしたかもしれないだろ」


「そうだね。でも絶対大丈夫だもん。これくらいで死ぬユウナちゃんじゃないもん」


 そう願いたい気持ちは理解できるが……。



 そしてダイフクは王都西門に向かって真っすぐ進んでいく。


 ……ここまで来ると王都が本当に大きな町だということがよくわかる。

 町を囲む壁も結構高いじゃないか。

 壁のせいでさっきまで見えてた町の上のほうの明かりが見えなくなった。


 というか魔物が一匹も出現しなくなったな。

 普段からこんな感じなんだろうか?

 それとも北西と南西に集合してるのかな。


 ん?

 壁のほうからなにか声が聞こえてきた。


「……新手の敵出現! 白く大きな狼型の魔物! 一直線に門に向かってくる! 攻撃準備開始! 繰り返す! 新手の敵出現!」


 いやいや……。

 まぁ暗いから上に乗ってる人間たちのことまではよく見えてないか。


「ニャ~(狼じゃなくて猫なのに)」


「お兄、なにか言ってよ」


「そうだな。ダイフク、ちょっとゆっくり行け」


 レア袋から拡声魔道具を取り出す。


「え~~。西門の壁にいる王都騎士隊のみなさん、聞こえますでしょうか? こちらはただいまご紹介していただきました、狼ではなく猫に乗っている人間です。狼ではなく猫ですのでお間違えなく」


「ニャ~(失礼だよね)」


 うんうん。

 でも残念ながらそんなことどうでもいいと思われてるに違いない。


 ……反応がないな。

 攻撃準備で忙しいか?

 というか町の中が大変なことになってるのに西門にそこまで人員は割けてないだろ?


「え~~、聞こえていましたらお返事ください」


「……聞こえる!」


「それは良かった。では私の自己紹介を。私は王都から遥か西にありますマルセールの町、そのマルセールからさらに西に行ったところにある大樹のダンジョンという場所で管理人をしておりますロイスと申します。ほかにはウチの冒険者四名と俺の仲間の魔物たちが乗ってます」


「……本当だろうな!?」


「えぇ。緊急の救助要請を受けて大急ぎでやってまいりました。第二王子様か、元執事のセバスさんでも呼んでいただければすぐに確認が取れるかと。別に国王様や第一王子様を呼んでいただいても構いませんよ? でも今そんな時間はなさそうなので、とりあえず攻撃準備だけでもやめてもらっていいですかね?」


「……わかった! 西門前まで来い!」


 結構すんなりだな。

 話してるのが人間だからって魔物に乗った人間を信用しすぎるのもどうかと思うぞ?

 この混乱に乗じて王都壊滅を目論む悪い人間だってたくさんいるに違いないからな、うん。


「なんだか感じ悪いね。騎士隊の人たちって自分たちのことをエリートだと思って冒険者を見下してる人多そうだし」


「笑いが通じないお堅い人が多そうだもんな。パラディン隊はもっと住民から親しみを持ってもらえる組織を目指そう」


 今の騎士の人とは短い会話しかしてないのに既にあまりいい印象はないし。

 話し方って大事だな。


 そして西門前にやってきた。

 門の外に人はいないようだ。


 この門から王都に入る組はここでダイフクから降りる。


「じゃあ行くね」


「あぁ。無理そうなら諦めることも大事だぞ?」


「うん。ユウナちゃんだけ助け出してすぐに逃げるね」


「最悪の場合、ユウナを助けないことも考えろよ? 二人とも死ぬのだけは絶対にあってはいけないからな?」


「わかってるって。お兄こそ、死んじゃダメだよ? 怪我してもいいけど、死ぬのだけはダメだからね? 落ち着いてさえいればお兄ならちゃんと敵の動き見えるから。もし敵が命乞いしてきても無視だよ? できる? 改心するかもとか思っちゃダメだよ?」


「わかってるって……。ほら、早く行けよ。ダイフク、マカ、頼んだぞ」


「ニャ~! (狼じゃなくて猫だって言っといてね!)」


「ピィ! (やっと私の火魔法が使えます! ご主人様に見てほしかったけど!)」


「……じゃあね。私、戦うから」


「あぁ。瞬殺してこい」


「……うん!」


 そしてララたちは北西へと向かっていった。


 ……さて、ララの心配より自分の心配だな。


「さっきは言いませんでしたが、ピピがパッと見た感じでは今から向かう町の南西部ではかなり多くの死者が出ているらしいです」


「「「!?」」」


「それに魔物の数も半端ないとか。騎士隊や冒険者が防衛線を張って戦ってるみたいですが、それもジリジリと下がっていってるそうです。ですが我々がまず最優先にすることは翼ゴーレムの討伐であり、その次がそれ以外の魔物の討伐です。それが一番多くの人を救う方法だと思ってください」


「「「……」」」


 すると門が少しだけ開き、一人の騎士が出てきた。


「遠路遥々ありがとうございます! どうぞ中へお入りください!」


 ん?

 さっきの声の人とは別の人か?

 なかなか好印象だぞ。


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