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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十四章 帰還

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第七百十三話 帰ってきた妹

 ハナはこれから住む部屋を用意してもらってくると言って宿屋フロントに向かった。

 一方、ララはソファに座り、ダンジョンの経営状況を確認し始めた。


「シルバたちは?」


「……」


 ララはウチのあらゆるデータが見れる管理端末の閲覧に夢中のようだ。


「マクシムさんはいっしょじゃなかったのか?」


「……冒険者になる自分たちはまずは歩いてここに向かうのが筋だってさ。だから早くてもあと三十分はかかると思う。マカたちもいっしょ。マクシムさんが森の空気をゆっくり味わいながら行きたいって言うから、私とダイフクだけ先に走って帰ってきたの」


「ふ~ん。マクシムさんらしいか。ってまだ一度しか会ったことないけど、なんとなく律儀そうだしな」


「……」


 でも来てくれて良かった。

 これでもし来ないということになればヒューゴさんたちになんて言えばいいかわからないしな。


「ところで、家を何か月空けたと思ってるんだ?」


「……たった二か月でしょ?」


「たったって……。みんな心配してたんだぞ?」


「ピピから聞いてるでしょ? あの村で心配するようなことはなにもなかったってば」


「村の中はそうかもしれないけど、雪と魔瘴の中を無事に帰ってこれるかどうかまではわからなかっただろ?」


「もぉ~っ、集中できないから少し静かにしてよ」


「そんなのあとでいいだろ。経営はカトレアとマリンのおかげでなんとかやれてるから。たぶん」


「ニャ~(雪の町と砂漠の町に魔道列車が繋がってたから、魔力のことが心配みたい)」


 ダイフクが俺の隣で丸まりながら言ってくる。


 ……やっぱり一回り、いや、二回りはデカくなってるな。

 いくら戦士タイプと魔道士タイプで違うとはいえ、ボネと同じ種類の魔物とは到底思えない。

 もしかするともう親よりもデカいんじゃないか?

 あとで比べてみるか。


「ねぇ、明後日だけじゃなく31日の月曜日もダンジョン休みってことは地下五階に関連するアップデートなんだよね?」


「ビラで見たか。地下五階以外にも色々と大きくするつもりだ。ちなみに地下五階はもうほぼできてる」


「へぇ~? 珍しく早いじゃん」


「二月の半ばくらいから、俺はこの森から一歩も出られなくて暇だったからな」


「なんで? また町から出禁くらった?」


「またというか出禁なんて一度もくらってないし。ただの過保護だよ」


「あ~、そういうこと。カトレア姉の手紙読んだけど、ナミの火山内部は相当危険だったらしいもんね。そりゃゲンさんやドラシーもそうするよ」


「いや、ナミでの件じゃない。実はサハでも一騒動あってな」


「サハ?」


 そしてララにサハでの出来事を話す。


 その間もララは経営状況の確認のために管理端末を見続けていた。

 同時に水晶玉でサハ駅の様子も見ている。


「なるほどね~。魔道列車のサウスモナ⇔サハ間の売り上げが少ないのは町がそんな状況のせいか。みんな暑いところが嫌いで人気がないのかと思った」


「完全に避難してもらうために今はもう運行もストップさせたんだ」


「ふ~ん。それで避難してくれたんなら良かったじゃん。でも駅の責任者の人は仕事がなくなって困るんじゃないの?」


「その人も冒険者だから大丈夫。王子パーティの人だ」


「ふ~ん」


「というか興味なさすぎないか? すごく広範囲の爆発だったんだからな? 一歩間違えばユウナだって死んでたかもしれないんだぞ?」


「無事だったって言ったじゃん。で、その暴走王女様は生き返ったの?」


「暴走王女様って……。一週間寝たきりのあとに意識を取り戻したんだ。でもそこからが大変だった」


 そしてサクが魔道士になった経緯を話す。

 ノースルアンの施設から来たということは話さずに。


「……魔眼か。いいなぁ~」


「いいなぁ~って……。本人は苦しんでるんだぞ……」


「でも魔眼って超レアなんだよ? まだ解明されてないことも多いみたいだし。制御できればとんでもない武器になるかもしれないじゃん。爆弾以上のさ」


「おい、本人の前では爆弾って言葉は使うなよ?」


「使うわけないでしょ。でも生意気な子だったらポロっと言っちゃうかも」


「やめてくれ。サクはそんなに悪いやつじゃない。自分が犯した罪の重さもちゃんと理解してる。それにサクがそんな行動を起こしたのは俺が……」


「わかったよ。でもお兄のせいっていうのだけは違うと思うよ。もしその子が魔力暴走を起こさなかった場合でもその子や女王が今も無事だったっていう保証はないでしょ? 反女王派の人たちとお兄が上手くいくとも思えないし、結果的に死者は今以上に出てたかもしれないし。元々あの町はどこかおかしかったんだよ。暑いし」


 暑いのは関係ないと思うが……。


「それにカトレア姉が錬金術師にしたいって言うくらいならそんなに悪い子じゃなさそうだしね」


「性格的にはマリンに似てるんだよ。大人びてるけど、中身はまだまだ子供というかさ」


「みんなそういうもんだって。私やユウナちゃんだってそうでしょ?」


「まぁそう言われてみれば……」


「カトレア姉みたいに頭カチカチのほうがいい?」


「それは……いや、それもカトレアのいいところだからな」


「え? 今なにに配慮したの? 誰かいる? ドラシー?」


 ララは周りをキョロキョロ見回す。


「あ、マクシムさんたちが来る前に先にカトレア姉たちに会ってこよ~っと。錬金術師エリアにいるよね?」


「いや、カトレアたちはここ数日マルセールに泊まり込みで仕事してる」


「泊まり込み? マルセールで? なんの?」


「学校を作ってるんだ」


「学校? ……もしかして魔道ダンジョン内に?」


「そうだ。もうこの4月から稼働する」


「規模は?」


「かなり大規模。生徒数は4000人を想定してる」


「4000人!? めちゃくちゃ大規模じゃん! …………町がよくそれだけの魔力を準備できたね~。魔石とか?」


「あぁ。でも急だったこともあり、すぐに全部を準備できるわけもないから、足りない分の魔力はウチ持ちだ」


「……」


 ララは無言でソファを立ち上がり、おそらく地下室へと消えていった。

 そしてすぐに戻ってきた。


「ない! 予備で置いてあった魔石が全部! あるのは空のレア袋だけ!」


「……使ったからな」


「なんで私に無断で使うの!?」


「だってララいなかったし……」


「なら使ったらダメでしょ! 私がどれだけ苦労して貯蓄してきたと思ってるの!?」


「それは知ってるけど……。でも苦労してたのはジェマや情報屋たちだし……」


「そこはどうでもいいの! ダンジョンになにかあったときのために集めてたの知ってるよね!?」


「知ってるって……。でも学校は子供たちの将来のためにすぐにでも必要って町役場の人たちも住民もカトレアたちもみんなが言うからさ……」


「だからってダンジョン内に建てる必要はないじゃない! 勉強を教えるくらいならそのへんの原っぱでもどこでもできるでしょ!?」


「落ち着けって……。どうせならいい環境のものを作ってやりたいし、子供たちにも喜んでもらいたいだろ? それにちゃんと使った分の魔石は返ってくるからさ……」


「そういうこと言ってるんじゃないの! もし今日なにかあったらどうするのって話をしてるの!」


「わかってるって……。それに運営費も毎月入ってくるしさ……」


「運営費!? ……まぁそれは悪くないけど」


 ふぅ……。

 最初に金の話をすれば良かったな。


「ドラシーが出てこないのは私が怒るのわかってたからだよね?」


「さぁ……。色々と疲れてるだろうし、明後日のために体力を蓄えておかないといけないし……」


「ふ~ん、まぁいいけど。魔石はちゃんと利息付けて返してもらってよね」


「いや、それを期待するのは難しいかと……」


「なら私がセバスさんに言うからいいや」


 セバスさんはララをこわがってるからな……。


「一応聞くけど、ララも学校に行っていいんだぞ?」


「行くわけないじゃん。なにその無駄な時間」


 やはりそう言うか……。


「十三歳からは調理科みたいな専門課程を選ぶこともできるんだ。ちなみにモモはその調理科の先生になる」


「モモちゃんが!? ここを辞めるの!?」


「あぁ。町から話が来てな。今はもう学校で準備に取りかかってもらってる」


「……そう」


 ララは寂しそうな顔をした。

 気持ちはわかる。


「もうモモも大人だからな。モモとヤックとハナには二週間休暇を取ってもらって、将来について色々と考える時間を与えた。残りの二人はこれからもウチで働きたいってさ」


「……そっか。だからさっきハナちゃんがいたんだね」


「あぁ。それとマックとルッカが……」


 ララが落ち着いたところで、ララが知らないここ最近のウチの状況を話すことにした。


 ララはお茶を飲みつつ、ボネを撫でながら静かに聞いていた。

 ボネも嫌がらずにずっと撫でられていた。


 そしてメタリンのことも話した。


「……」


 メタリンは死んだ可能性が高いと聞かされてもララの顔色は変わらなかった。

 カトレアの手紙には書いてなかったはずだが、ピピにでも聞いていたのだろうか。

 それともナミでの一件が、メタリンが死んだだけですんでまだ良かったと思ってるのかもしれない。


「あ、そういやナミで魔物が二匹仲間になったんだよ」


「えっ!? 二匹も!? どんなの!?」


 新しい魔物には興味があるようだ。

 メタリンを失った悲しみをむりやり紛らわせようとしてるのかもしれないが。


「まずはお爺さんハリネズミ」


「お爺さん? なにそれ大丈夫なの?」


「マグマハリネズミだけあって結構強い」


「マグマハリネズミなの!? しかもお爺さんってことは実戦経験豊富ってことだよね!?」


「そこそこな。名前はハリル。こいつについては色々と物語があるからまたあとで話す。そしてもう一匹。……というかさっき外で会わなかったか? ゲンさんといっしょにいたはずなんだけど」


「え? ゲンさんしかいなかったよ? ねぇダイフク」


「ニャ~? (ワタのことだよね? 大樹のほうに逃げてくのが見えたよ。たぶんララのことを、知らない人が来たと思ってこわかったんじゃないかな?)」


「いや、ワタは人見知りするようなやつじゃないから逃げるどころか寄ってきそうなもんだけどな。それにこわがったとしてもせいぜいゲンさんの後ろに隠れるくらいなはずなんだけど」


「あ……」


 ララはなにか思い当たる節があるようだ。


「もしかしてその子、魔力がわかる?」


「魔力は持ってるけど?」


「じゃあたぶんそのせいかも……。私さっきゲンさんが座ってるの見えて、修行の成果を見せるために魔力をフル開放したから……」


「……それだな」


 ボネもそれで気付いたのか。

 でも魔物が逃げ出すほどの魔力ってどんだけだよ……。


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