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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十四章 帰還

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第七百十九話 アップデート前、営業終了

 今日はなんと二組のパーティが地下四階を突破した。

 実に素晴らしい。

 弱体化前の最終日に執念を見せてくれた二組には拍手を送りたい。


「ニャ~(骨折れてるかも……)」


「ピィ(折れてないから安心しなさい)」


「ピィ(タル、そう言わずにもっとちゃんと見てあげてよ)」


 その二組とは別に、ララたちも無事に突破することができた。

 余裕にとはいかないまでも、ララと三匹の成長ぶりには驚かされるものがあった。


「あ~~疲れた~~~~」


 風呂から上がってきたララがソファに寝転がる。

 シャワーだけにしても早すぎるだろ……。


「ニャ~(ねぇ、痛いよ……)」


 ダイフクは右前足を痛そうにララに見せる。


「なに? ちゃんと回復魔法かけてもらったでしょ?」


「ニャ~(まだ痛いんだもん……)」


「もぉ~、ペンギンテイオーと正面からやり合ったりするからでしょ。あんなの距離取って魔法攻撃してれば余裕なのに」


「ニャ~(ゴール近そうだったし、最後の最後で逃げるみたいで嫌だったんだもん……。ペンネの成長したやつとも戦ってみたかったし……)」


 その心意気は認めるけど、ララたちを乗せてる状態で自分の攻撃だけでペンギンテイオーを倒そうとしたのは少し無理があったな。


「お兄~、タルの回復魔法じゃ回復しきれてないみたいだから誰かに声かけてもらっていい? スピカポーション飲んでもいいんだけどもったいないし」


「わかった」


 ユウナがいれば楽だったんだけどな。


 あ、そうだ。

 シノンに頼んでみるか。


 ボネにシノンを呼びに行ってもらう。

 そしてすぐにシノンがボネを抱えてやってきた。


「食事前に悪いな。ダイフクが怪我しててさ」


「……」


 シノンは転移魔法陣部屋からリビングに入ってきたところでピクリとも動かなくなった。


「ニャ~(初めて見る子)」


「あ、そうか。こいつはダイフク。ボネと同じマーロイフォールドだ」


「……」


 完全にこわがってるな……。


「ミャ~」


「……うん」


 だがボネに声をかけられてなんとかこちらへ歩き出し、ダイフクの傍までやってきた。


「……どこを怪我してるんですか?」


「ニャ(ここ)」


「!?」


 知らない魔物相手だとちょっとした動きに対しても驚くからな……。

 ボネでだいぶ慣れてくれたとはいえ、克服するにはまだまだ時間がかかりそうだ。


 そしておそるおそる回復魔法をかけるシノン。


「……どうですか?」


 足を確認するダイフク。


「……ニャ~! (治ったかも!)」


「!?」


 シノンは大きな声にビックリしたのか、一目散に転移魔法陣部屋に逃げていった……。

 そしてそのまま戻ってくることはなく、しばらくしてボネだけが戻ってきた。

 心配しなくても大丈夫そうとのことだ。


「ダイフクはこんなに可愛いのにね~。なにがこわいんだろ」


「魔物や動物の存在自体がだよ。でも最初よりはだいぶマシになってると思う。こんなに大きな魔物は初めて見たはずだし」


「ふ~ん。アプリコットちゃん大変そう」


「シノンとサクも同じように思ってるよ……」


「いやいや、アプリコットちゃんは普通だから」


 どこがだよ……。

 ……でも俺がまだ知らないだけかもしれないか。


「回復魔法の腕はそこそこあるみたいね」


「そこそこなのか? あの施設にいたくらいだからユウナレベルくらいはあっても不思議ではなさそうだが」


「現時点ではってこと。それにサクちゃんもだけど、魔力が多いからって魔法の威力が強いとは限らないからね?」


「それはわかってる。でもシノンは浄化魔法や封印魔法も使えるし」


「もしかしたらそっちのほうが適性あるのかも。戦闘が無理そうならウチで雇おうよ。封印魔法要員がエマちゃんだけだと大変そうだし。浄化魔法も使えるんなら町の領地拡大とかでも役に立ってもらえるしさ」


「俺もそれは言ったんだけど、シノンが冒険者じゃないと嫌だって言うんだよ。パラディン隊も嫌っていうくらいだからウチで働くとは思えない。それならノースルアンに帰るって言ってたし。あいつは魔王を倒すために戦えるようになりたいらしいんだ」


「それもドラシーから聞いたけどさぁ、適材適所ってものがあるでしょ。そこは上手くお兄が説得して勧誘しなよ~」


「なんで俺なんだよ……」


 シノンとは別に昔から仲良かったってわけでもないのに。


「で、地下四階をクリアしてみて思ったことなんだけどさぁ~」


「やっぱりEランクにしては難易度少し高めだったか?」


「確かに海中というフィールドは魚系の魔物にとって有利だけど、地下四階は人間側にとっても本来の水の中での動きよりはだいぶ動けるようになってるでしょ?」


「まぁな。魔法が通るようにもしてるし」


「うん。だからそれを考えると、難易度は適切なのかなって。そりゃ本物の海の中での戦いだったらもっと難易度上がるだろうけどさ」


「じゃあ弱体化させなくてもいいってことか?」


「少し敵の数を減らす程度でしょ? それはしてもいいと思う。地下五階に行ける人は一人でも増えたほうがいいから。海の魔物のこわさはある程度わかっただろうし、船で航海中に魔物に出くわしたときに敵の移動速度や攻撃手段がわかってるのはかなり大きいよ」


「冒険者が船の扱い方を覚えたらサウスモナやボワールの漁師たちより有能になると思うぞ」


「漁師の仕事を奪ったらダメでしょ。私が言いたいのは、お兄のフィールド選択や難易度調整は別に間違ってなかったってこと。昔からドラシーが言ってたけど、やっぱり初級者と中級者の間にはかなり高い壁があるんだよ。地下三階をクリアした時点では、初級レベルの魔物なら問題なく倒せるようになったってレベルでしょ? この地下四階をクリアできてようやく中級者と名乗ることが許されるの。中級レベル相手には全く歯が立たないんじゃ中級者とは呼べないし。というか初級とか中級って表現が曖昧すぎなんだよね」


「それは俺も思ってた。でもだからこそウチで設けてるランクは意味があるってことだろ?」


「うん。でもEランクの中でも実力の差が大きいんだよね。まぁそれを言いだすとキリがないけどさ。今は個人というかパーティのランクみたいなものだし。職ごとに評価基準は変わってくるだろうし」


「確かにキリがないな。魔法のレベルもできれば10段階で表現したいんだけどな」


「それはしたらいいじゃん。一番みんなを見てるのはお兄なんだから、お兄の独断と偏見でさ。むしろみんなもランク付けしてほしいんじゃない? お兄から火魔法レベル7とか認定されたら嬉しいって、たぶん」


「そうかぁ~? 逆に2とかだったらへこむだろ」


「でも死ぬ思いで修行して2だったら諦めがつかない? だからそれもありだと思うよ」


「俺が肩を叩いたみたいだろ……」


「そうしてほしい人もいるかもしれないってこと。お兄の目に間違いはないもん」


「その俺への買いかぶりはなんなんだよ……。俺なんか適当だぞ」


「じゃあ私の火魔法レベルは?」


「8~9ってところか」


「雷と風は?」


「雷は6で、風は5だ」


「ふむふむ。火魔法のレベルから考えたら雷と風はそれくらいかもしれないけど、火魔法が9って高すぎない?」


「そんなことはない。ドラシーもララの火魔法の素質は数多く見てきた人間の中でもトップクラスだって言ってるし」


「ドラシーが言ってるのは素質でしょ? 10段階で今が9だともう限界見えてる感じじゃん」


「え? まだまだ強くなれるのか?」


「そのつもりだけど。だからせめて今は6にしといてよ」


「6って……。どれだけ強くなる気なんだよ……」


「だからまだまだだって。雷は4で、風は3でいいから。リヴァーナさんの雷は7くらいでどう? そのほうがもっと修行してくれそうだし」


 そうすると2以下の人が大量に増えてしまうんだが……。

 でも限界なんて誰にもわからないのも事実だしな。


「定期的に基準の見直しが必要だな。俺が考える魔法のレベルは、単純に威力や範囲だけじゃなく、命中精度や構えてからの発動速度とかも見てるから」


「あ、そうだ! Dランク特典にしちゃうのはどう!? 管理人による魔法レベル評価って!」


「えぇ~……。特典にする必要はないだろ……」


「リヴァーナさんなんか絶対聞きたがると思うよ? あとミオちゃんは自分のこと客観的に見てるから、お兄の評価を冷静に受けとめると思うし」


「う~ん。じゃあDランクに上がった人にだけこっそり伝えてみるか。希望者のみだけど」


「うん。口コミってやつだね」


「いや、拡散されても面倒だからこっそりでいいんだよ……」


 まぁEランク以上の人の戦闘なら週に一度は見てるはずだからいつ聞かれても答えられるけどな。

 でも攻撃魔法だけにしてくれよ?

 回復魔法や補助魔法はわかりづらいし、戦士の人に攻撃力のランクとか聞かれても答えづらいからな?

 一応俺の頭の中では色んなジャンルにおいてランク付けのようなものをしてるが、さすがにそれを発表するのはマズいと思うし。


「それよりカトレアとマリンを起こしてきてくれ」


「えっ!? もう帰ってるの!?」


 ララは飛び起きた。


「ララがダンジョンに入ったすぐあとくらいにな。明日の打ち合わせや準備はもう終わってる。だから夕食の時間までは少し寝るって」


「先に言ってよ! ご飯作るからあと三十分は起こさないで!」


「いや、わざわざ作らなくても」


「今日は久しぶりにみんなでの夕食だから作るって決めてたの! 下準備はしてあるから!」


 久しぶりに帰ってきたのはララのほうなのに、そのララが夕食を作るってのもおかしな話だ。


「お兄はワタ迎えに行ってきて!」


 ワタか……。


 今日一日、狭い洞窟ダンジョン内で永遠に湧いてくるブルースライムと戦い続けるという罰……じゃなくて修行をさせられている可哀想なワタ。

 ブルースライムを見るのがトラウマにならなければいいが。


 しかも魔瘴の木によって薄い魔瘴が発生してる場所でもある。

 ミニ大樹でできたアクセサリをたくさん装備させてるとはいえ、野生に戻ったりしてないだろうな……。

 というかなんで俺は見るのもダメなんだよ。



 そしてダイフクたちを連れ、ワタの修行場所であるダンジョンにやってきた。

 そこではワタがよろよろになりながらブルースライムと戦っていた。


 HPの色は橙色になってる。

 赤になったら強制的にウチに帰ってくる設定だが、そうならなかったのはワタが必死に戦ったからだろう。


「ワタ~? 帰るぞ~」


「……」


 無言で戦うワタ。

 声を出すのもツラいのかもしれない。


「あ」


 と思ったら急に倒れた。

 すぐにマカとタルが救出に入る。

 ダイフクはブルースライムの相手だ。


「頑張ったな。帰ってゆっくり休もう」


「……ホロロ」


「ララは怒ってるわけじゃなくて、ワタに強くなってほしいだけだから」


「……ホロ(うん)」


「そうか。わかってくれてるならいい」


「ピィ? (今、ワタ喋りませんでした?)」


「え?」


「ピィ(うん、って言ったような……)」


「……ワタ?」


 ワタは眠ってしまったようだ。


「意識を失いかけの声だったからそう聞こえただけじゃないか? さっ、帰るぞ」


 こんなワタの姿を見たらマリンとカトレアが腰抜かしそうだ。


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